七つの大罪 嫉妬編

第14話 作家街

作家街

 村を出てから二日後。

「ねぇ次はどこに行くの?パパ?」

「リコちゃん。そのパパって呼ぶのやめてくれない?」

「じゃあアマ兄?」

「それで頼むよ」

 二人の会話を無視してオーメンが声を出す。

「次の町が見えてきたよ。作家が多くて有名なんだ。リコちゃんの教育に役立つよ」

 そう。リコは学校には行けておらず、読み書きや計算があまりできない。

「今読ませてる本の著者も、あの町の出身なんだよ」


 町に入ると喫茶店と本屋が目に入った。

「流石作家街と呼ばれるだけはあるね。執筆と読書には持ってこいな環境だよ」

「そうなの?」

「そうだよ。試しにそこの本屋に入ってみようか」

 三人が本屋に入ると、列が出来ていた。

「ライト先生の手渡しサイン会」

 アマナスが立て札を読み上げる。

「偶然もあるもんだね。さっき言ってた作家だよ」

 三人はその列に並び、サインを貰うことにした。

「こんにちは」

 ライトは明るく挨拶をする。

「こんにちは」

 リコも明るく返す。

「今丁度、先生の本を読ませてるんです」

 とオーメンが。

「すごいね。小さいのに、ミステリーを読むなんて」

「全然分かんないけど、探偵がビシっと決めるとこは好きだよ」

「そうかそうか。そういう楽しみ方もアリだよね」


 サインが書き終わり、リコに手渡すとき

「この後時間ある? 会わせたい人がいるんだ」

「いえ、先を急いでいるので」

 オーメンが断る。

「えー、もう行っちゃうの?」

 リコが不満をもらす。

 アマナスは疑う。確かに延長できた支払期限は長くないけど、人に会う時間も無い位短いわけではない。

「オーメンさん。会いましょうよ。一目見るくらいでいいですから。それとも時間を惜しむ理由でもあるんですか?」

「……。そうだね。でも、ちょっとだけだよ」


 昼食を終えた三人は、ライトの案内があった本屋に向かう。

 そこには、先程の行列には程遠い、小さな列があった。

 オーサー先生の手渡しサイン会。同じサイン会でも、こうも差が出るとは。

「あのー、ライト先生から紹介されて来たんですけど……」

 アマナスが申し訳なさそうに話しかける。

「あぁ、師匠から。それで、俺の本読んだことあるの?」

「いえ、まだです」

「じゃあ読んでから来てほしかったな」

「すみません」

 オーサーは無言でサインをした。

「あの、どんな本を書かれてるんですか?」

「恋愛、ミステリー、学園、近未来モノ、歴史モノ、児童向け。まぁ色々だよ。」

「丁度良かった。今この子に本を読ませてるんですよ」

「へぇ可愛いね。うちの妹の小さい頃にそでくりだ」

 露骨にオーサーのテンションが上がる。それに合わせたかのようにオーメンのテンションも上がる

「可愛いですよね。今度喫茶店で、お話でもしませんか?」

「いいの!? じゃあ明日の十一時に、向かいの喫茶店に来てよ!」


 三人は約束をして、サイン会を後にした。

「オーメンさん。もしかしてですけど……」

「え? なに?」

「魔道具の反応でもあったんですか?」

「うん。あったよ」

 やっぱり。どうやらこの人は魔道具のこととなると、多少視野が狭くなるみたいだ。

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