第20話 異世界からの来訪者、本当の目的を語る。

「コード!! 時空のはざまを発動させて!!」

「カーーーーーーーーーーーーーー!!」


 クロノス王国にいるカラスのコードが鳴き声をあげると、マンションの窓に、時空のはざまが現れた。


「みんな、お願い! パパとママを助けて!」

「無論だ。勇者ランゲ参る!!」

「まって、兄様!」

「行きましょう番長さん」

「でやんす!!」


 陽菜ひなの言葉を背に受けて、みんな次々と時空のはざまに飛び込んでいく。


「それじゃあ、陽菜ひな行って来るよ!!」

「頑張って!!」

「気をつけてね!」


 俺もみんなの後を追って時空のはざまに飛び込むと、クロノス王国の湖に掛けられた桟橋に降り立った。


 ギィギィ


 イカダをつないで造られた桟橋が音を立てて揺れる。山々に囲まれたクロノス王国の空気は澄んでいて、少し肌寒さを感じる。


「な、なんだお前ら!」

「敵襲! 敵襲!!」


 湖のほとりに待機していた兵士たちが一斉に迫ってきた。


 ギィギィ ギィギィ


 大挙する兵士たちで、桟橋が激しく揺れる。


「『結界』展開!!」


 ノモスさんがスキルを発動させると、大量の六角形型が折り重なった球体のバリアが展開される。

 ランゲは両腰にさげた聖剣ツァイトベルグを引き抜くと、


「悪いが寝ていてもらおうか!」

「ぎゃあああああ!!」


 目にも止まらぬ早業で処刑人サントスを切り刻んだ。さすが、魔王を倒しただけのことはある。中ボスを1発KOだ。


「番長! 陽菜ひなの両親を助けるぞ!!」


 俺は番長をうながす。だけど、番長はつったったままだ。


「番長!!」

「クロノス王国……俺様はようやく、クロノス王国に戻ってこれたでやんすね」


 番長の頬に熱いものが伝っている。そっか。もともと番長はこっちの世界の住人なんだものな。とはいえ、今は感動なんかしてもらっている場合じゃない!!


「こらデカブツ!! なにボサッとしてるのよ!!」

「カーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

「…………………………」


 ゾーネが番長を蹴っ飛ばすも、番長は反応しない。

 仕方がない。今は一刻を争う! 俺は、柱に磔をされた、陽菜ひなの両親の縄をほどく。


「ご無沙汰してます。おじさん、おばさん!」

「まさか……」

流斗りゅうとくんか!?」

「今助けます! 陽菜ひなも、地球にもどっています! おじさん、おばさんも地球に帰りましょう!!」

「……あ、ああ」

「……そ、そうね」


 なんだろう? 変な間があったな。

 俺は、ふたりの縄をほどくとノモスさんに呼びかける。


「ノモスさん! ふたりは助けました! 結界を解いて時空のはざまに飛び込みましょう!」

「……………………」

「? ノモスさん!?」


 ノモスさんは、俺の声かけをガン無視して、スタスタとランゲの方へと歩いていく。

 違う! ランゲじゃない。ノモスさんは、倒れている処刑人サントスに手を当てると、『回復』のスキルを使い始めた。


「ノモス? 貴様何をやっている??」


 ランゲが肩を叩くと、ノモスさんは、その腕を乱暴に振り払った。


「申し訳ありませんが、あなた方にはしばらくこの場にとどまってもらいます」

「? どういうことだ??」

「こういうことです。『衝撃波!」


 ノモスさんはランゲの胸に手を当てると、手から気が放たれてランゲを弾き飛ばす。

 え? どういうこと??


「うふふ」


 ノモスさんは不敵な笑みを浮かべて身に纏った法衣を剥ぎ取ると、特撮の女幹部みたいな、布面積がほとんどないとびきりエッチなぴちぴちな黒のボンテージ姿へと早着替えをする。


「ノモス! 貴様! どういうつもりだ!!」


 ランゲが聖剣ツァイトベルグを、ノモスさんに突きつける。


「さっき言った通りです。あなたがたには、しばらくこの場に留まっていてもらいます。なに、そんなにお時間はかけませんよ。地球に取り残している聖女様を確保しだい、解放して差し上げます」

「な!?」


 しまった! 陽菜ひなのそばには、今は裡子りこ先輩しかいない!! 今

襲われたらひとたまりもない!!


「ランゲ! 番長!! ノモスさんを倒してすぐに引き返すぞ!!」

「モチロンだ!!」

「……………………」

「どうした? 番長??」


 返事がない。番長は、さっきからずっと突っ立ったままだ。


「うふふ。壬生みぶ流斗りゅうと。いつまで主人ヅラをしているのかしら? 番長さんは、すでに私のオブションですよ」


 ノモスさんは、豊満な胸元から懐中魔道士メカニカルウイッチをとりだすと、とんでもないことを言い放った。


「番長さん! 蒙古覇極道タイガータックルです!!」

「わかりやした! 姉さん!! アニキ、お命頂戴いたしやす!!」


 ノモスさんに命令された番長は、俺に向かって猛然とタックルを仕掛けてきた。


■次回予告

 まさかの賢者ノモス、そして番長の裏切り!! 流斗りゅうとたちは、絶体絶命のピンチを切り抜けられるのか……お楽しみ!!

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