第44話 回収
「治療の方法は簡単。「トリートメントブラックマジック。プロインV&ブラックレイン」こう唱えて魔法を使うだけ」
「分かりました」
「まずは、国中の住民を治すだけの魔力を補充してからだね。リコちゃん、魔力分配器貸してもらえるかな?」
「もちろん」
「マルサさんも魔力貸してもらえますか?」
「お前たちの魔力で十分足りると思うが?」
「いいから」
優しい声で誘う。
マルサは何かあるのだろうと思い、魔力を貸すことにした。
杖からは魔力が誘導され、だんだんとアマナスに流れ込む。
「じゃあいきますよ。トリートメントブラックマジック。プロインV&ブラックレイン」
大地に黒い魔方陣が展開される。病に罹っていた人の体が黒く発行する。そして光は魔方陣に流れていく。
魔方陣が消えた。
「これで終わったんでしょうか?」
「治ってるはずだよ。確かめに少し国を歩こうか」
国を歩くと、歓喜の声を上げ、泣いている人たちがいた。また、病院に行ってみると、病で体を震わせていた人たちは皆、落ち着きを取り戻していた。
「本当に治ったんですね」
「君がやったんだよ」
「皆さんの魔力がなければこうはいきませんでした」
「そうか。さて、確認も済んだし、後始末をしようか」
翌日。オーメンはゴミ捨て場を探していた。
「ディレクが使っていた魔道具はマルサが折ってここに捨てた。探せばあるはず」
「お嬢ちゃん、何してるんだ?」
アイクが声をかけた。
「以前のボスが持っていたという刀を探しているんです」
「それなら俺が持ってるぞ」
「本当ですか!」
「捨てるに捨てられず、持っていたんだよ」
「それ、譲っていただくことってできませんか?」
「いいよ。ここも変わるそうだしね」
「王が、教育と仕事を与えるって話でしたもんね」
「決別の時なんだろうな。きっと」
刀を回収した後、オーメンはアマナスたちと合流し、例の国営牧場へやってきていた。
「今回は正式に入れて良かったよ」
「前回はリコを潜入させたんですってね」
アマナスは少し怒る。
「あれしか思いつかなかったんだよ」
「もうさせないでくださいね」
「わかってるよ」
そこに職員が魔道具を持ってくる。
「これが元凶だったんですね」
アマナスはまじまじと見つめる。
「魔方陣が書かれた羊皮紙。これから生き物が召喚されるなんて」
アマナスは関心する。
「なあ、今回は家畜だったけど、人間も呼べるのか」
オーサーが質問する。
「理論上はできますが、どんな人が呼ばれるか分かりませんから、やらないのが無難ですね」
「へー」
オーサーは適当に返す。
「最後に1ついいですか?」
オーメンが質問する。
「これで呼び出した動物の肉は輸出しましたか?」
「いいえ、これは国内のみで消費しました」
「旅行者が口にした可能性はありますよね?」
「そうですね。なので今後はこのことを公表し、魔道具を使い始めた時期から今まででアイソ王国にいらした方には、治療を受けていただかなくてはなりません」
「でも俺はここには残れませんよ」
「故に皆さまには行先が分かるように、次の目的地からは書置きを用意していただきたいと思います」
「まあそれくらいなら」
召喚具の受け渡しが終わった。そしてこの国を出ようとしたとき、声をかけられた。
「四人ともちょっと待ってくれ」
王だった。
「お礼を言いたい。この国を救ってくれてありがとう」
「頭を上げてください。偶然こうなっただけですから」
オーメンがなだめる。
「なあ王様、マルサはどうなったんだ?」
オーサーが聞く。
「彼は、ゴミ捨て場にいた人たちをまとめてもらうことにした」
「よくまとまったな。反対意見は出なかったのか?」
「私の行いが原因であったこと、治療に手を貸したことを考慮し、黙らせた」
「なるほどね」
「ところで、君たちは集めた魔道具はどう保管しているのかね?」
「荷物にまとめてます」
「随分と無防備だね。わらわの旧友が統治している国には、堅牢な倉庫がある。そこに荷物を預けてはどうかね」
「じゃあそうします。書置きを預かってくれますか?」
「ああ。プロインVの後始末を任せてすまないね」
「このままの方が気持ち悪いですから」
書置きの残し、四人はアイソ王国を後にした。倉庫を求め、いざ次の国へ。
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