第20話 追放 再び

追放 再び

翌朝。オーサーは昨晩のことを二人に話した

「そういうことだったんですね」

「知ってたのか?」

「この国に入った時から、探知機が反応しっぱなしでしたから」

「言えよ!」

「反応が強いところを見付けてから言おうと思ってたんですよ」

「まあ兎に角だ。王様が持ってるのと仮定して、どうやって会うかが問題だ」


 それぞれが考えを披露する。

 まずはリコが

「会いたいって言えば会えるんじゃないの?」

 次にアマナスが

「オーサーさんは作家ですし、取材と銘打てば会えるのでは?」

「王宮に入れても、俺の知名度じゃ王には会えねーよ。ここは侵入するしか――」

「それは駄目ですよ」

 アマナスがバツを出す。

「なら脅しましょう」

「「「!!」」」

 緊張が走る。

「どんな理由であれ、国民に嘘を吐いている。それは明確な弱点よ。そこを突く」

「それはもっと駄目ですよ!」

「じゃあ他に案はあるの?」

「ッ。ありませんけど……。二人は?」

「ごめん。思いつかないや」

「文句無し」

 二人とも反論は出来なかった。

「決定ね」

 やっぱりこの人は魔道具のこととなると、視野が狭まるんだ。


 そんなこんなで手紙を出した翌日。四人は王宮へ呼び出された。

「よく来てくれた」

 念願の王との邂逅である。

「はじめましてモナク王。お手紙はお読みいただけたでしょうか?」

「ああ読んだとも。私の秘密を知っているとね。はて、何のことだか検討もつかぬが?」

「家臣の手前、嘘を通さねばならないのは分かりますが、私にはお見通しですよ」

 王は冷静なままだった。

「モナク王! あなたは魔道具を使用している! 」

 家臣たちがざわつく。

「皆の者、落ち着きなさい」

 王が場を静める。

「旅人よ。そなたがそう考えた根拠を話してみなさい」

 王は余裕な態度を崩さない。

「王が聡明であるように、私も聡明なんですよ」

 ニマァと笑顔を浮かべながらそう言った。

「ふざけているのか?」

 流石に王も怒りをあらわにする。

「ふざけているのは貴方もでしょう? 国民には使うなと言っておきながら、自分だけ使うなんて。我儘すぎるでしょ」

 嘲笑と共に煽る。

「その者達を捕らえろ! 不敬罪で死刑だ!」

「やってやりますよ!」

 オーメンはやる気満々である。

「バカ言ってないで逃げますよ」

 アマナスがリコとオーメンの手を引く。


「待てー!」

「待てや!」

「待たんかいワレ!」

 警備の者がアマナス達を追いかける。

「めちゃくちゃ怒ってるじゃないですか」

「私なら倒せる」

「やらないでください」

「これが! 経験!」

「けーけん!」

「二人も盛り上がらないでください」

 逃げる四人を反対側からも追ってくる。

「挟まれちゃいましたよ」

「やっぱりるか」

 それしかないのかと絶望するアマナスだったが、横から声がした。

「こっち来て」

 振り向くと、先程は王の後ろに立っていた家臣が手まねいていた。その目は真剣そのものだったから、アマナスは家臣の方へと行くことに決めた。

「三人ともこっちです!」

 彼は三人を誘導する。


「どこ行った!」

「探せ!」

 警備員達は四人を見失った。

 彼らが逃げたのは廊下にある隠し通路だった。

「助けていただき、ありがとうございます」

 アマナスは家臣に頭を下げる。

「お気になさらず」

 と、家臣は言う。

「私は側近のアントラです。皆さんには隣の村まで逃げてもらいます」

「なぜこんなことを?」

「歩きながら話します。ついてきてください」


 アントラは通路を進みながら、真意を話す。

「皆さんは、この国が農業国家と呼ばれていることはご存知ですか?」

「知っています」

「ではその農作業を行っているのが誰なのか、ご存知ですか?」

「農家じゃないんですか?」

 アマナスは農家がやるのが当然と思い、そう聞いた。

「奴隷です」

「!」

「表向きは、他国からの難民を受け入れ、仕事を斡旋していることになっています。しかし実情は、他国の貧困家庭の子どもを買い、無理矢理働かせているのです」

「なんてことを」

 アマナスは憤る。

「しかも最近は、炭鉱に手を伸ばすために、さらに奴隷を求めています」

「それは何としても阻止しないと」

「今回の標的は隣の村です。皆さんには先に村に行き、このことを村民に知らせて欲しいのです」

「分かりました。必ず伝えてきます」

「ありがとうございます。私も機を見てそちらに伺います。さあ、外に出ますよ」

 隠し通路を出ると、そこはブリテー王国の外だった。

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