10年ぶりに再会した幼馴染から告白された。ただし彼女は異世界で聖女していたとイタイ発言をする。

第21話 異世界からの訪問者、故郷に残ることを決める。

「番長さん！　蒙古覇極道（タイガータックル）です！！」

「わかりやした姉さん！！　アニキ、お命頂戴いたしやす！！」

　ノモスさんに命令された番長は、俺に向かって猛然とタックルを仕掛けてきた。

「っく！」

　俺は、番長の蒙古覇極道（タイガータックル）をすんでのところで躱すと、イカダの上をゴロゴロと転がりながら激しく後悔していた。

　なんで、ノモスさんが問題なくスキルを使用している事に違和感を覚えなかった？？

　ランゲとゾーネは、スキルを没収されているのに、ノモスさんだけ問題なく使えている時点で伺ってかかるべきだった。

「番長さん！　もう一度、蒙古覇極道（タイガータックル）です！！」

「わかりやした！！」

「……しょうがない！　コンスタンタン、番長を攻撃！！」

「かしこまりました」

　再び突進してくる番長に、コンスタンタンがカウンターの肘打ちを喰らわせる。でも、

「そんな攻撃効かないでやんす！」

　番長は、よろけつつも蒙古覇極道（タイガータックル）を出し切った。スキル『ふんばる』の効果だ。

「コンスタンタン、攻撃中止！　回避だ」

「かしこまりました」

　コンスタンタンが番長の攻撃をヒラリとかわすなか、俺は懐中魔道士（メカニカルウイッチ）を確認する。やっぱりだ！　番長が使用者リストから削除されている！！

　ノモスさんが持っている、懐中魔道士（メカニカルウイッチ）ピゲに登録され直したんだろう。

「ドンドン行きますよ！　番長さん！　もう一度、蒙古覇極道（タイガータックル）です！！」

「わかりやした！！」

　番長が、息もつかせぬ連続攻撃を仕掛けてくなか、

「番長殿。私がお相手しよう」

　ランゲが俺の前にたちはだかる。

「気をつけろランゲ。番長は懐中魔道士（メカニカルウイッチ）ピゲで、『ふんばる』を再習得している！」

「承知した。番長殿、悪いが本気を出させてもらおう！！」

　ランゲは、逆手にもっていた聖剣ツァイトベルグの持ち手をくるりと１８０度回転させる。本気モードだ。

「蒙古覇極道（タイガータックル）！！」

「さらばだ、番長！！」

　ランゲは、番長の心臓に、聖剣ツァイトベルグを寸分の狂いもなく突き立てる。だけど、

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ！！！」

「なん……だと！?　グハッ！！」

　番長は心臓に聖剣ツァイトベルグを突き刺されたまま、ランゲに強烈なタックルを喰らわせる。

「馬鹿な！　なぜ致死量の攻撃を受けて平気でいられる！？」

「！？　まさか番長、スキル『執念』を習得しているのか！？」

　執念は、HPが０なるダメージを受けても、瀕死状態で耐えることができる。

　でも変だ。『執念』は、かなりのアビリティポイントが必要なレアスキルだ。たった一晩でどうやって習得したんだ？？

「うふふ。番長さんは、おとなの階段を登ったのよ。私が手とり足取り教えてあげてね……♥」

　ノモスさんは、番長に回復のスキルを使用しながら、妖艶なキスをする。

「な、なんだってー！？」

　おとなの階段だなんて、そんなの人生の一大イベントじゃあないか！

　番長のヤツ、なんてうらやましいんだ！！　って、今は番長に先を越されたことを妬んでいる場合じゃない。

「蒙古覇極道（タイガータックル）！！」

「ウケケケケケ！！！！！！！！！！！」

　番長のタックルを盾にしながら、戦線に復帰した処刑人サントスが大鉈を振り回す。

「グッ！！」

　ランゲは矢面に立って、番長と処刑人サントスの波状攻撃を受け止めるも、大鉈が頬をかすめて鮮血が滴り落ちる。

「兄様！！」

「回復！！」

「大丈夫だ。問題ない！！」

　いや、問題あるだろ！　このままだと、いつまで攻撃をしのげるか……。

