第28話 異世界からの来訪者たち、高校生に大任をまかせる。

 株式会社ノーチラスに突入した翌日、俺達は、再び株式会社ノーチラスの会議室に招待されていた。


 今、会議室にいるのは10人と1匹だ。


 俺と陽菜ひなとヴァシュロン。俺の父さんと、陽菜ひなの両親。それからおり社長とクロノス王国の国王。そして、クロノス王国から、ランゲ&ゾーネ兄妹もかけつけた。使い魔カラスのコードも一緒だ。


 会議テーブルには、学生が2人、社会人が4人、ファンタジックなコスチュームに身を包んだクロノス王国の住人が3人、そして羽の生えた素っ裸な雲上人と、なかなかにカオスな状況だ。

(服を着るのを極端に嫌がるヴァシュロンは、会議室限定で全裸待機が許された)


「では、本日の議題を簡単に……」


 おり社長は、会議室に設えられた大型テレビに、自分のパソコン画面を映す。


「まずは、雲上人ヴァシュロンと懐中魔道士メカニカルウイッチコンスタンタンとの同化をいつ行うか。

 そして、ランゲさんが担当している、賢者ノモスのアジトの捜索」


 最初に口を開いたのはヴァシュロンだった。


「我とコンスタンタンの同化については、賢者ノモスの探索が済んでからでいいだろう」


 ヴァシュロンの言葉にランゲが賛同する。


「それはありがたい。コンスタンタンが居なくなると、今まで習得したスキルが使えなくなる。戦力ダウンは避けられない。最悪の場合、賢者ノモスが使用する、懐中魔道士メカニカルウイッチピゲと対峙することになるからな」


 ふたりの言葉を受け、おり社長は首肯する。


「なるほど。では次の議題。賢者ノモスのアジトについてですが、ランゲさん、進捗はいかがですか?」

「進捗があれば、いの一番に報告する。壬生みぶ殿が提供してくれた『3Dホログラムマップ』で、しらみつぶしに探したが、相変わらずのナシのつぶてだ」

「うーん……そうですかぁ。システムにバグが残っているのかな?」


 ランゲの渋い報告を聞いた父さんが、苦笑いをしながら頭をかく。


「あの、俺も発言をしていいですか?」


 俺が口を挟む。


「モチロン構わないよ。遠慮せず、どんどん意見を言ってくれないかい?」


 おり社長に促されて、俺は話しを始める。


裡子りこ先輩は、こっちの世界に監禁されている可能性が高いと思います」

「どういうことだ?」


 ランゲの質問に俺が答える。


「賢者ノモスの側には、時空の狭間を操れる占術師ベルアンドと、使い魔フクロウのロスがいるからです。実は俺達がここを訪れたのも、賢者ノモスが、この場所に潜伏していると疑ったからです」

「なるほど。ウチの会社が黒幕と考えたわけか」

「はい。だってさすがに怪しいじゃないですか。異世界がそのまんまゲームの世界になってるだなんて」

「確かにな。ただ、たったそれだけの理由でここに来たわけでは無いだろう?」


 そう言って、おり社長は、ニヤリと微笑む。

 ? なんだろう。心を見透かされてしまったようでちょっと気味が悪い。

 まあいいや。俺は説明を続ける。


「実はヴァシュロンには、時空のはざまを探知する能力があるんです。俺たちはその能力で、株式会社ノーチラスに時空のはざまが有ることをつきとめたんです」

「やはりそうか。つまり流斗りゅうとくん、キミ達は確かな証拠をもって、この場所に訪れたんだね」

「はい。その通りです」


 おり社長と俺のやりとりを聞いたみんながヴァシュロンに注目するなか、俺は気になっていることを質問する。


「ヴァシュロン、時空のはざまは、どれくらいの距離まで探査出来るんだ?」

「服を着なければ半径50キロほどの探知が可能だ。ただし服を着てしまうと能力は半減する」

「そうなんだ……でも、それでも半径25キロ! 飛行機で移動すればこの星のかなりの場所を網羅できるよね?」


 俺の言葉に、俺の父さんが膝を打つ。


「ほうほう。それならこっちの世界でも賢者ノモスの捜索できるんじゃないかい?」

「うん。ただ、今のヴァシュロンは、戦闘能力の殆どをコンスタンタンに譲渡しています。もし、潜伏中の賢者ノモスや、番長……樫尾かしお耐河たいがと遭遇してしまうと太刀打ちができません」


 でも解決策はある。俺はクロノス王の方を見る。


「うむ。ヴァシュロン様の護衛として、腕よりの王宮騎士を遣わそう」


 クロノス王の言葉に、ランゲが進言をする。


「しからばクロノス王よ、私はジャガーとルクルトを推薦する。彼女たちの能力は、お前もよおく知っているだろう? 流斗りゅうと

「え? うん……まあ」


 ジャガーとルクルトは双子の王宮騎士だ。ゲーム『クロノスの聖女』の中盤からパーティに加入する。


「決まりだな。こちらの世界での賢者ノモスの捜索は、流斗りゅうと、お前に一任する。頼んだぞ!」


 ……は?


「うむ、我も異論はない」

「アタシも流斗りゅうとと一緒に行く!! ねぇ、いいでしょう?」


 ヴァシュロンは胸を張り、陽菜ひなもおねだりをする。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺、学校有るんだけど!!」

「もう! 流斗りゅうと、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! クロノス王国と地球の一大事なんだから!!」


 そんなこと言ったって……俺は父さんを見る。


「大丈夫、大丈夫。母さんには僕から話しをつけておくから」


 ちょ! 父さん、相変わらずめっちゃ軽いな!


「では、方針も決まったことだし、今日の会議はお開きってことで」


 おり社長は、早々にパソコンを閉じるとそのまま席を立って会議室を出ていった。

 


■次回予告

 学校を休学して、裡子りこ先輩の探索をすることになった流斗りゅうとたち。『精霊の儀』が執り行われるまで残り一ヶ月、本当に大丈夫か? お楽しみに!!

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