第39話 ゴミ山の王

「麻薬売買は失敗した」

 マルサは臆することなくそう告げる。

「そうか。なら責任とらねーとな」

 ディレクは動揺しなかった。されど、確かに怒りは抱いていた。

「その責任のことだけどよー。やっぱお前が取るべきだぜ。ディレク」

「バカ言ってんじゃねー! テメーのミスはテメーが拭えや!」

「テメーが発端だろうがよ!」

 マルサは魔法を構える。ディレクも魔法を構える。


 ドカンと音が鳴る。ごみ山が次々に崩れる。周囲の人は逃げ惑う。

 互いに死力を尽くし戦った。1時間もの間戦い、遂に勝敗は喫した。

「うりゃー」

 マルサが氷の槍を突き立て、ディレクの心臓に刺した。

「ゴハッ」

 ディレクは倒れる。

 マルサは息を整える。

「やりやがったなクソガキ。この恩知らずが」

 ディレクは息絶えた。

「兄ちゃん」

「もう大丈夫だ。俺たちを責めるやつはいない」

 安心させるために笑うが、ショシーロからすれば、罪悪感しか残らない。


 ディレクを殺したマルサは、ディレクの家を物色した。

 そこには大量の金と麻薬があった。そして。

 これは、魔道具だ。カリスマ性を上げる刀。なるほど、こんなものがあったから、奴はここのボスをやれてたのか。だが俺には要らねー。

 マルサは刀をバキンと折った。そして、ごみ山の頂点に立つと。

「今日から俺がここのボスだ! 麻薬売買は即刻中止する! そして、前ボスの財産は皆で山分けだ!」

 そう宣言した。


 山分けした財産で、母の薬を買いに行ったマルサだが。

「最期に言いたいことがあるの」

「最期なんて言わないでよ」

 ショシーロは、震える声でそう言う。

「マルサ、ショシーロ。こんな育て方しちゃってごめんね。お母さんのことは恨んでくれても構わない。でも私以外の誰かを恨まないで」

「うん。分かったよ。誰も恨まない」

 ショシーロは答えた。しかしマルサは何も言わなかった。

「マルサ。ショシーロをお願いね」

「っ……。ああ!」

 そしてアマントは息を引き取った。

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