「こうなったら、ちょっともったいないけど奥の手よ！！　ロイヤルオーク！！」

　ゾーネがロイヤルオークを振り上げると、桟橋の上に竜巻が発生した。

「うふふ。そんなそよ風で何ができるというの？？　番町さん、サントス！　やっておしまい！！」

「蒙古覇極道（タイガータックル）！！」

「ウケケケケケ！！！！！！！！！！！」

　竜巻はくねくねと蛇行しながら、番長と処刑人サントスに直撃をする。すると、

「なんだこりゃ！？　目と鼻がムズムズするでやんす！」

「ハクション！！　ハクション！！　ハクション！！」

　番長と処刑人サントスは、目をしばしばさせながらくしゃみを連発する！！

「ふふーん！！」

　ゾーネは誇らしげに控えめな胸を張ると、ポケットから小さな空き瓶を取り出した。

「コショウよ！！　クロノス王国だと希少で高値で取引できるから、買い占めておいたの！！」

　そういえば、『クロノスの聖女』でも、王様のお遣いでコショウを買ってくるイベントがあったっけ。

「いくらデカブツが頑丈でも、状態異常にはひとたまりも無いみたいね！　あんたはしばらく引っ込んでなさい！！」

　ゲシ！！

　どぼーん！！

　ゾーネは番長を足蹴にして、桟橋から突き落とす。

　その手があったか！！

　俺もゾーネに習って、処刑人サントスを池に突き落とした。

「あはっ♪　いい気味♪」

　番長とサントスは、大慌てで桟橋によじ登ろうとするが、ゾーネがロイヤルオークの先っぽでつっついて上陸をはばむ。

「勝負アリだ！！　賢者ノモス観念するんだな！！」

　ランゲが聖剣ツァイトベルグをノモスさんに向ける。けれどノモスさんはお構い無しで、上空を飛んでいるフクロウをながめている。

「ホーホー」

「なるほど。潮時ですね。『結界解除』」

　ノモスさんは、あっけなく結界を解いた。どういうことだ？？

「最低限の任務は果たしました。今日はここで失礼します」

「ホーホー」

　フクロウは桟橋の上に立つと、時空のはざまを出現させる。

「サントス、番長さん、私につづいてください」

　ノモスさんが時空のはざまに飛び込むと、処刑人サントスと番長がつづく」

「まってくれ！　番長！！　本当に俺達を裏切ったのか！？」

「……………………」

「答えてくれ！　番長！！」

「アニキ、ヒーナ、許して欲しいでやんす！」

　番長は肩を震わせて絞り上げるような声をあげると、時空のはざまに飛び込んだ。

「結界が解かれたぞ！！」

「反逆人、勇者ランゲとその一味を取り押さえろ！！」

　ノモスさんの結界で立ち往生していた兵士たちが、一斉に襲いかかってくる。

「俺達も撤退しよう！　ゾーネ、時空のはざまを！」

「りょーかい！！」

「カーーーー！！」

　使い魔カラスのコードが叫ぶと、時空のはざまがうかびあがる。ランゲ＆ゾーネ兄妹は、陽菜（ひな）の両親を先導しながら次々と時空のはざまに飛び込んだ。

「流斗（りゅうと）、あんたも早くなさい！！」

「あ、ああ」

　ゾーネに促されて俺は時空のはざまに飛び込む。

「それじゃ！　聖女様のお家に帰るわよ！！」

　ゾーネは、大急ぎで時空のはざまを閉じる。

「あ、まて！！　貴様ら！！」

「おい、後ろのやつら押すなよ！」

「危ないだろう！」

「押すなよ！　押すなよ！　絶対に押すなよ！！」

「だ、だから押すなって！！　うわぁあ！」

　ドボーン！　ドボーン！！　ドボーン！！！

　兵士たちが桟橋から落ちる音を聞きながら、俺は番長の事を考える。

「まさか、番長が裏切るだなんて……陽菜（ひな）になんて言えばいいんだ」

■次回予告

　地球に帰ってきた流斗（りゅうと）たちに待ち受けていたのは『絶望』の二文字だった。果たして陽菜（ひな）は無事なのか！？　お楽しみに！！

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