第26話 新たなる訪問者、ゲーム会社のエントランスに行く。
「ああ。断言しよう! ここから北に9メートル、上空へと29メートル……このビルの13階に時空のはざまがある」
「そんな! この場所って……俺の父さんが務めている会社じゃないか!」
おどろく俺を見て、
「あれ?
「そっか、
株式会社ノーチラスの社長の名前は
詳しくは知らないけれど、所属会社とゲームの制作方針について揉めに揉めて退職、そのまま新会社ノーチラスを設立した。
『クロノスの聖女』は、株式会社ノーチラスの第1作目だ。天才ゲームクリエイターの新作という話題性と、ゲームユーザーの期待を裏切らない面白さで、『クロノスの聖女』は売れに売れまくった。今では、パッケージ版とダウンロード版、併せて200万本を超える売上を誇る大ヒットゲームだ。
「さて、
「もちろん! カチコミかまして
「いや、我は聖女ヒーナの作戦に反対だ。乗り込むのであれば、勇者ランゲと幻術師ゾーネ、そして
「なんで? ヴァシュロンがいるじゃない」
「我は非暴力主義なのだ」
ヴァシュロンはたくましい胸筋をゆらす。
そうなんだ。そういえば『クロノスの聖女』でも、レベル1の勇者ランゲを襲えばいいのに、魔王の城でずっと待ち続けていたもんな。ゲームのラスボスあるあるだ。
「もう、ヴァシュロンって意外とヘタレなのね。しょうがないわね。一度戻って、ランゲとゾーネちゃんに報告しよっか……」
残念そうに肩を落とす
「いや、ノーチラスに行ってみよう」
「ええ? アタシたちだけでカチコミするの?」
「普通に受付に行くよ。だってこの会社、父さんが働いてる会社なんだし。息子が会いに来たって別に不思議じゃないだろう? 視察くらいはできるはずだよ」
「あ。なるほど」
確かに、
どっちかというと古い気質の父さんは、仕事が佳境になると家に帰ってこないってこともしばしばあった。ヒドイときには、月曜日の朝に出社して、土曜日の朝に帰ってくるなんてこともあった。
だけど、1ヶ月家を開けるなんてさすがに初めてだ。ひょっとしたらクロノス王国のいざこざに巻き込まれてるんじゃないか、そんな予感がしたからだ。
ウイーン。
エレベーターが静かに開いて、株式会社ノーチラスのエントランスに向かう。薄暗い照明に、四角いのぞき窓が点在する独特の内装だ。
「随分と変わった会社だね」
「ノーチラスって、『海底二万里』って小説に登場する潜水艦の名前なんだ。きっと、このエントランスは潜水艦をモチーフにしているんじゃないかな?」
俺は受付においてある受話器を取ると、ほどなく、女性の声が聞こえてきた。
『はい。株式会社ノーチラスでございます』
「あの、
『部長の
? この人、父さんがいないことを即答してきた。なんだろう、めっちゃ違和感を感じる。なんというか、同じ受け答えを何度もこなしてすっかり言い慣れている感じ??
「
『……!? しょ、少々お待ち下さい!!』
ブツリ!
電話口の人が一方的に電話を切る。めっちゃ焦ってる! 完全になにか隠している感じだ。俺は首をかしげながら受話器を置く。
「どうしたの、
「息子だって言ったら、いきなり電話をきられちゃったんだ」
「なにそれ!? めっちゃ怪しいじゃない!!」
「少々お待ち下さい。って言われたから、とりあえずしばらく待ってみよう」
「わかった」
「我も承知した」
俺達は、エントランスに備え付けられた長椅子にこしかける。
数分後。ひとりの男性がやってきた。
「おまたせしました。キミが
「はい。……えええ!?」
その人を見て、俺は驚愕した。だってその人は、俺が尊敬して止まない『世界で最も革新的なプロデューサー、クリエイター 50人』のひとりに選ばれた、株式会社ノーチラス代表、天才ゲームクリエイターの
■次回予告
株式会社ノーチラスの社長、
お楽しみに!!
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