第28話 知ったような口

知ったような口

「今日は荷物持ちをやってもらう」

「了解」

「「かしこまりました」だろ」

「かしこまりました」

 オーサーは不貞腐れたように答える。


 アマナスとオーサーとセバスは街に繰り出し、買い物に付き添う。

 洋服店。

「このブランドの服を一式、五着くれ」

「三十二万四千ゼニ―です」

 レストラン。

「今日は特別に貴様らの分も払ってやる」

「十二万ゼニ―です」

 宝石店。

「この店の一番高いアメジストとパール、ルビーをくれ」

「七百十二万ゼニ―です」

「一回払いで」

「ありがとうございました」


「スゲー買うじゃん」

「敬語を使え。敬語を」

「たくさんお買いになるのですね。ご主人様」

「わざとらしいな」

 どうせいっちゅーんじゃ。とオーサーは思った。

「貴族が金を使わなくてどうする」

「お鼻におつきになりましてよ」

「お前はもう黙れ」

 四人が買いもから帰ると、クロが慌てた様子で出迎えた。


「マモ様、旦那様が亡くなられました」

「「!!」」

 アマナスとオーサーは驚く。しかしマモは平静を崩さない。

「そうか。報告ありがとう」

 マモは淡々と、事務的に受け答えた。

「なんでそんなに冷静でいられるんですか?」

 アマナスが神経を疑う。

「クロが来た時から、既に何度か倒れてる」

「だからって、そんなにあっさり受け止めないでくださいよ!」

「知らないよ。あんな父親」

 バキッ!

 オーサーがマモを殴る。

「俺も家族はそんなに好きじゃないが、流石に死んだとなれば悲しむぞ」

「だから俺も悲しめって?」

「ちげーよ。いつまでウジウジしてんだって言ってんの」

「してねーよ」

「してるだろ。今日だって、たいして価値も分かってねーで、高いもんばっか買って……。それでお前は充たされてんのかよ⁉」

「知ったような口を!」

 マモはオーサーを殴り返す。

「この野郎」

 オーサーが再び殴る。

「損害賠償人の分際で生意気な!」

 マモは雷魔法を放つ。オーサーはそれを防御魔法で受け止める。

魔法それを使ったら、終わりだろうがよ!」

 オーサーも火炎魔法で攻撃する。

 ドカンと大きな音が立つ。

「なんの騒ぎ⁉」

 オーメンがリコを連れて屋敷から出てきた。

「オーメンさん。オーサーさんとマモさんが……」


「なるほど。地雷を踏んだのね」

「止めて下さいよ、オーメンさん」

「無理矢理止めてもわだかまりが残るでしょう。ここはやるだけやらせてあげましょう」

「……やばくなったらお願いしますよ」


「お前に俺の何が分かる⁉」

「父親から愛されたかったんだろ⁉ テメーは!」

「違う! 違う違う!」

「何が違うってんだ⁉」

「俺にはクロとセバスがいる! 父親などいなくても問題ない!」

「だったら何で鉱山のことで、セバスをクビにしようとしたんだ⁉」

「ッ!」

「ただの八つ当たりだろうが!」

「黙れー!」

 マモが大技を撃つ。それに対抗しオーサーも大技を撃つ。

「オーメンさん!」

 オーメンが防御魔法で大技を閉じ込めようとしたときだった。

「ダメー!」

 クロが間に飛び出した。

「!!」

 放った魔法は止められない。クロが二人の技をモロニ食らった。

「クロー!」

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