第64話 金、時間、労力

 昼食を食べ終わり、オーメンたちとジレマは、宿へ戻ってきた。

「お帰りなさい。ちゃんと食べてきましたか?」

「ええ」

 そう言ってジレマはレシートを渡す。そこにはちゃんと、焼き魚定食と書かれていた。

「宣言通りに出来て偉いです。これを何回か繰り返したら次のステップに進みましょう」

「そのステップっていうのは、何段階あるんですか?」

「おっと。言うのを忘れていましたね。第一に自分のためにお金を使う、第二に自分だけの時間を使う、第三に労力を使う。最後に色んな人の話を聞いて、"善い"人と場所を見つけます。それが見つかったらそこで働く。以上の四段階です」

「時間を使うっていうのはどういうことですか?」

「ジレマさんの場合、親の失敗のフォローに時間を使うのではなく、自分の成長に繋がることに時間を使ってみてください」

「難しそうですね」

「大丈夫です。ドランカードさんも、これからは自分で謝りに行くと、さっき約束してくれましたから」

「そうでしたね」

「さて、三段階目の労力についてですが、これは時間とあまり変わりません。強いて違いを言うなら、中長期的な目的を作って、それに向かって努力することでしょうか」

「目的……ですか」

「今回は仕事のことに絞ってみましょうか。このまま料理屋に残るにしても、転職するにしても、将来の事は考えないといけません」

「分かりました」

「大事なのは納得感です。どの道を歩むにしても、納得感がなければこの計画も意味がありません」

「じゃあ、頑張らないとですね」

「そうですよー。差し当たって、今日の事はお父さんともちゃんと話し合ってくださいね。それでどうなったか聞かせてください」

「はい」

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