第68話 ヒャッハーとか叫んでいそうだ
◆◇◆◇◆◇
走行中の車に徐々に接近してくる敵の姿が肉眼でも見えてきた。
「……これは予想外だな」
「本当ですネ。狩猟民族みたいデス」
「確かに狩人って感じだ」
俺達の視界に映ったのは、顔や身体にタトゥーを入れた複数の男女が人間大のオオカミタイプのモンスターに騎乗している姿だった。
感知していた気配の動きから車やバイクではないとは思っていたが、まさかモンスターに騎乗しているとは思わなかったな。
彼らの手には鉄パイプか何かの金属棒を加工して作った歪な形の金属長槍が握られており、背中に弓や矢筒っぽいのを背負っている者もいる。
ソフィアが彼らのことを狩猟民族みたいと評したのも当然と言える外見だ。
全員がモンスターに騎乗していてタトゥーもしているから、刺青ライダーとでも呼称しておくか。
髪型がモヒカンだったらヒャッハー呼びだったんだが、残念ながらモヒカンは一人だけだった。
「感じられる魔力からすると、全員Cランク超人くらい?」
「たぶん、それくらいだな。騎乗しているモンスターを自在に操れるなら、刺青ライダー達はBランク相当と見ていいんじゃないか?」
「刺青ライダー……」
「分かり易いだろ?」
「そうね」
運転席にいるシオンが言うように、刺青ライダー達の強さは大体Cランク超人といったところか。
能力や異能次第では更に評価が上がるだろうが、今のところは騎乗モンスターとセットでBランク超人ほどと仮定しておけばいいだろう。
そんな風に敵を分析していると、車体に向かって金属槍が投げられてきた。
超人化によって得た人外の膂力から繰り出される投槍の威力は凄まじく、普通の車だったら車体を貫通していたのは間違いない。
この〈
装甲部分には投槍が通じなかったのを見たためか、次に投擲されてきた槍が狙ったのは窓部分だった。
分厚い防弾ガラス製とはいえ、超人による金属槍の投擲に耐えられるほどではない。
普通ならば明らかな急所だが、元より装甲部分よりも脆い窓部分を守るようにメルクリウスの自動迎撃能力を設定しておいたので問題はなかった。
「さて、先制攻撃も許したし迎撃を開始するか」
車内の壁に触れて異能〈使役〉を発動する。
すると、車体の天井部に設置してある機銃が一人でに動き出し、その銃口を距離を詰めてきた刺青ライダー達へと向けた。
メルクリウス経由で発動する〈錬金竜〉の金属生成能力による銃弾形成で実現した擬似的な自動給弾機構により、弾切れを起こすことなく銃弾が発射されていく。
発射機構自体もメルクリウスによる力業で擬似的に再現しており、その発射音は非常に静かだ。
アーティファクト〈黒金雷掌ヤルングレイプ〉の銀雷も使用した発射機構であるため、イメージとしてはレールガンが近いかもしれない。
静音かつ超高速な弾速であるため、一番最初に標的にした刺青ライダーは、自らの身に何が起こったかを認識する間も無く、騎乗しているモンスター共々全身が蜂の巣のようになって絶命していた。
「どこの勢力に属しているか調べたいから、全部倒しちゃダメだからね」
「一人ぐらい生かしておけばいいよな?」
「私の〈魔眼〉で無理矢理聞き出すから一人いれば大丈夫よ」
「了解」
所属勢力の情報も大事だが、個人的にはモンスターを操っている方法も知りたいところだ。
たぶん誰かしらの能力なんだろうが、個人要素に依存する固有能力とも言える異能とかじゃなければ、他の者達でも会得することが出来るかもしれない。
そうなれば、新都エリアの今後の発展にも活かせそうだ。
俺の持つ〈使役〉でもモンスターの使役は可能だが分類は異能だし、対象が生物と無生物とでは消耗度合いがかなり違うので実用的ではない。
以前、黄色ゲートのウサギ系ボスモンスターを大人しくさせるのを神凪大臣に任せた理由の一つでもある。
良い情報が得られることを祈りつつ、メルクリウス製機銃を掃射して刺青ライダー達を蹴散らしていった。
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