第84話 蘇生対象

「おっ、戻れたか。いやー良かった良かった」

「おめでとう」

「ありがとよ。これで一安心だ」

 でもまだもう1つの目的がまだだ。顔を引き締める。

「アニマ。俺がお前と会ったとき、回収しなきゃならなくなったって言ったこと覚えてるか?」

「そういえば……、そうだったわね」

「頼む。俺に譲ってくれないか」

 オーサーは頭を下げる。

「……。そうね。恩返ししないとね」

 アニマは魔道具を渡す。

「かたじけない」


 オーサーはその晩、オーメンの元へ足を運んだ。

「よう、オーメン。戻ったぜ」

「おかえりなさい。それで、魔道具は回収できました?」

「一応な」

 コイン魔道具を見せる。

「流石です」

 オーメンがコインを手に取ろうとしたとき、オーサーはコインをスッと手元に引き寄せる。

「その前に約束を果たせ」

「ああ、蘇らせたいヒトが誰なのかってことね」

 オーサーは真剣な目で彼女を見る。

「私が蘇らせたいのはただ1人。かつての英雄たちが倒した、魔王」

「⁉ お前、そんなことをして何をするつもりだ⁉」

「静かに。リコちゃんが起きちゃう」

 オーサーは不服な表情をする。

「私が話すと約束したのは蘇生対象のみ。その目的や理由は範囲外。聞きたいならもっと私の役にたってね。オーメンさん」

「お前、ホント碌な死に方しねーぞ」

「ご忠告どうも。もう部屋に戻ったら?」

 オーサーはただ引き返すしかできなかった。


 翌朝。

「うおっ、オーサーさん⁉」

 アマナスは起床早々驚く。

「おう。おはよう」

「戻ってたんですね」

「昨晩な」

「随分と遅かったですね。俺なんて3日だったのに」

 少し意地悪な表情で煽る。

「俺の方が上の段階だったからな」

 カウンターを食らわす。

「やめましょう。不毛です」

「今日はすぐに出かけるんだ。準備しとけよ」

「はい」

 朝食を済ませ、荷支度を終えると4人はチェックアウトをした。

 

 村の出口に人が立っていた。アニマである。

「渡した魔道具についてだけど、あれ、使用者に限っては3年経っても戻らない場合は、性が固定されるみたいなのよね」

「わざわざそれを言うために?」

 オーメンが疑問を口にする。

「貴女たちが使う事はないと思うけど、念のため忠告をしに来たのよ」

「そうですか。ありがとうございます。では私たちはこれで」

 と去ろうとした時だった。

「じゃあ、3年経ってもそのままだったら、交際してくれないか」

 オーサーが突然告白した。

 3人は驚く。しかしアニマは動じない。

「別に構わないけど、どうして?」

「自己表現に生きる人間として、似てると思ったから」

「そう。なら一層精進しないとね」

「それで元に戻ったりしないでくれよ」

「気を付けるわ。じゃあ、いってらっしゃい」

「行ってきます」

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