眠れぬ獅子
秋乃晃
序
「幽霊って、いると思います?」
タバコの補充をしている
店長は裏の事務所でエリアマネージャーとミーティングを始めたから、店長じゃないと解決できないような余程の問題がなければ、売り場には出てこない。売り場は売り場で、昼の
「いない、と思います」
「ほう。どうして?」
「……どうして、と言われましても。わたしには、見えないので」
だ、そうだ。
レジカウンターに両ひじをつき両手で自分のあごを支えるような格好をして、汐見さんを見上げている
「
得意げに言うんじゃない。
「普段は隠してるけど、聖奈ちゃん、実は機械なんだよ。家でメンテナンスしてた」
家まで付いていったのかこのエロガキは。見えないからってやりたい放題やな。
汐見さん(フルネームが汐見聖奈なので、親しげに『聖奈ちゃん』と呼んでいるようだ)は、確かに、年寄りの客から『応対が冷たい』『マニュアル通りのことしかしない』などと妙なクレームを入れられてはいる。総じて「ロボットみたい」と言われたら、そうなのかもしれへん。言いがかりにもほどがある。
先月の真ん中辺りから働き始めて、研修はほとんど終わり。真面目で物覚えがよくて遅刻しなくてしかも美人さんだし、ウチとしては長く続けてほしい。店長も気に入ってそう。24時間365日営業のこのコンビニで、フルタイム希望で土日も入ってくれるってのはめちゃ助かる。
「宮下さんには、見えるんですか?」
「見えへんよ。昨日、心霊番組を見てな。はぁ、世の中にはそういう人もおるんけ、と思って聞いただけや」
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