第10話 荷物整理は大事だね
◆◇◆◇◆◇
ネット上で〈世界変革日〉と呼ばれる、モンスターが出現したあの日から三ヶ月が過ぎた。
三ヶ月も経つと現在生き残っている者達の間に、ある程度の強化現象関連の共通認識が広まっていた。
結果、この三ヶ月の間に秩序ある集団を構築した者達によるモンスター狩りが行われるようになり、目的だったモンスターそっちのけで人の集団同士での争いが頻繁に起こるようになった。
その影響は俺にも及んでおり、とある二つの巨大組織と巨大モンスターの戦闘の余波を受け、住まいであるマンションが崩壊してしまった。
流石に全長二十メートルの巨体の突進には耐えられなかったようで、現在進行形で空中に投げ出されている最中だ。
「……やってて良かった荷物整理」
気配察知で戦闘が近づいてきているのが判明してすぐに、必要な物資を一番大きなリュックサックと旅行用ボストンバッグに纏めておいた。
背中にリュックサック、左手にはボストンバッグ、右手には複数のモンスター素材を組み合わせて作ったグレイヴ、腰には数丁の拳銃と予備の弾を吊り下げたベルト、胴体は頑丈な植物モンスターの葉っぱを裏地に縫い付けた革ジャン……といった具合にフル装備だ。
予備の武器はボストンバッグの方にもリュックサックの方にも入っているが、これらを使わなきゃいけないようなら逃げることを最優先にすべきだろう。
巨大なトカゲに似た某有名な大怪獣の親戚みたいな見た目の巨大トカゲモンスターは、自分が破壊したマンションを見ておらず、二つの集団へと意識を向けているようだった。
今のうちに安全に地上に下りるべく、宙を舞う瓦礫を足場に飛び移っていき高度を下げていく。
着地してからも走り続けて降り注ぐ瓦礫を避けると、適当な場所にリュックサックとボストンバッグを隠す。
最後に、一週間前に倒したカラスみたいな形の空飛ぶ骨モンスターの頭蓋骨を削って作った骨仮面を装着した。
顔の上半分をカラスの骨仮面がちゃんと隠していることを再確認する。
「……よし。報復の時間だ」
両腕を〈金属腕〉に変質、〈超感覚〉で索敵全開、〈全身電化〉で思考速度と反射神経と身体動作を加速、〈炎熱掌〉をいつでも発動できるように待機、〈骨格稼働〉で全身の骨格の動きを強化補助、最後に〈怪力〉で全身の筋肉を漲らせると、身の丈サイズのグレイヴ片手に怪物トカゲへと駆けていく。
悲しきことに、俺には遠距離攻撃系能力の適性は無かったが、近接系身体系の適性には優れていた。
俺のスローライフ拠点であった自宅を破壊した怪物トカゲと二つの組織を許すわけにはいかない。
「まずは、適当に斬るッ!」
怪物トカゲの情報なんて無いので実際に戦って情報を集めるしか方法はない。
かつて倒したオーガの骨と骨カラスの刃のような爪を溶接して作ったグレイヴの剣刃は、容易に怪物トカゲの体皮を斬り裂いた。
見た目からしてゴツゴツして頑丈そうだったが、骨カラスの爪製の剣刃と怪力ブーストの膂力の前には無力だったらしい。
数メートルにも及ぶ傷を負ったことに怪物トカゲが悲鳴を上げる。
その直後に地上から射出音らしき音が聞こえたので確認すると、ロケットランチャーからロケット弾が射出されていた。
咄嗟に近くの背鰭の陰に隠れると、ロケット弾が近くに着弾した。
どうやら俺が付けた傷口に着弾したらしく、先ほど以上の声量の怪物トカゲの悲鳴が上がっている。
「野郎……そういうことなら俺は背中で戦わせてもらおう」
そのままグレイヴを振り回して周りの背鰭を斬り刻みながら頭部の方へと向かっていく。
頭部は頭蓋骨とか頑丈そうだし、頭部狙いの攻撃の余波を喰らいそうなので、かつてのオーガ戦のように首の部分を狙うとしよう。
立て続けに怪物トカゲへと着弾するロケット弾や何かしらの攻撃によって怪物トカゲが暴れるが、その度にグレイヴの石突き部分を怪物トカゲの背中に突き立てる。
振り落とされないように堪えながらなので進みは遅いが、着実に首の部分に向かって進んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます