第43話 解決策

「黒い雨?」

 オーサーが呟く。

「黒い魔力を込めてるね」

「あいつは病をまき散らすと言ってたが、これがそうなのか?」

「多分そうだね。触れたらどんな病に罹るか分かったのもじゃない」

 すぐに雨は止んだ。

「今のうちにマルサと接触しよう」

 オーメンたちは宿を出た。


「アマナス君! 無事か!」

 オーメンが叫ぶ。

「ごめんなさい! マルサを止められませんでした!」

「気にしないいで! 君がいればこの雨も無意味になるから!」

「どういうことですか⁉」

「君の魔力は――」

 説明をしようとしたとき、マルサが遮る。

「煩せーよ! 王都が汚染される様を黙って見てろ!」

 マルサは王宮まで向かった。

「追うよ。掴まって」

 オーメンは飛行魔法を使って追いかける。


 そして王宮に着いた。

「今から突入する! そして王を見つけ必ず雨をかけてやる! 覚悟しろ!」

 マルサは怒りのままに進撃を続ける。

 オーメンと王宮の衛兵たちは魔法で迎撃するが、マルサの堅い防御魔法を崩せなかった。

 マルサは防御魔法を展開したまま建物に突っ込んだ。

「さあ、絶望の時間だ!」

 マルサは王宮中に雲を広げ、雨を降らせた。


 雨の中、よぼよぼになった王がマルサの前に現れる。

「賊よ。そなたの目的は何だ?」

「お前を殺すこと」

「なぜ殺したいのだ?」

「お前が家族を殺したから」

「いつ殺した?」

「18年前、お前が母さんを追い出した! それが発端だ!」

「そうか。お前、あの時の子か」

「お前が母を捨て、病気になった国民を捨てた。そのせいで俺の家族は死んだ。ただで死ねると思うなよ」

「好きにするといい。わらわは既に病体。この雨に当たらなかったところで、近いうちに死ぬ」

「そりゃいい。止めを刺せるなんて、俺はついている」

 マルサは刀を取り出し構える。

「あばよ」

 しかし振り下ろした刃は王の首に届かなかった。

「何とか間に合ったね」

 オーメンが防御魔法を使い、王を守った。

「邪魔をするな小娘!」

「同い年でしょ。それより、プロインVの解決策があるから聞いて」

「家族は帰ってこない」

「ゴミ捨て場の住民を見捨てるの?」

「……。話せ」


「プロインVは魔道具によって召喚された動物たちが保有していた。恐らく食事によって広まった。だから魔道具を使用しなければ問題ない」

「されではすでに罹った人はどうなる⁉」

「そのカギになるのが、そこで伸びてるアマナス君だよ」

「こいつが?」

「彼は黒い魔力を持ってる」

「黒魔法は、病気に罹らせることは出来ても、治すことは出来ないはずだろ」

「彼はとある村で、魔力操作を受けた。それによって、黒い魔力や魔道具による病なら、治すことも出来るようになったんだよ」

「何だと」

「王様の病気は、それとは別のものだから治せないけどね」

「そうか、なら安心したよ。色々と」

 

 話が終わると、オーメンはアマナスを起こす。

「アマナス君。起きて」

「うーん。ハッ。ここは?」

「王宮。死者は出てないよ」

「そうなんですね。良かった」

「起きて早々悪いけど、一仕事してもらうよ」

 オーメンは事情を説明した。

「分かりましたけど、俺一人の魔力量じゃ何日かかるか分かりませんよ」

「安心して、リコちゃんの魔道具を使って、私たちの魔力を分けるから」

「それなら1日で終わりますね。よーし、頑張るぞー」


 アマナスがオーメンとやり取りをしている間、マルサは王と話をしていた。

「王。プロインVが解決したらやってほしいことがある」

「何だ」

「ゴミ捨て場の民に教育と、まっとうな仕事を与えてやってくれ。それで復讐はチャラにしてやる」

「分かった。手配しよう。それが私に出来る償いだ」

 かくしてアマナスはプロインVの治療を始めるのだった。

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