第35話 告白

 ベルは翌日、ハンスの家に向かった。

「すみませーん」

 戸を叩く。

「はーい」

 ハンスが出てきた。

「君は……、ベルちゃん?」

「うん」

「休学中じゃなかったの?」

「そうだけど、伝えたいことがあって」

「とりあえず上がってよ」

「じゃあお邪魔します」


 その様子をアマナスたちは影から見ていた。

「大丈夫ですかね?」

 アマナスはドキドキしっぱなしだ。

「そう信じるしかないでしょ」

 逆にオーメンはあっさりしていた。

「ハンスってやつ、なかなかイケメンだな」

「お家入っちゃたね」

 これでは様子を見れない。窓から見ようと移動した。


「ジュースどうぞ」

「ありがとう」

 ハンスは二人分のジュースを出した。しかし彼女はそれを口にはしなかった。

「ねえハンス君」

「ん?」

「私が前に告白したの、覚えてる?」

「ああ、うん」

「今日はリベンジに来たの」

「リベンジね」

 彼はジュースに視線をやる。

「ハンス君。今でも私は貴方が好き。貴方は覚えてないかもしれないけど、入学式で私がお腹を鳴らしちゃったときに、ハンス君は式が終わった直後にお菓子を分けてくれた。その時から貴方が好きなの。私と付き合ってください」

「……」

 ハンスは少し心苦しそうな顔をする。

 

 外野で4人は密かに檄を飛ばす。しかし。

「ごめん。今僕には彼女がいるんだ。だから付き合えない」

 撃沈した。2度も。

「そっか。ごめん。迷惑だったよね。私帰るね」

 ベルはそそくさと彼の家を出た。


 ベルは家に帰ると泣いた。声を上げて泣いた。

 昼になり空腹感とともに、気持ちを落ち着かせた。

 アマナスたちは泣き止んだを確認してから彼女の家に入った。

「ハンスだけが全てじゃない。「"好き"を分析すれば向ける先を変えることも出来る」って師匠がいってた」

 オーサーは、叶わなかった恋を抱えた者同士。自分と彼女を少し重ねてしまった。

「そうかもしれないですね。考えてみます」

 まだ彼女は立ち直ったわけではないが、作り笑顔を浮かべられるくらいには、回復していた。

 その後皆で昼食を摂り、残念会を開いた。

 

 翌日ベルの体重は目標の45キロに達した。

「おめでとう。よく頑張ったね」

 オーメンは花束を贈る。

「ありがとうございます。皆さんがいなければ、どうなっていたことか……」

「気にしないで。私がやりたくてやっただけだから」

「そう言ってくれると助かります」

「私たちはそろそろこの町をでるね。魔道具が待ってる」

「そういうことなら、これを持って行ってください」

 ベルは水筒を渡す。

「いいの?」

「もう必要ありませんから」

「そう。ありがとう。強いのね」

「ただの恩返しですよ」

 二人は笑顔で魔道具を受け渡した。

「貴女は悪くない。今回はタイミングが悪かっただけ。だから自分を責めないようにね」

「はい。皆さんの旅が希望に満ちたものであることを、心から祈っています。お気をつけて」

「ありがとうね」

 こうして4人は食い倒れの町を出た。次はどんな魔道具が待っているのか、彼女たちはまだ知らない。

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