オーメン編

第99話 魔王復活

「ん~」

「あっ起きた」

「私は……。ハッ、魔物たちは?」

「オーメンが全部殺したよ」

「そうですか。だから私を人間に戻したんですね」

「モンマンさん。君は1度リンカー王国へ連れて行く。そしたら互いに”これまで”を話そう」

「私も貴方とはお話がしたいです」

 2人の様子をナザトは微笑みを持って眺める。

「さぁ、皆と合流しようぜ」

 ナザトが提案したその時だった。背後で闇のドームが発生する。

「何だアレ!?」

 彼女が驚く。他方2人は顔が強張る。

「「この気配。魔王だ」」


「フハハハ! ようやっと戻ったぞ!」

「おはよう魔王。復活早々悪いけど、貴方を殺す」

「お主ら2人でか?」

「いいえ。私一人です」

 彼女は氷炎を使う。

「グッ」

 余り効いていないようだ。

「紫電青火」

 追撃を仕掛ける。しかしその魔法は切られた。

「!」

「どんなものかと思って食らってみれば、あまり痛くはないな。それにこの剣の呪いに打ち勝つことも出来んとは」

「その剣、どんな魔物も倒せると聞いてましたが、何で魔法まで切れるんですかねー」

 焦りと怒りが混じった声で問う。

「この剣は吾輩が作った。いわば呪いの塊のようなものだ。低俗な魔物は勿論、魔法も切れて当然だろう?」

クソッたれご高説感謝しますよ

 氷炎を食らったのは、あれが魔法じゃないからだ。あれは冷やされた空気が膨張し、爆風を引き起こすもの。自然現象だ。だから切れなかった。

 魔王後略の手法は2つ。1つ目が魔法を使った自然現象。2つ目が剣で切れないほどの手数での攻撃。でも前者はあんまり効かないみたいだね。だったら。

手樹ちょうじゅ手土ちょうど

 地面から手の形をした木と土を作る。

 ラッシュだ。

「面白い」

 大量の土木と剣がぶつかり合う。

「オーメン! 手数で押そうってことだろうけど、1人じゃ無理だ! 俺も手を貸す!」

「駄目です! これは私の戦いです! 邪魔したら殺します!」

 オーサーは気迫に押され、棒立ちしているしか出来なかった。

 

 そこにナザトら3人と軍隊が到着した。

「オーサー。さっきから何なんだ。尋常じゃねーぞこの魔力」

「オーメンが魔王を復活させた」

「復活って、どうやって?」

「恐らくアマナスが持っていたネックレスこそが、魔王が魔道具になったものだったんだ。それを死者蘇生の魔道具を使って復活させた。しかも誰かを犠牲にする感じだったんだろう。アマナスが消えた」

「マジか⁉」

 

「どうした女。手数が減っているぞ」

「そういう貴方もいくつか食らっているじゃありませんか」

 剣と土木の殴り合いの勢いが徐々に弱まる。

 そして遂に、魔王がオーメンの攻撃を一閃し、至近距離まで詰める。

「終わりだ」

 上段の構えから剣を振り下ろす。

「力場操作」

「!!」

 しかし剣はオーメンの横に逸れる。

「この魔法は⁉」

「ぬん」

 魔王があっけにとられている隙に、彼女は魔力を込めて、顎を思いっきりぶん殴る。そして追撃。

「うおおおお!」

 乱打乱打乱打! 死力を尽くしてぶん殴る!

「オラァ!」

 ぶっ飛ばす。


「ハァハァ」

「オーメン。やったのか?」

「撲殺するには相手が堅すぎます。止めを刺さなきゃ」

 氷の槍を作る。そして投げる。が、しかし。

「死ぬかと思ったぞ」

 剣で氷槍ひょうそうは砕かれた。

 魔王は光で自身を包み込んだ。そして光が晴れると魔王は万全の状態に戻っていた。

「どういうことだ! 魔物は呪いと病しか振り撒けないはずだろ!」

 ナザトは驚く。

「呪いと祝福は表裏一体。他の奴らは呪いしか振り撒けないが、吾輩は別だ」

「祝福だと⁉」

「誰かを想い、そいつが命を込めてナニかを送る。これこそが呪いであり祝福である」

 リコは複雑な顔をする。

 

「さて、続けようか」

「オーメンさん。我々は援護します」

「駄目です! それやったら今から国を潰しますよ!」

 実際、消耗した今の彼女でも出来てしまう。先ほどまでの戦いで軍隊は察した。故にただ見ているしか出来なかった。

「協力してもらえよ。もう勝機がないのは分かってるだろ?」

「まだありますよ」

 さっき力場操作で剣をずらせた。つまりこれは切れないということ。勝機はこれだ。

 持つかな、と小さく呟いてから魔法を使う。

「力場操作!」

 彼女は魔王の上から力場を発生させ、押し潰そうとする。

「うおっ!」

 魔王は片膝を着く。

「もう一丁ォォ!」

 オーメンは電磁場と核力場を発生させ、ダメージを与える。

「ぎゃあああ!」

 魔王は焼けていく。それと同時に、光で自身を包み回復させていく。

「うおおおお!」

「あああああ!」

 核力場が無くなる。オーメンが鼻血を流す。電磁場も消える。歯を食いしばる。そして遂に重力場も弱まる。意識が薄れる。

 魔王が重力場から逃れる。そのまま勢いをつけて突っ込み、オーメンの腹を刺す。

「ゴフッ」

 彼女は吐血し、意識を失った。

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