七つの大罪 暴食編

第30話 食い倒れの町

食い倒れの町

 マモ邸宅を出た四人は、彼の進言通り食い倒れの街に来ていた。

「すっかり夜になっちゃたね」

 とオーメンが。

「夕食は近場でチャチャっと済ませちゃいましょうか」

「そうだね。夜遅くまでリコちゃんを連れ歩くわけにはいかないし」

「俺は酒場に行きたい」

「宿をとってからにしてください」

 オーメンが注意する。

 四人は早速、レストランに入ることにした。


「いらっしゃいませ」

「四人です」

「こちらのお席どうぞ」

 四人はカウンター席に案内された。

「混んでますね」

「それだけ人気ってことでしょ。期待できそうね」

 オーメンは塩、アマナスは味噌、オーサーは豚骨ラーメンを頼んだ。リコはオーメンから少しわけてもらうことにした。

 注文の品が来るまで手持ち無沙汰になったが、退屈はしなかった。なぜなら……。

「わー、美味しそう!」

 隣の客が特盛チャレンジを始めたからだ。しかもやせ細っている女性が。

 器を除いても四キロはありそうな量だった。それをズルズルとかきこんでいく。その姿は圧巻だった。

 周囲の客も彼女に注目していく。


 彼女が四分の一ほど食べきったころ、四人の注文の品がやってきた。

 四人も彼女を気にしながら食べた。

 そして驚くことに、ほぼ同時に完食した。

「おめでとうございます。お代は無料。そしてこちら次回割引券です」

「おー」

 歓声が上がる。

 その裏で四人は会計をしようとしていた。

「二千百ゼニーです」

「やっぱり安かった」

マモあいつも案外庶民的なんだな」

 店を出るとオーメンが急に喋り出す。

「彼女、魔道具を持ってる」

「!」

「探知機が反応してたし、それでなくても、あの食べっぷりは魔道具の関与を疑わざるを得ない」


 彼女は店を出ると、水筒で飲み物を飲んでいた。

 オーメンの魔道具が強く反応する。

「あれだ」

 オーメンが飛び出す。

「あのーすみません。今何を飲んでいたんですか?」

「ただの水ですよ」

 彼女は愛想よく答える。

「先程の大食いのアフターケアみたいなものですか?」

「フッフッフ。これはですね。何を食べても太らない魔道具何ですよ」

 オーメンはニヤリとする。

「私は魔道具を集める旅をしておりましてね。それ、譲ってはいただけませんか?」

「駄目です! これは私に舞い降りた希望であり、奇跡なんです」

「そうですか。そのお話、詳しく聞かせていただいても?」

「嫌です! そんな義理はありませんから! じゃあ」

 彼女は怒って去ってしまった。


「まあ落ち込まないでくださいよ」

「他の方法を考えようぜ」

 男性陣は励ます。しかしリコは違った。

「ねぇお姉ちゃん。本当にあの人からも集めないと駄目?」

「なんでそう思うの?」

「あの人は希望って言ってたでしょ? 私にとっても魔道具は希望だったから、取られたくない気持ちも分かるの」

「ならあの人ごと連れていっちゃえばいいんだよ」

「お姉ちゃんは、そんな理由で私を連れていったの?」

「いや、リコちゃんの意思を汲んだだけだよ」

「だったらあの人にも、ついてきたいかどうか、ちゃんと聞いてね」

「勿論」

 ニコっと答える。

「さて、説得の準備だ」

 オーメンは声をかける。

 はたしてこの説得はうまくいくのだろうか?

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