カーネリアン・モンキー
阿井島に生息する猿たちは、その紅の美しい毛並みと共に、何もない空間から鉱物を採り出す習性で知られている。
猿たちが採り出す鉱物は、紅玉髄である。この鉱物の英名にちなんで、猿たちはカーネリアン・モンキーと呼ばれている。
彼らは樹木の頂上まで上がると、必ず右手を高々と空に向かって伸ばし、ギュッと握りこむ。握られた拳は、平均して数分間そのまま維持され、ある時を境にして開かれる。
開かれた拳からは小さな紅玉髄が零れ落ち、樹木の枝や幹に当たって音を立てながら、地面へと落ちていく。阿井島の樹木の下に紅玉髄が散らばっていれば、間違いなく猿たちが採りだしたものだと断言できる。
猿たちが紅玉髄を採る理由も、方法も全てが謎に包まれている。猿たちは紅玉髄を採ると、すぐに捨ててしまう。あの紅色を愛でるわけでもなく、むしろ忌避するかのように、拳の中に現れると同時に捨ててしまうのだ。
何もない空間から、自分たちが忌避する物体を採り出す習性。それはある種の呪いのように、この猿たちの行動を規定し、島を紅玉髄の一大産地に成長させたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます