ハーピー編

第85話 アピア―

「まさか2人がそこまで深い関係になっているとは思いませんでしたよ。何があったのか、とっても気になりますねー」

 アマナスは村を出てから何回も繰り返す。

「うるせー。何回聞かれても答えねーよ」

「2人も気になりません?」

 アマナスはオーメンとリコに話を振る。

「うん。私も気になる」

 リコは目を輝かせる。

「リコちゃん。悪いけどあの魔道具の対象者になってからね」

「むー」

 リコは頬を膨らませる。

「私は別に気にならない。というか予想の範疇だわ」

「そういえばよー。お前は何でそういうのに詳しいんだ? あの手紙といい俺とアニマのことといい、ちょい不気味だぞ」

「あー確かにそれは気になりますね。俺もオーメンさんみたいになりたいので知りたいです」

「私も」

 2人がオーサーに賛同する。

「別に。ただ必要だから知っただけだよ」

「なんで必要になったの?」

 リコが問う。

「秘密。知りたければ何かを差し出すか、役に立ってもらわないと」

「分かったぜ。次の町までは何日か歩くんだ。その間に聞きだしてやるぜ」


 しかし2日経っても聞き出せずにいた。

「まじかよこいつ。どんだけ強情なんだよ」

「はい、それより今から山を突っ切るから、魔物には気をつけてね」

「山なんて突っ切らなくても、普通に進めばいいだろ?」

 オーサーが疑問を口にする。

「薄っっすらとだけど、魔道具の反応があるんだよね」

「マジか。それ性能上がってね?」

「使い続けているうちに成長したのかもね」


 4人は山に入る。歩くこと30分。

「平和ですね」

「そうだね。普通山を30分も歩けば、1回くらいは魔物に遭遇するのに」

 茂みからガサガサッと音がした。

 そっちを見るとなんと、2足歩行する、異様に大きい兎が飛び出してきた。

 皆一様に、「は?」と思った。茫然としていると兎は腕を振って走り出した。

「追うよ!」

 オーメンが声を張り上げ、走り出す。それにつられ3人も走り出す。


 木々を避け、茂みを掻き分けた先には一軒の丸太小屋があった。

「こんなところに家?」とアマナスが。

「気をつけて。囲まれてる」

 オーメンが注意を促す。

 影がさす。

「上!」

 オーメンが叫ぶ。

 頭上から手足が鳥の人間が強襲を仕掛ける。

 オーメンが防御魔法を展開し、鳥人間の蹴りから皆を守る。

「ちぃ」

 鳥人間は1度距離をとる。それと同時に周囲から魔法が放たれる。

「アマナス君! 合図したら下に隙間を作るから、そこから魔法を全方位に放って!」

「分かりました」

「3……2……」

「防御魔法展開! あいつの攻撃は絶対食らうな!」

 鳥人間は叫ぶ。

「1」

「ブラックマジック・インフル」

 霧状にした魔法が隙間から流れ出る。

 鳥人間は自分ではなく丸太小屋を守っていた。

 霧が晴れる。


 周囲に隠れていたモノたちが鳥人間の元へ集う。

「インゴクニート!」

 それは、先ほどの兎のように2足歩行する動物や、鳥人間のように人と動物が混ざったような姿をしたもの、その中間のものの3種類に分けられた。

「バカ! 何出てきてるんだ」

「だって皆には防御させてるのに、インゴクニートだけ守ってないから」

 動物が話す。

「私にあの程度の黒魔法は効かないよ」

 その様子を見ていたアマナスがオーメンに問う。

「あの、これどうなっているんですか?」

「あの子たちは皆魔道具の影響を受けている。詳しいことはインゴクニートとかいう子に聞いてみよう」

 オーメンはインゴクニートに話しかける。彼女は睨みながらも返事をする。

「ここにいる皆は魔道具でこうなったんですよね?」

「そうだ」

「差し支えなければ、その魔道具を譲っていただけませんか?」

「持ち主は私ではない」

「ではどなたが?」

 オーメンの問にインゴクニートは答えるつもりはなかったが、丸太小屋から答え少女が姿を現す。

「母さん?」

「ナザト! 危険だから家にいろって言っただろ!」

「でもなんか話してるし」

「駆け引きという戦いに移行したところだったんだよ」

「そうだったのか。ごめん」

「貴女が魔道具の持ち主ですね?」

「あれなら埋めたぞ」

「は?」

 オーメンは少し怒りを込める。

 インゴクニートは小さく溜息を吐いた。

「一度家にあがろう」

 

「埋めたとはどういうことですか?」

「もうオレには要らないから」

「だからといって埋める必要あります?」

「るせーな。別に構わねーだろ」

「それもそうですね。勝手に掘り返させてもらいます」

「駄目だ」

「何故です? もう不要なのでしょう?」

「埋めたのは墓場だからだ」

「墓場ですか。なぜそんなところに?」

「詳しいことは私から話そう」

 インゴクニートが申し出る。

「あれは15年前のことだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る