第7話 お便り
以下に掲載する文章は、FM██で夏に放送された深夜のラジオ番組『Mr.スズキ(地方タレント)の怖い夜』が募集した『番組リスナーのホン怖体験』にて、あるリスナーから届いた体験談である。
「過去に体験したって言うより、今現在も続いている奇妙な事について相談させてください。
私の友達にTちゃんという女の子がいるんです。いえ、正確にはいたんです。その子、高校2年の夏に自殺しちゃったんです。皆に好かれてて、勉強も部活も完璧で、何不自由ないって感じだったのにいきなり自殺だなんて、当時は私含め同級生の皆が疑問を抱いていました。
でも、彼女の死に関して私達が調べるとか、警察に聞きに行くとか、そういうことは誰もしなかったんです。おかしいよなーとは思いつつ、私達は次第に彼女の事を忘れて何事もなかったかの用に高校生活を送りました。
彼女の死から十年くらい経って、高校の同窓会が開かれたんです。私は地元を離れて仕事してたんですが、久々に帰省して旧友達と地元の居酒屋で集まりました。
お酒も大分入って、皆が思い出話に耽る中、私はついTちゃんとの思い出を漏らしてしまいました。楽しい空気を壊したくないから、彼女の話題は出さないようにしようと思っていたんですが、お酒の力でついつい出てしまったんです。『Tちゃんともこうして飲みたかったな~』って。そしたら皆、何故かきょとんとした顔でこっちを見てるんです。私が『どうしたの?』って聞くと、『Tって誰?』って言うんです。私は皆がふざけているのかと思って『ちょっとちょっと~、TちゃんだよTちゃん!クラスのアイドルだったあの子だよ』って笑いながら答えると、皆は更に困惑した顔を見せて『だから、誰?』って言うんです。私はムキになって『ふざけてるの?』って聞き返しました。そしたら友達の一人が『Tちゃんなんて子はいないよ』って。そんな訳ない。Tちゃんは・・・・・・。言いかけて、言葉に詰まりました。彼女の顔が、出てこないんです。というか何の部活をしてて何の委員会に入っていてどこの席に座っていてどこに住んでいて・・・。何も、分からないんです。
なんか色々とこんがらがっちゃって。私は皆から逃げるように居酒屋を出ました。すぐにタクシーを拾って寄る予定のなかった実家に駆け込んで、昔使ってた部屋の押し入れの奥をひっくり返して、高校の卒業アルバムを開きました。
・・・いないんです。Tちゃんなんて子は、どこにも。初めは全く信じられなくて高校時代の写真やら何やらをひっくり返して彼女の痕跡を探したんですが、ないんです。
いたはずなんです。私には彼女がいたという実感があるんです。彼女と私は、友達だったんです。
私がおかしいんでしょうか。幻を見てたんでしょうか。
最近よくニュースで彼女の名前を耳にするんです。
彼女は一体、何者なんでしょうか。 」
この体験談は採用されなかった。
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