第16話 2度目のデート?


 1回目のデートは王都。2回目のデートは……あれはデートだったのかしら?

 フレイクさんに連れられて、王宮に行きました。


 アレク第二王子殿下、スミア第二王女殿下、ライアグレス公爵といった王家・公家の方々。フレイクさんがいうには「親しい親戚」のみなさまにご紹介いただいて、吐き気がしそうなほど緊張した時間を過ごしました。


 それにフレイクさん、みなさまにわたしを「マイレディ」と紹介したんです。

 わたしは否定も肯定もできずに、


「意味わかってませーん。幼女ですのでー」


 という感じでニッコニコしておきましたが、さすがにその意味は知ってます。

 恋人や妻。そのような意味です。わたしは別に、フレイクさんの恋人でも、まして妻ではありませんけど。


 アレク王子とスミア王女は、「あははは」とわざとらしく笑っておられましたが、お顔が引きっつておりました。わかります、その気持ち。

 多分わたしも、引きつった笑顔だったのではないでしょうか。

 ですが、ライアグレス公爵さまからは、


「きみはもしかして、レッドクール家の姫君ではありませんか」


 とたずねられました。


「はい。マードリ・レッドクール子爵は、わたくしの祖父でございます」


 お父さんのお父さんは子爵です。ですが中央住まいじゃありませんし、お父さまと同じで田舎貴族なのですが。


(なんでわたしを見て、おじいちゃんを連想れんそうしたの?)


 おじいちゃん家は遠いから、わたしも一度しか行ったことがない。順調に進むことができても、馬車で片道10日はかかる距離だから。


 そういえばお父さまはわたしを、「レッドクールのおばあちゃんに似てる」といったことがある。

 おばあちゃんはお父さまが10歳のときに亡くなっているらしいから、会ったことはないけれど。


(ライアグレス公爵は、おじいちゃんのお知り合いなのかしら?)


 年齢も同年代ですし、その可能性はあります……とは思いましたが、これは数年後に分かったことですが、おばあちゃんはライアグレス公爵の異母妹だったらしいです。

 複雑な理由があって、廃嫡はいちゃくされていたそうですけど。

 ライアグレス公爵は、わたしに妹の面影を見たというわけですね。


 王宮では待ち時間も長かったので、デートという感じはしませんでした。

 フレイクさんは、「2度目のデートに応じていただけて嬉しいです」といっていましたから、デートだったと思いたいのですが。

 確かに『ふたりでお出かけ』という意味なら、デートだったのでしょうね。ずっと一緒にいましたから。


 で、そのような2度目のデートからもう50日が経過しましたが、あれ以降、フレイクさんから3度目のデートのお誘いはありません。

 定期的に情熱的な手紙と贈り物が届きますから、飽きられたわけではないはずです。

 お手紙には「会いたい」「声が聞きたい」「結婚式場のご希望はございますか?」などなど、ときには「愛しています」とまでしたためられておりますので。


(お手紙だけじゃなくて、わたしだって会いたいんですけど……)


 ですがフレイクさんは公爵さまですから、忙しいのでしょう。


 きっと、忙しいのです……よね。

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