第5話 10年ぶりに再会した幼馴染、朝ごはんを食べる。
「ただいまー」
返事はない。両親は共働きだからだ。
父さんはゲームプログラマーで、母さんは3Dデザイナー。職業柄、帰ってくるのも遅めだ。
俺は自分の部屋に入るとベットに寝転がって、
見た目は、普通の懐中時計なんだけど、裏面には、迷路のような複雑な紋様が刻まれていて、中央付近に、2つの宝石がキラキラと輝いている。
『クロノスの聖女』に登場する、アビリティシステムに使用する紋様だ。
2つの宝石は、さっき習得した
ポーン
通知音とともにスマホが震えると、スマホにチャットが表示される。
『今日も遅くなります。今週はずっとおそくなるかも』
母さんからのチャットだ。
しゃーない。なんか適当に晩御飯を用意しとくか。
両親の帰りが遅い時は、俺が晩御飯を作っている。中学生のころからの習慣だ。もっとも、そんな凝った料理はできないから、冷蔵庫にある材料で適当に作っているだけだけれども。
「今週は、ずっと忙しいみたいだし、カレーでも作るかな」
俺はキッチンの引き出しから圧力鍋を取り出すと、手早く豚肉と野菜を切って圧力鍋に放り込む。圧力鍋なら、風呂に入っている間に十分に火が通る。
風呂から出て、ルーを溶かせば3日分のカレーの完成だ。
俺は手早くカレーを食べると、すぐに自分の部屋へとトンボ返りをして、ベットにつっぷした。
……めっちゃ疲れた
そりゃそうだ。クロノス王国から帰ってきたと言い張る
しかも『クロノスの魔女』を夢中で遊んでたから完徹状態だ。
俺は目を閉じると、気絶するように眠りについた。
・
・
・
夢を見ていた。子供の頃の夢だ。
俺は、子供にもどっていた。7歳の頃だ。7歳の俺は、河川敷を歩いていた。
女の子と手をつないでいた。おとなりに住んでいる
俺は
今日は、
俺は、両親にばれないように、その二つを、
俺は、シロツメクサの咲き乱れる河川敷の土手で、
ん? これ、夢だよな?? にしては、唇の感触が、妙にリアルな気が……。
・
・
・
俺はゆっくりと目を覚ます。
「ん? うむう!?」
目の前に
俺が目覚めたことに気がついた
「な、何やってんだよ
「なにって、モーニングコールじゃない。
「モ、モーニングコールって、他の起こし方があるだろ!」
「あら? アタシとのキスが不満??」
「そんなことはないけど……」
不満なんて有ろう筈はない。こんな絶世な美少女とのキスなんて嬉しいに決まってる! でも不意打ちだなんて心臓に悪すぎる。
1階から母さんの声が聞こえる。
「
そりゃ家族ぐるみでの付き合いだったんだもんな。母さんが
俺は制服に着替えると、
そこには、2人前のごはんと味噌汁、そしてハムエッグが並んでいた。
ん? 父さん、昨日は会社に泊まりだって言ってたよな……。
「ほらほら、
「わぁ! ありがとうございます!! いただきまーす♪」
「おいしい♪ やっぱりお米とお味噌汁って最高♪ あっちの国じゃあ、食べられなかったし」
まさか
俺は母さんを見る。母さんはご機嫌で朝ごはんをほうばる
「日本の高校を卒業するためにひとりで戻ってくるなんて、えらいわよね。一人暮らし、なにかと大変でしょう?」
「えへへ、そんなことないですよ」
よかった。
「そうだ!
「え? いいんですか!?」
「モチロンよ。
そりゃあ、こんなとんでもない美少女に、目覚めのキスなんてされたら、眠気なんて吹っ飛んでしまうに決まってる。でもこんなのが毎日続いたら、心臓に悪すぎる。
ピロリロリン♪
『アビリティポイントを獲得しました。習得するスキルを選択してください』
え? なんで?? ……あ、そういや『クロノスの女神』だと、イベントをクリアした時も経験値とアビリティポイントをもらえたな。
古参キャラと途中参加キャラの習得スキルの差を緩和させるための処置だ。
俺は、ごくごく小さい声で、習得したいスキルを答える。
さっきのキスが、イベント扱いだったのかな……?
「(ひそひそ)『眠り耐性』を習得!
『了解しました。『眠り耐性』を習得します』
「?
「な、なんでもないよ!!」
やれやれ、とりあえずこれで、
……ちょっと、もったい無い気がするけれど……。
■次回予告
学校に登校すると、校門で番長が待ち伏せしていた! 昨日の復習とおもいきや……お楽しみに!
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