第17話 犯行動機
犯行動機
四人は近くの喫茶店に入り、話をすることにした。
「ネタを探してるとのことですけど、魔道具の影響です」
「根拠は?」
「これです」
オーメンはそう言って、探知機を見せる。
「これは魔道具かい?」
そう言って手に取る。
「なるほど。これが反応したということは、そういうことなのだろう」
「問題は、いつ誰が何故に、どのようにして魔道具が使われたかです」
「ネタが出なくなったのは、今朝からだよ」
「次は誰がやったかですね」
アマナスが話を進める。
「因みに犯人は分かってるよ」
「「「!!」」」
「昨日、オーサーさんの家で魔道具を見つけた。効果は、発想力の操作」
「発想力の操作って、どういうことですか?」
アマナスが食いつく。
「発想の癖を知ってる人の名前を書くと、その人の発想力を引き出すことも、抑えることもできるの」
「発想の癖?」
「好みの傾向と言い換えてもいい。兎に角、相手をよく知っていないと使えない魔道具ね」
「少し嬉しいな。彼は他人に興味を持たない人だと思ったから」
「最後に理由ですね。心当たりはありますか?」
「今言ったけど、彼は人に興味を持たない人だ。足を引っ張るよりも、研鑽を積むタイプのはずなんだが」
四人は考え込む。
「そういえば二人は師弟関係なんですよね? 教えてる最中に何かあったのでは?」
アマナスが問う。
「だとしたら今さら魔道具を使う理由は分からない」
「じゃあ最近彼と何かありましたか?」
「最近は各々執筆に心血を注いでいたから、特に何かあるとは思えないが」
「もしかしたら、サイン会が原因かもしれませんよ」
オーメンが提案する。
「二人のサイン会は同日に行われましたが、人気の差は歴然でした」
「そんなことで?」
「人間、何が切っ掛けで人を呪うか、分からないものですよ」
ひとまずの結論を出した四人は、今後どうするかを話し合うことに。
「アイデアが出ないのは、ミステリー作家にとっては致命的です。何とかしましょう」
アマナスは正義感に充ちた顔をする。
「確かに致命的だが、これを機に、彼に再度教育を施したい。魔道具のことはその後にしてもらってもいいかな?」
「教えたいこと?」
「大事なことさ」
二ヶ月後。ライトは新たに本を出版した。
売れ行きも評判は上々だった。
「驚きましたよ先生。今回はトリックではなく、犯行動機に重きを置いたんですね」
編集がライトに感想を述べる。
「今回の作品には思うところがあってね」
「ところであの方たちは?」
アマナスたちを見る。
「彼らは本作の協力者さ。パーティーをするために家に呼んだんだ」
「そうでしたか」
「さ、この後はもう一人呼んでパーティーなんで。今日のところはお暇願うよ」
「はい。失礼します」
編集と入れ替わるようにして、最後のメンバーが現れる。
「何の用ですか? 師匠」
「私の新作は読んでくれたかな?」
「トリックが売りの作家がネタに困り、犯人の心理描写と犯行動機に力を入れて乗り越える。今の師匠そのものですね」
「そうだね。問題は何故ネタに困ったのか」
「作中では、薬に飲まれたから、でしたね」
「そう。でも私は薬なんてやってない」
「何が言いたいんですか!?」
「君、魔道具を使っただろ」
「根拠は!? 根拠は何ですか!?」
「彼女たちだよ」
後ろの三人を指す。
「あんたたちか」
オーサーは三人を睨む。
「こらこら、お客さんを睨んじゃいけないよ」
今度はライトを睨む。
「私は別に怒ってないよ。ただ、理由は聞きたい。君は人気が欲しいのかい?」
「いいんですよ。そんなことはどうでも」
「では何故?」
「ただの八つ当たりですよ」
彼は苦々しい顔をして話始めた。
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