第24話 ふとした時に自覚するタイプの疲労もある



 ◆◇◆◇◆◇



「ーー焼けましたカ?」


「もう少しかな」


「焼けましたよネ?」


「あとちょっとだな」



 鉄板の上で音を立てながら焼けるお好み焼きを前にしての会話だ。

 傷んでいない野菜がなかったのでキャベツなどの野菜は入っていないが、焼きそば麺など具材として使えそうな物を入れているので食べ応えはあるだろう。

 豚肉に関しては、街中で見つけた肉屋の冷凍庫に入っていた塊の物を頂戴し使用している。


 二日間の夜間アンデッド爆狩りツアーは一旦休止となった。

 理由は昨夜のツアーの終わり頃に出現したデュラハン共のせいで単純に疲れたからだ。

 一応、デュラハン出現前の夜間アンデッド達の数が少なくなっていたから増えるまで間を空けるという理由もあるが、数が減っているのは偶々の可能性もあるため、やはり一番の理由は疲労になる。

 特にソフィアにとってはハードスケジュールだったようなので、今日明日は休むことにした。


 とはいえ、この休息期間は俺にとっても有意義な時間でもある。

 何故なら、今朝起きてから身に宿る能力に変化を感じたからだ。

 その検証を行うにはちょうど良い。



「そろそろいいか」



 ウニョンという擬音が聞こえてきそうな動きで〈金属腕〉状態の手から分離したスライムみたいな金属塊が、ヘラまたはコテと言われる形に変化する。

 その謎金属製のヘラを使ってお好み焼きをひっくり返した。



「……まるでメタルスラーー」


「だいぶ思った通りの形で分離できるようになったな。地味に便利だ」



 何かを言おうとしたソフィアの言葉を遮って変質した〈金属腕〉の新たな力を評価する。

 これまでも盾や鉤爪などに変化させることは出来ていたが、昨夜の戦いを経てこの金属腕を構成する金属を分離させることもできるようになっていた。

 加えて、肘から肩まで広がっていた金属化の範囲が全身にまで及ぶようになった。

 これらの変化のキッカケは、十中八九デュラハンを倒したことだと思われる。

 全身に金属鎧を纏ったモンスターだったので、おそらく間違いあるまい。

 どちらかというと、あの触れたら脱力させる黒い煙みたいな力が欲しかったんだが、これもまた個人の適性ってヤツなのだろう。

 〈金属腕〉という能力名も変更しないとな。

 何がいいだろうか……シンプルに〈錬金鎧〉とかでいいか。


 他には〈炎熱掌〉のオレンジ色の炎が蒼紫色に変化していた。

 昨夜も青色の炎を放ってくる幽鬼がいたので、色的にそいつの力と混ざったのだと思う。

 色の変化と火力の向上以外にも効果がありそうだが、元となった幽鬼の青炎を喰らったことがないので予想がつかない。

 ネット上に情報があるかもしれないので後で探してみよう。

 他の能力はーーそろそろいいか。



「よっと。うん、両面焼けたな。あとは切り分けて……はい、どうぞ」


「ありがとうございマス」



 先に待ちきれないソフィアの皿へ、次に自分の皿にお好み焼きを取り分けた。

 あとはお好みでソースやマヨネーズなどをトッピングしていただく。



「いただきます」


「いただきマス。んンッ、美味しいデス!」


「それは良かった」



 久しぶりに作ったが確かに美味いな。

 何故か色々と懐かしさを感じる……思いのほか疲れていたのかもしれない。

 各地を転々としている超人部隊と再び会う約束をした日まで一ヶ月を切っている。

 あまり時間はないが、俺もソフィアも基本となる身体能力の強化だけでなく新たな能力も手に入れたし、数日ぐらい休んでもいいかもな。

 ずっとアンデッド系モンスターばかり狩るのも気が滅入るし、休みの間に他のモンスターの出現エリアを調べておくのも良さそうだ。



「というわけで、なんか倒したいタイプのモンスターとか候補はあるか?」


「倒したいタイプのモンスターデスカ? んー、イキナリ言われても悩みますネ……」



 そう言うと、ソフィアは自分のスマホを取り出してネット上を検索しだした。

 ちなみにこのスマホはソフィア自身の物だが、充電器が無かったので俺と会うまでずっと電源が切れたままだった。

 数ヶ月ぶりにスマホが使えた時は本当に嬉しそうだったな。


 そんな自分のスマホを若者らしい素早い指捌きで操作しているソフィアと同じように、俺も自分のスマホで情報を集める。

 ついでに、適当にまだ生きているテレビのチャンネルをつけると、画面上では何やら妙なことが起こっていた。




 

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