七つの大罪 憤怒編

第36話 プロインV

 4人は食い倒れの町を出て、次の目的地へと歩いていた。

「次はどこを目指すんですか?」

 アマナスが質問した。

「次はアイソ王国。ベルから聞いた話によると、一年前に疫病がはやり、アイソ王国からの仕入れが無くなったらしんだ。その疫病に魔道具が関わっていないか、調査しに行く」


 4日後、彼らはアイソ王国に着いた。

「皆気を付けてね。疫病はまだ収まってないらしいから、マスクを外さないように」

「はーい」

 リコが元気よく答える。

「ひとまず宿をとったら、病院へ行こう。疫病がどんなものか知りたい」

「分かりました」

 彼らは宿に着くと、受付に、この国で一番大きい病院は何処かを聞いた。


 そして病院に着くと、そこには順番待ちの患者が百人以上いた。

「これは……」

 アマナスは驚きで声が出ない。

「相当な感染力のようね。平日の午前からこれだけの人が病院にいるなんて」

「そういえば、街には出歩いている人は殆どいなかったし、酒場も閉じていたな」

「皆苦しそう。皆治るよね?」

 リコは患者たちを心配する。

「きっと大丈夫だよ」

 アマナスは口だけを笑わせ、答える。


 順番になり、四人は診察室へと呼ばれる。

「本日はどうされました?」

「一年前から流行ってる疫病について聞きたくて、ここに来ました」

 医者はため息をついた。

「そういうことはよしてくれないかな? ただでさえ人手が足りないんだ」

 医者は怒りを表す。

「ここに来て確信しました。これは魔道具のせいです」

 オーメンは冷静に返す。

「ということは、反応したんですね?」 

 アマナスが食いつく。

「反応? 何のことです?」

 医者は首をかしげる。

 そこでオーメンは医者に魔道具を触らせる。

「なるほど。これが反応したんですね」

「そういうことです。何か心当たりはありませんか?」

「ありませんね」

「残念です」

「そもそも魔道具といっても、病原体を生み出すものなんて聞いたこともありませんよ」

「病原体?」

「はい。この病はプロインVという、未知の病原体によるものなんです」

「魔道具由来のウイルスですか?」

「いえ、ウイルスでも細菌でもなく、たんぱく質なんです」

「それに罹るかかるとどうなるんですか?」

 アマナスが聞く。

「これに罹ると、記憶障害や筋肉の震え、歩行が不安定になる、痙攣などが起こります。そして恐ろしいことに、患者の脳はスカスカになるんです」

「治す方法はないんですか?」

「今のところ治療法はなく、致死率も100パーセントです。さらに言うと感染経路も不明です」

「そんな……」

 リコとアマナスの表情は曇る。

「でも、拡大は止められる」

 オーメンはまっすぐとした声で話す。

「原因が魔道具なのは間違いない。それを見つけて壊せば、被害が出るのを止められる」

 医者の目を見て提案する。

「この件、私たちに任せてくれませんか?」

「今は猫の手も借りたいくらいだ。是非もないよ」

 こうしてアマナスたちは公式に、この疫病について調べられることになった。

 

 会計を済ませようとしたとき、リコは前の客のスタンプを見た。リコとその客の目が合った。

 客はリコを見るなり目を見開いた。

「えっと。ごめんなさい?」

「謝ることはないよ。こちらこそ怖がらせてごめんね」

 客は病院を出ていった。

「次のお客様ー」


 会計を済ませ、四人は病院を出た。

「さて、お昼だし、食事にしようか」

「といっても店はあんまりやってねーけどな」

「ここに来る途中、牛丼屋を見つけたからそこに行こう」

 四人は牛丼屋に向かった。


「いらっしゃいませ」

「並盛3つで」

「かしこまりました」

 待つ間に、会議をする。

「さて、何の手がかりもないわけだが、どうする?」

「国中を回りながら探知機が反応しないか確認する」

「しらみつぶしかよ」

 オーサーがツッコミを入れる。

「患者さんから話を伺うのはどうでしょう?」

 アマナスが冷静な提案をする。

「そうだね。それがいい」

 オーメンが賛同する。

 結論が出た時、丁度品物が届く。

「お待たせしました。並3つです」

 アマナスとオーサーは食べ始める。しかし、オーメンは箸にすら手を付けていない。

「食べないの?」

 リコが不思議に思い、質問する。

「店員さん。これ包んでもらうことって、できますか?」

「出来ますよ」

 店員は愛想良く答える。

「3人とも、ヒントを掴んだよ」

「まさか!」

「そう。この牛丼、魔道具が反応した」

 思わぬところからヒントを得た。この牛丼が一体どう関係しているのだろうか。

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