第13話 異世界からの来訪者。
クロノス王国の勇者ランゲとの決闘から一週間が経過した。
あれ以来、クロノス王国からの刺客は襲ってこない。
そして、
まあ、相手は国王だもんな、いくら魔王を倒した勇者とはいえ、一週間やそこらで進捗があると考えるのは無理がある。
なにはともあれ、もう、
最初は、クロノス王国で聖女だったことを、バラしてしまうのでは無いかとヒヤヒヤしていたけれど、今はそういうキャラだと認知されるに至っている。
というわけで、最近では随分と
最近は自分の趣味の時間が増えてきた。
俺の趣味はふたつ。ひとつ目は、言うまでもなくゲームだ。今は新作のRPGを遊んでいるけれども、昨日公式サイトで告知された『クロノスの聖女』の追加ダウンロードコンテンツ(リリース日未定)も、めっちゃ気になっている。
そしてもうひとつは、
キーンコーンカーンコーン……
「よし、急げ!!」
俺は終礼のチャイムと同時に猛ダッシュする。
「あ、
「ゴメン、今日は、クラブ活動あるからさ!!」
今までは護衛のために、
俺は
そう、もうひとつの趣味は絵を描くことだ。
俺の夢は、将来、ゲーム業界で働くこと。ゲームが趣味だからってのもあるけれど、父さんがゲームプログラマーで、母さんが3Dデザイナーと、両親がゲーム業界で働いているのも影響してると思う。
俺は母さんのように、3Dデザイナーになりたい。俺が美術部に入ったのは、母さんから「絵の仕事につくのなら、あらゆる基礎であるデッサンは絶対にやっておいたほうがいい」と、アドバイスを貰ったからだ。
ガラリ
美術室のドアを開けると、そこには先客がいた。
制服の上からエプロンをつけた、ボブカットの小柄な少女が俺に語りかける。
「あれ?
「お疲れ様です。
たったふたりきりの美術部で、唯一の先輩、
「しばらく見ないから、退部したのかと思っちゃった」
「すみません。このところ色々と立て込んでたもんで」
「あは♪ 知ってるよ。
「そ、それは、
「でも、
「そ、それは、まあ……」
「いいなー、両思い。うらやましいよ」
俺の煮えきらない言葉に、
気まずくなった俺は、話題を変える。
「一週間見ない間に、随分と仕上がりましたね」
「うん。締切が近いしね。高校最後のコンクールだし、後悔がないように頑張ってるんだ」
俺は、
80号(1455x1120ミリ)という巨大なカンバスに、地底深くへと封印された天使が神々しく描かれている。
受験生の
俺は、真剣な表情でカンバスに向かう
卒業前までに、玉砕覚悟で告白をする決心もついていた。
背が低くて、控えめな顔立ちと性格で、バストサイズも控えめ。
あ、勘違いしないでほしい。今は
「さてと、俺もデッサン頑張るか」
俺は、ダビデ像の石膏像に向かうと、鉛筆を走らせた。
そして10分後。
あれ? こんなに下手だったっけ……俺はカンバスに描かれた絵と、石膏像の違いに愕然とする。画力って、一週間サボったら、三ヶ月退化するって言うしな。これからは真面目にクラブ活動を続けなきゃ。
俺は、気を取り直してカンバスに向かう。
「……あれ?」
ギュイイイイイイイーーーン
突然、石膏像の後の壁にポッカリと穴が開く。そこから魔女の衣装に身を包んだ、中学生くらいのツリ目で金髪ツインテールが似合う可愛らしい女の子が現れる。
「ええ? 幻術師ゾーネ! どうして?」
「お、おまえは、
幻術士ゾーネは叫び声をあげると、時空のはざまから飛び出す。だが、飛び出した場所が悪かった。幻術師ゾーネは、ダビデの石膏像に思いっきりつまずいて、美術室の床に顔面から不時着をする。
「んきゃん!!」
ミニ丈の魔女っ子服がめくれあがって、紫と白のストライプの可愛らしいパンツが丸見えのモロ見えだ。
「きゃ! な、なに??」
「おいおい、大丈夫か!?」
驚いた俺と
「いたたた……」
顔面を床にしたたかぶつけた幻術師ゾーネは、顔をさすりながら立ち上がると、いきなり大真面目な顔でとんでもないことを叫んだ。
「
■次回予告
幻術師ゾーネが告げる衝撃の事実! クロノス王国の国王を説得しにいった勇者ランゲの身になにが起こったのか!? ……お楽しみに!
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