第12話 橘 幸太郎!!
検査の結果…全く異常はなかった。
脳にも他の臓器にも…。
では、この体の怠さ手足のぎこちなさはどう説明するんだ?
美羽にも酷いことを言ってしまった。
頬が赤く腫れていた…。
あぁ…何やってんだオレは…。
とりあえず入院をさせられた・・・。
異常がないなら帰してくれても良いのに…。
コンコン…。
「はい…。」
「幸太郎…?私…入ってもいい?」
「どうぞ…。」
ガラガラ。
「大事な話があるの…。」
「・・・・・・。」
「あのね・・・。」
なにやら、思いつめた表情だな…。
目も赤い…泣き腫らしたんだな。
オレの
「ごめん美羽・・・おまえに八つ当たりみたいな事をしてしまって。」
「ううん…良いの。」
「私もいけないところもあったし…。」
「おまえは悪くない…悪いのは…!」
(そう…悪いのはキミだ…!)
「……!!」
「あのね・・・考えたんだけど…幸太郎…私たちさ…。」
別れをきりだすつもりか…。
まあ、そりゃそうだよな…。
いま思えば・・・オレが未練がましく転生したから
忘れなかったのか…死んだと思っていたオレの事を
2年も寝たきりだったオレの事を…。
忘れさせてやりたい・・・。
オレの事は忘れて欲しい…。
オレは何の為にオレは生きてるんだ?
あの時に死んでれば良かったのに…死にたい…。
(じゃあボクにちょうだい!)
(キミの体も美羽もぜーんぶ!!)
「あぁ…もういい・・・。」
おまえに…。
「美羽・・・別れよう…。」
パーン!!
いっきに目が覚めるような一撃だった。
「何言ってるの幸太郎らしくない!」
「私がいつ別れたいって言った!?」
「何を悩んでるかわからないけど…色々あったけど私は別れないから!」
「私は幸太郎が大好きなの!」
「幸太郎は違うの!?」
「いや、オレは…。」
「ハッキリしろ!!橘 幸太郎!!」
「男でしょう!?」
あはは…参ったな…情けない。
オレは一体何度彼女を泣ければ気が済むんだ?
いつもいつも泣かしてるんじゃねぇよ!
オレは美羽を幸せにするために生きてるんじゃないのか!
「美羽…すまん・・・改めて言うぞ…。」
「オレは美羽をこころから愛してる…こんなオレで良かったら結婚して欲しい。」
「3年前の2人だけの約束だから。」
はい…。
何をオレはウジウジ考えてるんだ?
だから亡霊につけ込まれるんじゃないか…。
(ボクは亡霊じゃないよ…。)
黙れ!美羽を幸せに出来るのはオレだけだ!
おまえは引っ込んでろ…おまえじゃ美羽は幸せに出来ない!!
(すごい自信だね・・・さっきまでは消えたいって感じだったのに。)
美羽は幸太郎を必要としてくれてるんだよ…。
おまえじゃない…。
(……。)
おまえはフリをしてるだけだろ?
白カラス・・・。
【気づいていたのか・・・。】
コタローも幸太郎も元はおれ自身のはずだなのに
これはおかしい・・・と思った。
あのとき、さよならだって言わなかったか?
【なら、心配かけるな・・・。】
そうだな・・・すまん。
「ごめんね…痛かった?」
「オレの方こそ…ゴメンな。」
「痛かっただろ?腫れてるもんな…ホントごめん。」
ギュッ…。
オレは美羽を強く抱きしめた。
「あのあとさ・・・白いカラスさんが来たの・・・。」
そして私に聞いてきたの。
こんなだらしない奴がキミを守れるのか?
キミ幸せにできるのかってね!
「私が弱いからいつも悩んじゃうから・・・。」
「でもね?私は思うの・・・。」
「幸せって誰かに与えられるものじゃない・・・自分でつかむものだって。」
「そうだな・・・確かにその通りだ。」
【だが人は弱い・・・だから誰かにすがる。】
【恋人、友人、或いは神仏・・・。】
【だからワタシの様なものが産まれる。】
どういうことだ?
【いずれわかる・・・。】
【犬たちとの会話ができる能力は残していこう。】
ああ・・・。
【ひとつでも小さい命を救ってくれ。】
もちろんだ。
【ではな・・・橘 幸太郎・・・。】
ああ、さようならだ。
・
・
・
翌週、オレと保護した仔犬は退院した。
すっかり元気になったようで良かった。
「美羽、こいつの名前決めたのか?」
「うん!」
「なんて付けるんだ?」
ポチだけはやめろよ?
すると美羽は自信満々で
「コタロー2号!」
ネーミングセンスの
なのになぜドヤ顔が出来るんだかな。
「じゃあキタロー?」
「………。」
まさか墓場で拾ったからとか言わないよな?
「
「お墓で見つけたから?」
はぁ…。
「よし決めたお前はスマイルだ!」
アン!
「そっか気に入ったか。」
アンアン!
(うんうん。)
むぅ〜。
「なんかずるいな~幸太郎は…。」
「何でだよ?」
「だってスマイルの言ってる事わかるじゃん。」
そう言うと美羽は少しふてくされた顔をした。
「ちゃんと通訳してやるから…。」
「うん。」
キィ・・・。
「そうだ明日・・・。」
「え?」
「明日・・・あの二人で住む部屋探しに行かないか?」
「うん、いいよ。」
オレたちは幸せになれるのだろうか・・・?
いや、なれるかじゃないよな・・・ならないとだよな。
翌日、不動産会社を訪ねた。
「いらっしゃいませ。ご予算と条件の方は?」
「条件は・・・2LDK以上で・・・バストイレ別で
駐車場があって~ペットOKな物件」
「予算は~・・・。」
物件はわりと近くに見つかった。
目の前には、あの公園のドッグランがあった・・・。
「いいところだよね~。」
「まあな・・・。間取りや部屋はな。」
でも、ここはイヤな思い出もあった場所でもある。
家賃と条件がピッタリだったのはココしかなかった。
それは美羽もわかってたはずだった・・・。
美羽が一番つらい思いしてたはずなのに。
第13話につづく・・・。
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