第13話 出立

出立

 晴れて納税証明書を手に入れたリコだが、やることは山積みだ。

「村民健康保険は、過去二年遡って支払うことになっています」

 弁護士がそう伝える。

「リコさんの場合、収入がありませんので、六万掛ける二年で十二万ゼニーです。他にも、年金は……」


 ざっと整理した結果、 数十万の税金を支払うことになった。

「こんなにいっぱい」

 リコは目をぐるぐると回す。

「支払期限の延長は出来ないのでしょうか?」

 オーメンが質問する。

「それはそれで、また裁判が必要になりますね」

「そうですか」

 税金の額もそうだが、弁護士費用もバカにはできない。今回は琴がいくらか立て替えてくれたが、何度も世話になるわけにはいかない。とオーメンは考えた。

「とはいえ、書類上アマナスさんがリコさんの父親ですので、支払うのはアマナスさんになると思いますが」

「えっ! あぁ、そうですよね」

 失念していた訳ではないが、その時がくれば抵抗感は抱くものだ。

 彼は自国とこの村、二つの団体に所属することになった。故に支払う税金は、単純計算で倍だ。

 幸い、どちらの団体も重婚は認めているので、婚姻の自由は残っているが、それに見合うだけの収入はない。彼はオーメンの方を見て、そう思った。

「ごめんね、パパ」

「リコちゃん。俺は君とは三つしか変わらないから、パパはやめようか」

「じゃあお父さん?」

「そうじゃなくてね」

 親子漫才を尻目に、オーメンは弁護士に話を振る。

「兎に角、今の私たちにはそんなお金はありません。延長の裁判を申し立てます」

「承知いたしました」


 そんなこんなで再び裁判をし、彼らは支払期限の延長を勝ち取った。

 二人がこの村に来てから、かれこれ一月近くが経っていた。

「何とか延長してもらったし、これからは財宝集めも積極的にしていかないとね」

「そうですね。今のところ魔道具も財宝も大して集まってませんもんね」

「明日この村を出るけど、リコちゃんはどうしようか?」

「それはリコちゃん次第ですよ」

「親らしからぬ発言だなー」

「まだ子どもですから」


 翌日、二人はリコに別れの挨拶をしに行った。

「ごめんね。元々私たちは旅人。いつまでもいられないの」

「なぁ、リコはどうする?」

「二人についていくよ」

「!?」

「だって自分の税金は自分で払いたいもん。二人について行ったら、お金集まるでしょ?」

「それはそうだけど……」

 アマナスは困惑する。

「危険だよ」

「分かってるよ。それに何かあったら守ってくれるんでしょ?」

「だってさ」

 オーメンは少し悪戯な笑顔をアマナスに向ける。

「分かりましたよ。何があっても守りますよ」

「わーい。よろしくねパーパ」


 かくして、二人は三人となり村を出立した。未だ見ぬ魔道具と財宝を求めて。

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