第22話 さらわれた聖女。

 俺達は、時空のはざまに飛び込んで、兵士たちの攻撃をすんでのところで躱すと、そのまま地球にある陽菜ひなの家のリビングへと転がり込む。


 ほっとしたのもつかのま、そこには、リビンクで倒れている陽菜ひながいた。


陽菜ひな!!」


 俺は大慌てで陽菜ひなを抱き起こす。


陽菜ひな! 陽菜ひな!! 大丈夫か!?」


 俺の必死の呼びかけに、陽菜ひなはゆっくりと目をさますと、開口一番、とんでもないことを口にした。


裡子りこ先輩が……裡子りこ先輩がクロノス王国へ連れ去られちゃった!!」

「「な、なんだってーーーーー!?」


 あまりに予想外のできごとに、俺達は叫び声をシンクロさせる。


「ちょっとちょっと聖女様、どういうこと?? なんでガキンチョ先輩が連れ去られるのよ?」

「クロノス王国でノモスが眺めていたフクロウ。あいつは宮廷占術師ベルアンドの使い魔だ。宮廷の近衛兵に襲撃されたんだな?」


 ランゲの問に、陽菜ひなは力なくうなづく。

 宮廷占術師ベルアンドは『クロノスの聖女』に登場する序盤のパーティメンバー、いわゆるお助けキャラだ。


 物語の後半、究極魔法を求めて絶海の孤島にある遺跡に行くイベントでもゲストキャラとして登場する。(苦労して手に入れる割に、究極魔法がめっちゃしょぼい)


「アタシと裡子りこ先輩で、みんなの帰りを待っていたら、突然、時空のはざまから、ベルアンドと宮廷の近衛兵が襲ってきたの。奴らが裡子りこ先輩をさらおうとしたから抵抗したんだけど気絶させられて……あっという間だったわ」


 陽菜ひなが力なくうつむく。


「なるほど。となると、ベルアンドたちは、最初から裡子りこ殿を狙ったことになるな。流斗りゅうと、なぜだかわかるか?」


 腕組みをしたランゲが首をひねる。


「俺だってさっぱりだよ。だいいち陽菜ひな裡子りこ先輩じゃ……あ!」


 ある! ひとつだけだけど接点が!


陽菜ひな陽菜ひなの誕生日って4月2日だよな!」

「そうだよ。4月2日に変わった瞬間だっんだよね? ママ!!」

「ええ。そうよ」

「父さんも、ハッキリと覚えているよ」


 陽菜ひなの両親の言葉をうけて、俺は叫び声をあげる。


「やっぱりそうだ。陽菜ひな裡子りこ先輩には共通点がある!! 生まれた時間が同じなんだ!!」

「それって変じゃない? なんで生まれた時間が同じなのに、裡子りこ先輩の方が一学年上なの?」

裡子りこ先輩は帰国子女なんだ。そして誕生日は4月1日。両親がロサンゼルスに赴任してたときに生まれたって!!」


 俺の言葉に、裡子りこのおじさんが大きくうなづく。


「なるほど……さらわれた裡子りこさんは、陽菜ひなと同じ力を持っている。そう断言するよ。何故なら、懐中魔道士メカニカルウイッチ管理者権限は、ホロスコープによって管理されているからね」

「?? どういうことです??」


 さっぱり意味がわからない。ひとり納得している陽菜ひなのおじさんに、俺は質問する。


「うーん、説明が難しいんだが……流斗りゅうとくん。キミは懐中魔道士メカニカルウイッチの動力を知っているかい?」

「はい。使用者に体内に宿っている「マナ」からですよね?」

「おお! そこまで理解しているのであれば話が早い。マナはね、太陽、及び、太陽を周回している惑星と、惑星を集会している衛生の座標によってその性質が変動するんだ。生まれた時間が同じ、つまり同じホロスコープを持つ者は、まったく同じ性質のマナを持つ。つまり……」


 俺は、陽菜ひなのおじさんを遮って、最悪のシナリオを口にする。


「つまり、地球には陽菜ひな以外にも聖女がいた! それが裡子りこ先輩ってことですね!!」

「ああ……処刑の前日、謁見にきた賢者ノモスは妙なことを言っていた。『占術師ベルアンドが陽菜ひなの代わりを見つけた』とね、それがおそらく裡子りこさんのことなんだろう」


 なんてこった……。


 ノモスさん……いや、賢者ノモスと宮廷占術師のベルアンドは、大賢者マリーンの指示をうけて動いていたのだろう。

 宮廷占術師のベルアンドが、陽菜ひなと同じホロスコープを持つ人物を探し出し、賢者ノモスが足止めをする計画だったんだ。


「ねえ、流斗りゅうと! 裡子りこ先輩を助けに行こう! アタシの代わりに裡子りこ先輩が聖女にされるだなんて耐えられないよ!!」

「モチロンだよ。ランゲとゾーネも協力してくれるかい?」


 俺の問いかけに、ランゲ&ゾーネ兄妹がおおきくうなづく。


「無論だ。もとよりこれは我がクロノス王国の問題。こちらの世界の住人を巻き込むべきではない!!」

「ゾーネも賛成!! あと、ノモスについてったデカブツの目を覚まさせてやんないと!!」

陽菜ひな、父さんと母さんも協力するよ。流斗りゅうとくん、懐中魔道士メカニカルウイッチについて疑問があれば、なんでも聞いてくれたまえ!」

「ありがとうございます!! めっちゃ心強いです!!」

 

■次回予告

 裡子りこ先輩をさらった賢者ノモスたちを追うも、消息は一切途絶えていた。

 自分の無力さを痛感していた流斗りゅうとに、トンデモない来客が!? お楽しみに!!


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