第70話 地下
4人が城に向かう途中、子どもたちに囲まれた。
「ビレチーとは何を話したの?」
「ここでの暮らしについてだよ」
アマナスが答える。
「何しに行くの?」
「城に行くんだよ」
それを聞いた、一番大きな子どもは血相を変える。
「お兄さんたち城に行くの?」
「そうだよ」
「なら私も連れて行って」
「ええっ!」
アマナスはオーメンに視線を送る。
「ついてくるのは良いけど、自己責任でね」
「はい!」
「君、名前は?」
「アレスです」
城の内装は東国のものだった。
「内装は木なんですね」
「まったく、誰がどんなふうに作ったんだか」
オーサーは呆れと感心が混ざった反応をする。
「魔道具の反応は下からある。この階には用はないよ」
「こんだけ立派な城なのに勿体ねーな。なあリコ」
「うん。もっと見たい」
「私たちの目的は魔道具だからね」
「俺の作家人生には関係あるんだが?」
「なら一人で行ってきてください」
「じゃあそうするわ」
「私も行くー」
オーサーとリコは別方向へ向かった。
「アマナス君は行かないの?」
「俺はオーメンさんといたいので」
「そう」
「いつもこんな感じなんですか?」
アレスが問う。
「振り返ってみると、結構自由に動いてたかも」
「信頼し合ってるんですね」
「そうかな」
地下への道を探すこと10分。
「この下から強い反応があるけど道はないね」
「見て下さい。ここに鍵穴がありますよ」
アマナスは床の穴を見つけた。
「鍵か。結局ここを見て回る必要があったってことか」
彼女は、右ひじに左手を添え、右手で顎を触った。
「なら、分かれてて正解だったな」
そこにオーサーとリコが鍵を持ってやってきた。
「二人とも、もう回ったの?」
「リコの奴、何の躊躇いもなく宝箱を開けるんだもんよ。びっくりしたぜ」
「だって気になったんだもん」
「リコちゃん。泡のことでオーメンさんに注意されたこと、忘れたの?」
「あっ、忘れてた」
「本当に気を付けてね。リコちゃんに何かあったら、レイさんと琴さんに合わせる顔がないよ」
「ごめんなさい」
「それより、鍵があるなら空けてほしいんだけど」
「はいはい」
そう言ってオーサーが鍵を開ける。
「よし行くぞ」
4人は階段を降りる。
「暗いですね。リコちゃん、アレスちゃん。転ばないようにね」
「反応は強まってる。どんな魔道具なのか、ワクワクするよ」
階段を降り切った。そこには全裸の人がいた。
「人⁉ こんなところに⁉」
アマナスは声を上げる。
「誰?」
人は声に反応した。
「どうやら生きてるみたいだね」
オーメンは平静を崩さない。
しかしアレスは動転したかのように声を上げる。
「ビレチーさん!」
「この声、アレスさんですか?」
「そうだよ。私だよ。アレスだよ」
「来てしまったんですね」
ビレチーはあまり嬉しそうではなかった。
「ビレチーさんって、あの札人間のことじゃないんですか?」
アマナスは少し混乱している。
「あれは魔道具だよ。多分分身体を出すとかそういうの」
アマナスは驚きと恥で声が出なかった。それを横目にオーメンはビレチーに声をかける。
「私たちは魔道具を探しに来ました。貴女がそうですか?」
「魔道具? それなら地上に置いてきましたよ」
「あの札人間のことではなく、この城から反応があってやってきたんです」
「それなら、この城のことでしょう」
「この城そのものが魔道具なんですか⁉」
アマナスは驚愕する。
「なかでも、地下のこの触手が本体のようなものですから、反応があったとするなら、これのことでしょう」
「触手?」
アマナスは彼女の後ろを見た。
「ひっ」
彼女は、城から生えた触手と繋がっていた。
「一体何があったんですか?」
アマナスが問う。
「外で私の分身から聞かなかったのですか?」
「彼女からは、調査しに向かったものが帰ってこなかった、とだけ聞きました」
「そうだよ。とっても心配したんだから」
アレスは彼女を抱きしめる。
「そうですか。……ではお話ししましょう。なぜこの城付近では病や怪我が治るのかを」
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