七つの大罪 傲慢編

第19話 目的

目的

街を出てすぐのことだった。

「魔道具を集めてるって言ってたけど、具体的にはどれくらい集めるんだ?」

 オーサーが問う。

「出来るだけ全てです。世界を一周することになるかもしれません」

「大きく出たな。二人は知ってたか?」

「いえ、そこまでは」

「私も」

「おいおい大丈夫かよ……」

 オーサーは呆れ顔をする。

「因によー、皆は欲しい魔道具とかあんの?」

「俺は人の役に立てるようになれるものが欲しいですね」

 アマナスが答える。

「私は頭が良くなるのが欲しい」

 リコが続ける。

「で、オーメンは?」

 確かに気になる。俺はこの人に拾われたからついてきたけど、具体的なことは聞いてこなかったんだよな。とアマナスは思った。

「私は……」

 オーメンは言い淀む。

「皆言ってんだ。お前だけ言わないのはナシだぜ」

「そういうオーサーさんはないんですか?」

「俺は執筆の役に立つものなら何でも。ほら答えたぞ」

「……私は、死者を蘇らせるものが欲しい」

 皆息を飲んだ。

「何だ、会いたい人でもいるのか?」

「ちょっと、デリカシーに欠けますよ」

 アマナスは制止する。

「でも気になるだろ」

「それはそうですけど……」

 オーメンを見る。

「ごめん。それだけは内緒」

「……分かった。もう聞かねーよ」

「ありがとうございます」 

「なあ、次はどんなとこに行く予定なんだ?」

 オーサーはパッと切り替え、目的地について話を振る。

「次はブリテー王国。農業が盛んな国です」

「農業かー。じゃあ美味いもんでも食えるといいな」


 それから二日後、彼らはブリテー王国に到着した。

「やっと着いたー」

 とリコが。

「何だか甘い匂いがします」

 アマナスは国の匂いを気にした。

「農業が盛んだからね。砂糖や麦、ブドウ、他にも色々作ってるみたい」

「なら酒もあるんだよな?」

 オーサーは目を輝かせて聞く。

「酒場ならあると思いますけど、夜に一人で行ってきてくださいよ」

「分かってるって。未成年を連れてくほどバカじゃない」


 それから彼らは国を見てまわった。ケーキ屋、果物屋、料理店などが屹立していた。

 そして夜が来た。

「じゃあ俺は酒場行ってくるから」

 オーサーはそそくさと宿を出ていった。

「じゃあリコちゃんはもう寝ようか」

 アマナスはリコを促す。

「うん」

「オーメンさん。リコちゃんを頼みます」

「任せて」

 彼らは男女別々の部屋をとった。リコはまだ子どもだが、オーサーがいる手前、オーメンと同じ部屋に泊めることにしたのだ。


 夜も更けた頃、オーサーは帰ってきた。

「おいアマナス起きろ」

「んー。何ですか? まだ夜じゃないですか」

「面白い話を聞いたんだ。お前には先に教えてやる」

「面白い話?」

「そうだ。何でもこの国は、魔道具の使用を禁止しているらしい」

「え! 何でですか!?」

「魔道具は不吉なものだから、自分達は綺麗に生きよう。だってさ」

「不吉……」

 その一言で、アマナスは自分のことのように感じた。

「でもそれだけなら、面白くはないですよね?」

「ここからさ。魔道具の使用を禁止しているくせに、国王は天災から何度も国を守ってきたらしい」

「それは、怪しいですね」

「だろ? 公式では、王の頭が良いからってことになってるらしいが、ありゃどう考えても魔道具の仕業だ」

「だとしたら何でそんなことをしてるんでしょうか?」

「それは明日オーメンに話してからにしようぜ。俺も眠い」

「分かりました」

 そして二人は眠りに落ちた。

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