鳴石
以前、鉱物愛好家の友人から、「鳴石」と呼ばれるものを見せてもらったことがある。
壺のような形をしており、振るとコロコロと何かが転がるような音がする。
針鉄鉱と呼ばれる鉱物で、小石が集まってできている。この中に、球形の粘土などが入り込むことで、コロコロと音がするそうだ。
友人は嬉しそうに、何度も石を鳴らしていた。話は「鳴石」から別の鉱物の話に移っていったのだが、コロコロと鳴る音だけは、いつまでも響いていた。
友人が亡くなったのは、つい先日のことだ。通夜には出られなかったが、葬式には出た。
一通り葬儀が終わり、そろそろお暇しようという段になって、友人の妻から一つの小箱を託された。茶色い小箱の表面には「鳴石」と印字された紙が貼られていた。
友人の遺言で、是非受け取って欲しいと言われ、別に断ることもないので持ち帰った。
その日の夜に小箱を開けてみると、以前に見せてもらった「鳴石」だった。
試しに振ると、音がした。だが、それは以前に聞いたコロコロという音ではなかった。
クツクツと笑っている声だった。亡くなった友人の笑い声にそっくりだと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます