第27話 さらなる異世界の訪問者。
「おまたせしました。キミが
「はい。……えええ!?」
俺があこがれのゲームクリエイター、株式会社ノーチラスの
「あんたね!?
「ちょ!!
「はっはっは、元気のいいお嬢さんだ」
「まあ、私を怪しむのも仕方がないか。キミたちは、そこにいる雲上人ヴァシュロンが時空のはざまを見つけたから、ここを訪れたようだからね」
「やっぱり!! このおじさんめっちゃ怪しいよ!! 目つき悪いし、スキンヘッドだし、もみあげとヒゲがつながってるし!! どっからどう見ても悪役だもん!! ねえ、
「あはは……悪人顔なのは認めるけれど、ちょっと傷つくなぁ」
「安心してくれ。僕はキミたちの敵ではない。断言するよ。その証拠を今からお見せしよう」
そう言うと、
コンコンコン
「はい」
「
「……私に? 一体、誰です?」
父さんの声が気持ちふるえているのが判る。随分と警戒している感じだな。
「はは、そんなに警戒しなくてもいいよ。絶対にキミの敵ではない。断言をするよ」
「え!?」
「パパ、ママ??」
俺と
会議室に、俺の父さん以外にも、
そしてもっと驚いたのは、会議室にいたもうひとりの人物だ。いかにもファンタジーな出で立ちの高級そうな服とマントを羽織り、王冠をかぶったヒゲのおじいさん。この人ってまさか……。
「クロノス王、紹介いたします。聖女ヒーナの側にいるのは、
やっぱりだ! このおじいさん、クロノス王国の王様だ。王様なのに宿屋の主人とそっくりなモブキャラ感満載の王様だ!
一体どういうことだ?? 混乱しまくっている俺と
「今のクロノス王国は、大賢者マリーンに制圧されてしまっていてね。クロノス王は、僅かな側近と共に潜伏をしているんだ。その潜伏先がこのビル。我が社の下のフロアに避難をしてもらっている。でもって、今はちょうど大賢者マリーンの打倒の作戦会議をしているところだよ」
「作戦会議?
俺のストレートな質問に、父さんが頭をかきながら返答する。
「ゲーム、『クロノスの聖女』の世界観設計は、父さんが開発した人工知能で生成をした世界なんだ。やたらリアルな設定ができたなーと思ってたら、まさか実在する異世界だったなんて……いやー、父さんびっくりだよ」
マジか!! 父さんは衝撃の事実を、めっちゃ軽い口調で説明する。とてもにわかには信じられない。
「そうなんだ!
「いやー! それほどでも?」
ここ1ヶ月以上、不条理に晒されまくって随分と耐性がついたつもりだったけれど、まだまだ修行が足りないみたいだ。
俺は、どうにかこうにか、今のトンデモな状況に頭の整理をつけていると、
ガタン。
会議席の上座に座ったクロノス王国の王様が席を経った。
「ヴァシュロン……おお……貴方様が……」
クロノスの王様はプルプルと震えながら杖をつき、一歩一歩ヴァシュロンに向かっていく。そして眼の前で崩れるようにひざまずいた。
「おお……ヴァシュロン様……雲上人であらせられる貴方様を『魔王』と
「大丈夫だ。問題ない。はるか昔のことだ。人の王よ。面をあげるのだ」
「おおお……ヴァシュロン様……もったいないお言葉」
クロノスの王様は、ヴァシュロンに向かって更に平服をする。
「我は、もうひとりの聖女、
半身? どういうことだ?? 今の姿がヴァシュロンの本当の姿じゃないのか??
とまどっていることが、表情にでていたのだろう。ヴァシュロンが俺にむかって話しを続ける。
「本来の我は、両性具有。我の半身は、
「
「ああ、
「えええ!? あの可愛いコンスタンタンが、このマッチョと同一人物??」
「
「賢者ノモス、そして大賢者マリーンの思惑は、
「ええ? 半身を奪われちゃったら、大天使オーデマはどうなっちゃうの!?」
「消滅することになるだろう。もっとも、崇拝の対象としてその名は残り続けることになるだろうがな」
ヴァシュロンの言葉を、俺の父さんが引き継ぐ。
「雲上人の力を人が手に入れれば、それはもはや
父さんは、今まで見たこともない、とても真面目な、とても厳しい顔をして言い放った。ちょっと怖いくらいだ。父さんは、はっと我に返ったかのようにいつものゆるーい笑顔に戻ると、俺と
「
「モチロンだよ! おじさん!!
「
「俺も
俺の返答に、父さんは軽く息をついて、
「王様。
「お願いします! 王様!!」
父さんの申し出に、
「よろしくお願いします」
クロノス王に頭を下げた。すると、ヴァシュロンの前にひざまずいていた王様は杖を支えにヨロヨロと立ち上がり、俺の前に手を差し出した。
「頼むぞ。
俺は、無言でその手を握り返すと、ヴァシュロンが語り始める。
「クロノスの王よ。
「おお! それは頼もしい!!」
「……は、はい」
ヴァシュロンの御主人様って、なんかなヤナ響きだな……と内心思いつつ、俺は努めて平静を装って返事をした。
■次回予告
株式会社ノーチラスに構えられた解放軍の作戦会議に参加する
父さんたちが考えた
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