第69話 2つの魔道具
「時間がゆっくり流れる?」
オーメンは疑問を口にする。
「うん。私たちはここに来てから、もう40年くらい経ってるよ」
「40年も⁉」
アマナスが驚く。リコが続いて「見た目は私とあまり変わらないのに」という。
「その間ずっと、子どもたちだけで過ごしてきたの?」
とオーメンが問う。
「ううん。ビレチーがいるよ」
「ビレチー?」
「いま呼んでもらってるから、すぐ来るよ。ほら」
城の方からビレチーがやってきた。
「……」
4人は絶句した。ビレチーとやらは、札に覆われ、服を着ていない青白い大きな女だったのだ。
「ようこそいらっしゃいました。何やら探し物があるとのことで」
落ち着いた声色。やや低めだが、ボソッとはしていない声で訪ねてきた。
「ええ。まあ、ちょっと」
「場所を変えましょうか」
4人はビレチーの家へ招かれた。
「お茶をどうぞ」
「ありがとうございます」
「探し物は竜宮城ではないのですか?」
「ええ。竜宮城なんて、子供のころに聞いた童話にしか存在しないと思っていましたから」
「まあそうですよね。伝説や伝承なんてそんなものでしょう」
オーメンが魔道具を探していると言おうとしたときだった。
「こんなとこでどうやって過ごしてるんだ?」
オーサーが割って入った。
「オーサーさん?」
オーメンは彼を睨む
「気になるだろ? こんな海底で40年も、ほぼ子どもだけで過ごしてるんだぞ」
「私たちの旅には関係ないでしょ?」
「俺の作家人生には関係あるの。アマナスとリコも気になるだろ?」
「まあ確かに気にはなりますけど」
「私も聞きたい」
「ほらな?」
「はぁ。ウチの馬鹿がすみません。答えたくなかったら、答えなくて結構ですから」
「いえいえ。初めてのお客さんですから、私もお話がしたいんです」
「そうですか。ではお言葉に甘えて」
「私たちが竜宮城に来た時には、既に建物は在ったんです。生活の基礎である、衣食住の1つが解決しているのはありがたかったです。それに幸い、この周りには魚がいます。食事はそれを獲るとこで何とかしました。着るものについてですが、古いものは洗濯して使い続け、新しいものは漂流してきたものを使って作っていました」
「病気になったときはどうしてるんだ?」
「安心してください。この城の付近では病は治るんです」
「どういう原理だ?」
「それを調査しに、城へ行った者は帰ってきませんでした」
「そうか」
オーサーは落胆する。
「その原理が今回の私達の目的でしょ?」
オーメンは当然とばかりに言った。
「私たちが求めているのは魔道具です。私たちはそこへ向かいます。貴女の事は戻ってから聞きます」
オーメンは3人を連れて行く。
「あの城に行くなら、その必要は無くなりますよ」
「?」
ビレチーは笑顔で手を振った。
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