第49話 話すべき相手

 薄くて四角い箱死者と対話できる魔道具を手にしたアマナスは宿に戻ると、オーメンたちにそのことを報告した。

「やりましたよ皆さん!」

「おかえり」

「ただいまです。じゃなくて、死者と対話できる魔道具を手に入れました。これでスプリアさんを説得できます」

「今日はもうすぐ日が暮れる。明日にしよう」


 翌日。アマナスたちはスプリアのところへやってきた。

「また貴方達ですか。いい加減にしないと警察呼びますよ」

「これで最後にします。だから話を聞いてください」

「はぁ。本当にこれで最後ですよ」

「まずはこれを見て下さい」

 アマナスは魔道具を取り出す。

「嘲笑と堕落の象徴ですね」

「違います。これは希望です」

 アマナスは息を吸う。

「顕出せよ!」

 魔道具からホログラム立体映像が浮かび上がる。

「これは⁉」

 映像に映るのは、初老の男性だった。

「師匠!」

「おう、スプリアか」

「なぜここに?」

「んん?」

 映像の男グレマは周囲を見渡す。

「そうかこの魔道具か」

 グレマは足元の魔道具を見る。

「これは黄泉の魂を映像として現世に投影するものだな」

 グレマは魔道具の性質を考察した。

「して少年よ、何の用で俺を呼んだ?」

 アマナスは経緯を話した。

「なるほど。こいつは頑固だからな。お前さんたちの話は聞かなかったわけか」

「一応聞きましたよ」

 スプリアは苦々しい表情をする。

「あんなー、お前がどんな理由で嫌おうが勝手だが、それで客を返すのは職務怠慢だぜ」

「でも師匠! やっぱ私は魔道具を受け入れられない!」

「お前にも教えただろ。プロとして働くってことがどんなことか」

「ッ……」

 彼はグレマとの師弟の日々を思い返す。

「魔道具を使えとは言わん。ただ、共存する道もある。お前ならそれが出来るだろ」

「……分かりました」

 グレマの姿が薄らいでいく。

「どうやら時間切れみたいだな」

 グレマはスプリアの目を見る。

「しっかりやれよ」

「はい!」

 魔道具の効果が切れた。

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