オパールの火
水を張った水槽の中には、オパールがいくつも入れられていた。
白い石の中では炎が揺らめいている。オパールの火だと、若い宝石商は言った。
「炎が宿るのはオパールだけです。乾燥させなければ、永遠に揺らめき続けるでしょう。ただ、難点なのは、この火を取り出して活用することができないことです」
宝石商はもう何度も、オパールの火を取り出そうとしたらしい。だが、オパールにヒビが入った途端、それまで激しく揺らめいていた炎が、フッと消えてしまうそうだ。
「外気に触れるとダメなんですよ。あれは、普通の炎じゃない。酸素とは別の何かを使って燃えているんです」
私は、水槽の中で燃えるオパールを見ていた。婚約者の誕生石がオパールなのだ。綺麗に燃えているものが欲しいと言うので、買いにやってきたのだった。
手ごろな大きさのものがあったので、それが欲しいと言うと、宝石商は水を入れた小瓶の中にオパールを入れてくれた。
オパールの火だけ取り出せたら結婚してもいい。そう婚約者に言われたことは、今は忘れることにした。
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