第23話 何かを叫びたくなる拳打の嵐



 ◆◇◆◇◆◇



 俺流アンデッド纏め狩り炎上ツアーの二日目。

 この日は、ちょっとだけピンチだった。



「うおっ!?」


「お兄さんッ!?」


「だい、じょう、ぶっ、だからッ! 他の、奴らを、頼むぞッ!!」



 連続で振り下ろされてくるアンデッドな首無し黒騎士ーー命名〈デュラハン〉三体による、黒い煙?を纏った剣による猛攻を一人で捌き続ける。

 少し離れたところでは、この三体のデュラハンが引き連れてきた剣や盾に槍などを装備したゾンビ兵達とソフィアが戦っていた。


 先日と同様の夜間アンデッド纏めて燃やし尽くした後、そろそろ撤退しようかと考えていたタイミングでデュラハン達が炎の中から現れた。

 デュラハン達は自分達同様に首の無い馬に乗って駆けてきたのだが、その馬達は道路上の炎と燃焼瓦礫弾の前に三頭とも沈んだ。

 そのおかげか、三体のデュラハンのヘイトは俺一人に集まっており、デュラハンよりも少し弱いソフィアの方にはゾンビ兵しか向かっていない。


 〈超感覚〉〈全身電化〉〈骨格稼働〉をフルに使ってデュラハン達の剣撃の嵐を避け続ける。

 どうしても避けられない攻撃は、最近肘から肩まで金属化範囲が広がった〈金属腕〉か自作グレイヴで受け流した。

 正真正銘の人外の膂力と剣技も厄介だが、剣が纏う黒い煙みたいなのが一番厄介だ。

 この剣の黒煙に触れると力が抜けてしまうため、今のような回避主体の戦いになっている。

 グレイヴなら大丈夫だが、長柄武器であるグレイヴよりも今は剣の間合いなので防御の出番は金属腕の方が多い。


 幸いにも未だ剣で斬られてないが、このままだとジリ貧だ。

 攻撃を避けながら打開策を探していると、視界の端に良い物を見つけた。

 デュラハン達の攻撃を避けながら場所を誘導すると、全力で後方に跳んだ。



「喰らえッ!」



 地面に置いてあったガソリンが入ったバケツの端をグレイヴの石突き部分に引っ掛け、中身ごとデュラハン達へと投げた。

 反射的にバケツを両断したデュラハン達へとガソリンが降り注ぐ。

 おそらく浴びるのは初めてだろうガソリンに、デュラハン達の動きが僅かに鈍り隙が生まれる。

 すぐさまバケツを斬ったばかりのデュラハンの一体へと飛び掛かり、グレイヴの全力の振り下ろし攻撃を行う。

 〈怪力〉によるグレイヴの剣刃の一撃は、防御のために構えた剣ごとデュラハンを真っ二つにした。

 残る二体のデュラハンは、振り下ろし攻撃直後の隙を見逃さずに左右から剣を振るってきたが、即座にグレイヴの柄から手を離して片方のデュラハンの懐へと潜り込んだ。



「お返しだ」



 〈怪力〉〈金属腕〉〈炎熱掌〉〈全身電化〉〈骨格稼働〉による超至近距離からの連続殴打をデュラハンにお見舞いする。

 デュラハンの身体を覆う金属製の鎧が陥没していき、〈炎熱掌〉の炎が鎧に付着したガソリンに引火してデュラハンの全身を燃焼させていく。

 もう一体が割り込んでこないように、拳撃対象のデュラハンを間に挟みつつ拳を振るうのも忘れない。

 嵐の如き拳の連打は、数秒と掛からずにデュラハンの一体をスクラップへと変えた。



「三体で劣勢、二体でほぼ互角、一体なら余裕ってね」



 残る一体のデュラハンからの剣撃を余裕で躱わして距離を詰めると、その胴体へと渾身の一撃を叩き込んだ。

 他のモンスターの動きを気にせずに振るった全力の拳撃は、たったの一撃でデュラハンの身体を粉砕した。



「全く……奇襲と集団で攻めて来なかった俺の勝ちは揺るがないっての」



 一体一体はオーガよりも少し上ぐらいだから一対一なら負けることはない。

 剣技と力の抜ける剣の黒煙は多少厄介だったが、数の不利を解決出来ればそもそも当たることがないのだ。



「お兄さん、カッコつけてないで早く助けてくださいヨッ!!」


「別にカッコつけてはなーー」


「早くッ! ヘルプッ!!」


「了解了解」



 地面に放り投げたグレイヴを拾い上げると、ソフィアの周りを囲むゾンビ兵達へと斬り掛かっていった。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る