七つの大罪 強欲編

第26話 炭坑

炭坑

村を出た四人は、老人の言う通り、鉱山へと足を運んでいた。

「鉱山ってお金になるの?」

 リコがアマナスに質問した。

「鉱山では、燃料になる鉱物や宝石が採れるんだ。それを売れば儲かるってかんじだよ」

 アマナスが答える。

「どうやってとるの?」

「普通なら、ツルハシを使うんだけど……」

「そうだね。私たちは持っていない」

「じゃあ諦めるの?」

「こうする」

 オーサーはそう答えると、壁を爆発させる。ボカンという音と同時に、足元へ鉱石が転がる。

「うわぁ、ビックリしたー」

 とリコが。

「けほ、けほ。いきなりやらないでくださいよ」

 アマナスは不満を述べる。

 そんな二人を余所に、オーメンは鉱石を拾う。

「石炭だね。最も使われている燃料だ」

「当たりだな」

「でも小さい。もっと慎重にやろう」


 こうして二人は炭坑を始める。

「お兄ちゃんはやらないの?」

「リコちゃん。俺たちはああいう魔法は使えないんだ。黒い魔力は他の魔法とは違うからね」

「そう。黒い魔力は病や呪いをかけることしか出来ないんだ」

「そんなぁ」

「ごめんね。俺が普通の魔力を持っていたら」

 悔しそうな顔をする。

「気にしないで。私はお兄ちゃんのお陰で"村人"になれたから」

 感極まり、ぎゅっと抱き締める。

 とそこに、男がやってきた。

「もし。そこの方たち。何をしておられるのです!?」

 四人の視線が男に集まる。

「ここはマモ様の敷地ですよ! 勝手に入られては困ります!」


 彼によるとこの鉱山はマモという男が、つい最近購入したらしい。

「お金持ちなんですね」

 アマナスが褒める。

「貴族ですので」

「貴族……」

 オーメンがボソッと呟く。彼女は自分の家のことを思い、気付かれないくらい少し眉をひそめる。彼女もまた、ひもじい思いをしていたのだ。

 「なら少しくらいは大目に見てほしいですね」

 オーメンが毒づく。

 「申し訳ございません」

 「なあ、もうここ出ようぜ」

 オーサーが提案する。

「お待ちください」

 男が止める。

「今回に限れば、私が嘘の報告をすればよいだけの話です」

「いいんですか?」

「炭坑ではこういうこともありますでしょう」

 男は四人が採掘することを許可した。


 オーメンとオーサーは魔法で採掘を続ける。リコとアマナスは男からツルハシを借りて、後退で採掘をする。

 三十分ほどが経過した。

「そろそろ休むか」

 とオーサーは声を掛ける。

「私はもうちょっとやりたい」

 リコはまだやり足りないようだ。

「了解」

 三人が休憩に入ろうとしたその時だった。

「危ない!」

 爆発が起きた。オーメンが全員を防御魔法で守った。

「何が起きたんですか?」

 アマナスは慌てふためく。

「粉塵爆発です」

「粉塵爆発⁉」

 男が説明を始める。

「可燃性のメタンガスに、火花が着火して爆発したのです」

「うわぁ、ビックリした」

 煙が晴れ、リコの姿が現れる。

「爆風は防いだけど、ガスまでは防ぎきれないし、崩落の危険があるから外出るよ!」

 オーメンが皆に注意喚起する。


「危なかったな」

「とりあえず何処かで休みたいね」

「でしたら、我が主の屋敷へいらっしゃいますか?」

 鉱山を出て、男が四人を屋敷に案内する。


 当主屋敷。

「おかえりなさいませ。セバス様」

 メイドが出迎えてくれた。その顔はオーメンの顔と瓜二つだった。

「クロさん。マモ様はいらっしゃいますか?」

「お部屋に」

「ありがとうございます」

 

 セバスはマモに経緯を話す。

「なるほど。セバス。話は分かった」

「不運な事故です。どうか寛大な処置を」

「お前はクビだ」

「ッ」

「それと、貴様らは損害を補填してもらう」

「ではここで働かせてください」

 オーメンがそう申し出る。

「……いいだろう」

 マモはオーメンの顔をジロっと見て、許可をだした。

「セバス。クビは見送る。その者たちを教育してやれ」

「かしこまりました」

 かくして四人は損害を埋めるまでの間、マモ邸宅で無給労働をすることになった。

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