第31話 追跡
追跡
「まずは情報収集ね。どんな人なのか知らないと、説得の鍵を掴めない」
「情報収集って、具体例に何をするんですか?」
「もちろん。尾行よ!」
四人は適度に散らばり、物陰に隠れながら家まで彼女をつけた。
「とりあえず家は特定できたから、皆は帰っていいよ」
「オーメンさんはどうするんですか?」
アマナスが質問する。
「朝までここで待機」
「一晩中ここにいるんですか⁉」
「そうしないと、いつ起きて来るか分からないじゃん」
何という執念だ。と感心するばかりだ。
「いやでも危険ですよ」
「私が強いのは知ってるでしょ?」
「それはそうですけど……」
確かにブリテー王国と戦ったときは、一撃で千人近くを倒してみせた。彼女が強いのは間違いない。しかし。
「ト、トイレはどうするんですか?」
「隠れてするしかないでしょうね」
「嘘でしょ」
嫁入り前の娘がやることじゃない。
「そんなことさせられるわけないじゃないですか!」
「でもリコちゃんをこんなところにいさせられないし」
「ならオーサーさんに任せればいいじゃないですか」
「でも酒場に行きたそうだし」
オーメンは指をさす。
「こんな時くらい我慢してくださいよ」
アマナスがキッと睨み、オーサーを威圧する。
「あ、うん。分かってるよ」
目が泳いでいる。駄目だ。頼りない。
「ならせめて交代制にしましょう。俺とオーメンさん。どっちかは必ずリコちゃんのところにいる。これならどうですか?」
「分かったよ。それで手をうとう」
「おい待て、俺も残るわ」
かくして 夜が明けた。
それから二時間。午前八時頃。四人は集合し、彼女の家付近にいた。
「もう
オーサーは不満を漏らす。
リコは目をこする。
「ごめんね。まだ眠いよね」
アマナスがリコに謝る。
「ううん。三人の方が眠いでしょ?」
「大丈夫だよ。一晩くらいへっちゃらさ」
そんなやりとりをオーメンが切り裂いた。
「出てきたよ」
四人は彼女を追う。
串カツ、お好み焼き、鍋、うどん。とにかく食べてばかりだった。
「いいなー」
「まだ昼前なのに」
「いくら安いとはいえ、よくお金もつわね」
「酒さら俺も……、いや無理か」
四人はそれぞれ感心する。
そして流れるように、お昼になった。
相変わらず彼女は食べてばかりいる。
「朝からずっとなんて、どんな体してんだ」
オーサーが驚く。
「あの食べっぷりは魔道具とは関係ないんですよね?」
アマナスは引き気味に聞く。
「魔道具の反応は一つだけだから、あれは自前だよ。信じられないけど」
「そうとも限らないぞ。俺の魔道具が、アイデアの
そんなやりとりをしていると、彼女はふらっと歩き始めた。
「店から離れるよ」
オーメンが驚く。
「やっと、あいつを探れるな」
四人は彼女の後を追う。
彼女は森に入った。
「森だと?」
「一体何の目的が?」
四人も森の中に入っていく。
彼女は森に入ってから、ずっと歩く。時折屈み、何かを見つめてはまた歩き出す。これを繰り返していた。そして三十分ほどが経過した。
「アマ兄、疲れた」
「オーメンさん。ちょっと待ってもらってもいいですか?」
「急いでね」
アマナスはリコに背を向け屈む。
「ありがとう」
リコを背負って歩くことにした。
それからさらに十分後。彼女は茂みに隠れる。四人も少し離れた茂みに隠れる。
待つこと五分。茂みの前に鹿の十匹ほどの群れがやってきた。
「
彼女は群れをまとめて攻撃し、狩りをした。
そして彼女は迅速に、下処理をし、解体を始める。
「まさかあれ全部食べるつもりですか⁉」
アマナスが驚く。
「十匹だと二百キロ以上だぞ⁉ 無理だろ⁉」
解体が終わるころ、彼女に近づく人の群れがあった。
「貴様! そこで何をしている⁉」
「鹿の解体です」
「貴様が狩ったのか?」
「はい」
「許可は?」
「とってません」
周囲はざわつく。
「明確な違法行為だ。一年以下の懲役、または五十万の罰金だ」
「そんなー」
どうやらピンチのようだ。
「どうします? 捕まっちゃいますよ?」
オーメンの方を見るとそこに彼女の姿はなかった。
「あのーすみません」
なんとオーメンは彼らに話しかけていた。
「狩るように指示したのは私なんです」
「貴様が?」
「はい。今日ホームパーティをしようと思って、彼女に肉の調達を任せてたんですよ」
「なら貴様にも罪はある。ついてきてもらおうか」
オーメンは彼女と共に連れていかれた。
「どうするんですか⁉」
アマナスが困惑する。
「とりあえずあいつらについていこう」
「お姉ちゃん大丈夫かな?」
「きっと大丈夫だよ。考えなしで突っ込む人じゃないと思うし」
オーメンが連れていかれ、困惑する三人たち。オーメンは無事に戻って来るのだろうか。
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