開かずの石英

 母方の祖父母の家を取り壊す段になって、開かずの間があることがわかった。

 取り壊しの段取りをしていた業者から母に連絡があったのだ。暇な私は、母のお供を仰せつかり、一緒に祖父母の家へと向かった。

 開かずの間は、家の一番奥にあった。

 扉が漆喰で塗り固められていたらしく、崩してみたら出てきたのだという。

 私たちが到着した時には、すでに扉は壁から発掘され、半開きの状態になっていた。

 中を覗くと、人一人がやっと入れるくらいの空間に、焼酎の一升瓶が並んでいる。

 酒好きだった祖父母の姿が目に浮かぶ。

 一升瓶の中には、ギッシリと白色の小さな石が詰め込まれており、その前には何故か盛り塩が丁寧に盛られていた。

 二人で顔を見合わせ、一升瓶の中を覗く。

 石英だと最初に気付いたのは母だった。

 私は、手近にあった一升瓶を手に取った。

 途端に、一升瓶の中から泣き声がした。

 無数の、幼い子どもたちの泣き声だ。

 母にたしなめられ、私は慌てて一升瓶を元に戻した。泣き声は、すぐに止んだ。

 家の取り壊し作業中、子どもの泣き声のせいで、作業が度々中断したと後で聞いた。

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