第69話 強者も誰かにとっては弱者でしかない
◆◇◆◇◆◇
「ーーそれで、どうする?」
襲撃してきた刺青ライダー達を撃破した後、唯一生かして捕らえたモヒカンライダーからシオンの〈魔眼〉で情報を聞き出した。
モヒカンライダー達が属する勢力は〈
基本的には暴力にて他の勢力を制圧し吸収・拡大を続けてきたんだそうだ。
オオカミタイプのモンスターに騎乗していたモヒカンライダー達は、このアンタッチャブルの警邏部隊であり、他の人間勢力やモンスターへの襲撃を行う狩猟部隊とは違って地味な役割であるため、モヒカンライダー曰くハズレポジションらしい。
最近は警邏中に人やモンスター……特に人間と遭遇することもなくなり、刺激に飢えていたところに俺達が現れたから襲撃したんだとか。
「アンタッチャブルを潰すかどうか、ってこと?」
「そういうこと」
「キル、デス」
「ふむ。ソフィアは殲滅に一票か」
「そんなに聞き出したのに相談する意味あるの?」
シオンからの指摘に肩を竦めると、彼女の視線が向けられているメモ帳に今一度目を通す。
モヒカンライダーから聞き出したアンタッチャブルの拠点情報、勢力の喫緊の状況、一日の各部隊の動き、主要戦力の超人達の能力も含めた情報がビッシリと書かれている。
ちなみに、シオンの〈魔眼〉で操られてペラペラと強制的に喋らされたモヒカンライダーは壊れてしまったので、俺が介錯してやった。
ソフィアが「武士の情けデスネ」とか言ってきたので介錯方法は斬首にした。
髪型がモヒカンだから頭部が持ちやすいと思ったのは内緒である。
「危険だから一応聞いておこうと思ってね」
「お兄さんが優しいデス!」
「ただの気紛れでしょう」
「それもそうデスネ」
「おい」
感激したかのような反応だったソフィアの一転して冷めた態度にツッコミを入れつつ、モヒカンライダーが持っていた市販品の乾物を食べながら車に戻る。スルメが美味い。
次は俺が運転する番なので運転席に座ると、ソフィアが助手席に座り、先ほどまで運転していたシオンは後部座席に移動した。
「じゃあ汚物を消毒……ではなくて、新都周辺の安全確保のために掃除しにいくか」
「ついでにアーティファクトをゲットデス!」
「モヒカン君の情報によれば、アンタッチャブルはアーティファクトらしきアイテムを二つ持っているみたいね」
「掃除ついでにアーティファクトも手に入るなんて……ボーナスステージだな」
騎獣のオオカミタイプのモンスターの死骸をアーティファクト〈空間保環レア〉の〈亜空間保管庫〉に収納したが、まだ空きはある。
アンタッチャブルにある物資についても聞き出したので、そちらも期待できるだろう。
「正面から突っ込みますカ?」
「あー、どうしようか。モヒカン君と同じ警邏部隊や拠点の警備部隊もいるから車で行ったらすぐにバレるか」
「一人残らず殲滅するなら正面から攻めるのもアリよね」
「モヒカン君が言うところの奴隷階級の者達も纏めてやるなら、アーティファクトの大規模攻撃で簡単に陥落できるだろうな」
アンタッチャブルの奴隷階級とは、簡単に言えば非超人の人間達や、生きたまま捕らえられた敵対勢力の超人達の中でも今もなお反抗的な者達のことを指している。
その者達がどういう目にあっているかというと、〈魔眼〉で内容を聞き出したシオンが、思わずモヒカン君の大事な急所を〈重力操作〉の能力で潰すほどに憤るほどのことをさせられているようだ。
そんな奴隷階級の者達だが、分かりやすく首に首輪を模したシンプルな刺青が入っているため見分け自体はつきやすい。
問題なのは、特定の場所に固まっているわけではないことと、奴隷階級にいるからといって善人とは限らないことか。
まぁ、善人か否かなんて心を読めたりしなければ分かるわけがないので、正直言って重要度は低い。
となると、一ヶ所に固まっていないことだけが問題になる……いや、もっと重要な問題があった。
「そもそも助け出しても新都まで連れて帰るのが大変なのと、今の俺達は休暇中という問題もあるか」
「まだ新都まで連絡はつくわよ」
「おっと、問題が解決してしまったか」
少し前から携帯が使えなくなったため、今使っている通信端末は臨時政府が用意した特殊な物だ。
通信距離に制限があるのだが、ここならまだ繋がるらしい。
「それじゃあ、奴隷階級の者達は助けられたら助けるぐらいの気持ちで対処しよう」
「まぁ、そのぐらいが気持ちも楽よね」
「奴隷かどうかが分かるように首まわりの肌は露出しているそうですから、確認はしやすいデス」
「らしいな……確認しやすいならアレを試すか」
失敗してもいいなら、今ここで能力のテストをするとしよう。
〈使役〉と〈
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