チタン石

 姉は月末の夜になると、必ずチタン石を吐き出していた。この石は、不純物の混じり具合によって、様々な色に変化する。姉のチタン石もまた、その例に漏れず、茶色、黄色、朱色、青色、紫色と様々な色合いのものが、小さな口から吐き出されるのだった。

 私や両親は、姉がチタン石を吐くたびに、その中から透明感のある、宝石として扱う価値のあるものを選り分けていた。選ばれたチタン石は、両親が営む宝飾店で売られた。姉の吐くチタン石の透明度は非常に高く、だから通常の数倍の値段で売られていた。

 宝石として売れないと判断されたものについては、全て捨てられていたが、その内の一つを、私は密かに盗んで、自分で用意した小箱の中に入れていた。私は姉が大好きだったし、その一部を自分のコレクションにできることが、とても嬉しかったのだ。

 姉は大学を卒業してから、ずっと付き合っていた彼氏と結婚した。今でも月末になるとチタン石を吐き出し、綺麗なものは親元に送っていると聞く。

 私の所へも毎月、宝石にはならないチタン石が一つ送られてくる。どうやら「密かに」と思っていたのは、私だけだったらしい。

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