七つの大罪 怠惰編

第45話 嘲笑と堕落

 アイソ王国を出発した4人は、倉庫を求めウエハー王国へ来ていた。

「あのー、荷物を預けたいんですけど」

「どのような品物でしょうか?」

「魔道具なんですけど」

「お引き取りください」

 担当者は急に敵意をむき出しにした。

「私は長いことこの仕事をやっとりますが、魔道具だけは預からないと決めたのです」

「なんでですか?」

 アマナスは当然の質問をする。

「あんなものは人を嘲笑い、堕落させるものだからです」

「どういうことですか?」

「我がセーフハーバー倉庫会社は昔から人の手によって、品物を管理してきました。しかし、ライバル会社であるクラウドキープ・ロジスティクスは、倉庫の管理に魔道具を使いだしたのです」

「それは別に悪いことではないと思うんですけど」

 アマナスが疑問を口にする。

「悪いことですとも。人の目と手と心によって倉庫は管理されるべきです」

「なぜそう思うんですか?」

「いいですか。倉庫の管理には様々な知識と技術が必要なのです。温度と湿度の管理、緩衝材の用意、近くにおいてはいけない組み合わせなどです。これらは今までの積み重ねがあるからこそできるのです。いわば人の努力と信頼の歴史なのです。それをあんなポッと出のものなんかに管理かれていいわけがない」

「それはなんというか頑k」

「確かな芯があるのですね」

 アマナスの言葉をオーメンが遮る。

「そうです。わが社はあんなナンパなことはいたしません。積み重ねてきた技術と経験によって、必ずお客様の信頼に応えます」

「なら、私たちの信頼にも応えていただけませんか?」

「応えたい気持ちはありませすが、やはりだめです。魔道具は預かれません」

「そうですか。じゃあクラウドキープに任せます」

「それはいけません。魔道具に頼るなんて堕落してしまいますよ」

「私たちはもうすでにしてますので」

 

 四人はセーフハーバー倉庫会社を出た。

「癖のある人でしたね」

「まあ今までの積み重ねが誰かにかっさらわれたら、すぐには受け入れられないのも仕方ないよ。さて、クラウドキープ・ロジスティクスはどんな感じかな?」

 彼らはクラウドキープへ入った。

「いらっしゃいませ」

「魔道具を預けたいのですが」

「構いませんよ」

 アマナスはホッとする。

 手続きはつつがなく進んだ。

「いやぁ良かった。ハーフセイバーでは預かってくれなかったんですよ」

 アマナスは嬉しさから、つい口にした。

「ハーフセイバーですか……」

 担当者の顔が少し強張る。

 しまったと思ったアマナスは謝罪する。

「ごめんなさい。ライバル会社の名前は出すべきじゃなかったですよね」

「いえ、そういうわけではございません。ただ」

「ただ?」

「あの会社の社長は私の父の友人でして」

「そうなんですか⁉」

「その彼が、最近私たちへの敵意をむき出しにしていることが、気になるのです」

「多分、魔道具を使っているからですよ」

「なんと!」

 

 アマナスはハーフセイバーでのことを話した。

「そうだったのですか」

 担担当者は下を向いて、何やら思案する。

「こんなことを頼むのは可笑しいとは思いますが、魔道具が人を嘲笑し、堕落させるものではないと説得していただけませんか?」

「ええ⁉」

「同業者として、そして旧知の仲として、彼がそんな理由でお客様を返すなど言語道断です」

「なら、貴方が直接説得すればよいのでは?」

 オーメンが当然の疑問を口にする。

「私は今目の敵にされているようなものですので」

「私たちも同じなんですけど」

「第三者からの言葉の方が、冷静に受け取れることもありましょう」

「私たちにメリットはないですよね?」

「成功の暁には、タダで魔道具の管理を引き受けます」

「分かりました」

「ありがとうございます」

 こうしてアマナスたちは、頑固者の説得を開始するのだった。

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