第2話 魔道具と決意
魔道具と決意
「おはようアマナス君。今日も絶好の冒険日和だね」
「おはようございます」
アマナスはふわっとした声で挨拶をした。
「オーメンさんって旅人何ですか?」
オーメンはガクッとリアクションをとる。
「そういえばまだ言ってなかったね」
彼女は苦笑い混じりに答える。
「私は魔道具と財宝を求めて冒険をしてるんだ」
「オーメンさんは魔法学園のOGなんですよね? なら魔道具は要らないんじゃ?」
アマナスは疑問をぶつけた。
「アマナス君は、魔道具ってどんな物か知ってる?」
「人の気持ちを落ち着かせたり、宝石を出したり、一つの魔道具に一つ、異なる効果を発揮する物。かつての英雄達が、冒険の最中で作ったとか」
「そう! 色々あって面白い! だから集めたい!」
アマナスはその声量に驚くと同時に疑った。本当にそれだけだろうか? 集めたいと言うが、自分が持っている魔道具に気が付かないとは。
しかし
それから3ヶ月が経過した。しかし彼は一向に成長出来ずにいた。
洞窟探索から帰り、宿のロビーでのことだ。
「まぁそんなに落ち込まないでよ」
オーメンはアマナスを柔らかい声で励ます。それに対しアマナスは
「そうは言ってもですよ? 今回は戦闘をやってもらった挙げ句、罠にかかって死にかけましたし……」
と落ち込んだまま返した。
「もう三ヶ月ですよ!」
ドンと机を叩く。
「自信無くしますし、何より不甲斐ないですよ」
机に突っ伏す。
「まあ焦らずいこうよ」
肩をポンと叩く。
「宿の手続きしてくるから待っててね」
アマナスは机に突っ伏したまま考えた。そうだ、もう三ヶ月だ。何か出来なきゃ流石にヤバい。
「どーしよー」
そんな独り言を呟く彼の耳に、男達の会話が入ってきた。
「なあ知ってるか? この町の近郊に、どんな魔物も倒せる魔道具があるらしいぜ」
「眉唾だなー」
へぇ。今晩探してみるか。
そして夜も更けた頃、彼は部屋をこっそり抜け出し、近郊にそびえ立つ屋敷のような建物に向かった。
ここであってるよな? 見るからに何かあるって感じだし。と判断した彼は、ずんずんと進んでいく。
魔物の気配も罠もなかった。彼は不気味に感じたが、楽に越したことはないと考えていた。
そして最奥にて、怪しい雰囲気に包まれた剣が、台座に刺さっていた。
「剣か……。魔道具って感じはしないけど、こういうのもあるのか」
アマナスが剣の柄に触れた途端。
「!!」
強力な魔力が流れ込んできた。
「うわああぁぁ!」
このままじゃ飲み込まれる!
アマナスは剣を離そうと、腕を振り払った。すると斬擊が廊下の松明を切り落とし、屋敷に火がついた。
アマナスは倒れ込んだ。
そこに彼を持ち抱える手が現れた。朦朧とする意識の中、彼が見たのはオーメンの姿だった。
彼女は屋敷を抜け、宿へと彼を運んだ。
「さて、どうしてこんなことをしたのか、聞かせてくれるかな?」
彼女はやや鋭い目付きと声で尋ねた。
「……だって」
アマナスは気まずさから、一瞬の間をおいて口を開く。
「俺は強くなりたかったんだ。俺を拾ってくれた貴女に、恩を返せるように力が必要だったんだ。なのに!」
彼は語気を強める
「戦闘も家事も何も出来ない! 三ヶ月経っても何一つ成長しない! もう嫌なんですよ。こんな自分が」
彼は涙ながらに心情を吐露した。
オーメンはこの告白を飲み込み、目を閉じた。そして彼を抱き締めた。さらに、優しい声で
「もう自分を責めなくていいんだよ。人には人のペースがある。無理をしても長続きしない。だから無理せず、出来る範囲で頑張ろう。それに――」
と諭す。
「恩返しならずっとしてもらってるしね」
彼女は笑顔を浮かべる。
「?」
「今まで私のことを思って行動してくれた。それだけで充分だよ」
翌朝。
「じゃあそろそろ行こうか」
「はい!」
彼は昨日のことを振り返り、こう思った。
俺はこの人の役に立てていない。それでもこの人は俺を受け入れてくれた。だからいつか、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます