第6話 もういやだよ・・。
救急車が到着して安井を載せて行った。
美羽は警察に
安井は重症だったが生命に別状はなかったらしい。
退院後、
生き物はモノ扱いなんだな。
オレは飼い主を
オレが目を開けたのは事件からまる4日経ってからだった。
なんだ?ここは…痛てて…。
身体が痛みでクソ…。
痛いって事は生きてるんだな。
周りは老犬やら保護された犬どもばかりだった。
なぜ…こんなところに…。
ああ…そっかオレは人を噛み殺したからか…。
『おう…若いの目が覚めたか?』
『まあ、何とか生きてるみたいだ。』
『ここは?』
『ここは…死ぬのを待ってる場所だ。』
『やっぱりか…。』
『お前さん何やらかしたんだい?』
『彼女…あ、いや飼い主を護って人を噛み殺した…。』
『そうか…。』
『じゃあ、いつも泣いてたあの人は飼い主だな?』
そうか…美羽のやつ来てたのか…。
ちゃんとお別れ言いたかったな。
『はっはっはっ冗談だぞ?』
『は?』
『だから冗談』
『ここは動物病院だ・・・ははははっ』
『このジジィ~~~~!!』
いてて…傷がまだ痛い。
ガチャ・・・。
「先生!コタローくんが目を覚ましました。」
「おぉ~…そうか。」
「よし…傷の
「
「その必要は無さそうです・・・。」
ん?美羽の匂いが・・・?
「幸太郎!!」
ガバッ!ギュッ・・・。
「ばか!死んじゃったと思ったじゃない!」
すまん・・・。
「もういやだよ・・・大事な人を失うのは・・・。」
ごめん・・・。
1週間後退院した・・・。
あとは検査に通わないとだけど。
病院はもうヤダ。
「ただいま~。」
「コタローお帰り~」
美玖が抱き着いてきた・・・珍しいな。
ギュッ。
「お姉ちゃん助けてくれてありがと・・・。」
「おお~コタロー今日は飲もう!」
オッサン・・・だからオレは犬だって。
久しぶりに歩いたのもあってオレは疲れて眠ってしまった。
美羽がずっと傍にいてくれた。
「幸太郎・・・生きててよかった・・・。」
「どこにもいかないでね・・・。」
翌朝・・・。
いつもの日課のランニングの時間だった。
「コタロー?歩ける?」
「あ、うん。」
「じゃ、今日は普通にお散歩しようか。」
「そうだな…リハビリがてらに行くか。」
久しぶりの散歩だな…。
「いってくるねー。」
「気をつけてね!」
「さて、行こうか」
ちょっと待て!
普通の散歩って言ったよな?
なぜ走ってるんだ!?
はぁはぁはぁ・・・。
「美羽・・・ちょっとストップ!」
「え?」
「おまえなぁ・・・普通の散歩って言っただろ?」
「あ、ごめん・・・。」
それからは走ることもなくマイペースで歩いたのだが
また向かいからあのおばさんが散歩してきた。
「あ~ら、おはよう」
「おはようございます。」
また、あ~ら・・・。
「大変だったわねぇ・・・もう大丈夫なの?」
「はい。」
おばさん、余計な事いうなよ・・・。
あんなこと早く忘れて欲しいんだから。
『コタローちゃん・・・おはよう』
『ショコラティエ・・・。』
『ショコラだって言ってるでしょ!』
『噛むわよ?』
『冗談だって・・・。』
『そんなクチが聞けるならもう大丈夫そうね。』
なんだ?心配してくれてたのか・・・。
案外いいやつなんだなショコラって。
「では、失礼します。」
『またな、ショコラ!』
『またね。』
ん?あんな感じだったか?まあいいや・・・。
心なしか少しペースが上がった。
あ・・・ここのまま行ったら・・・。
「美羽・・・こっちいこうぜ。」
「あ、うん・・・。」
オレはいつものコースじゃなく違う道を選んだ
あの現場に行けばいやでも思い出すだろうから。
クンクン・・・。
ん?いい匂いだな…。
すると
「あ、コタローと同じハスキーだね~」
ホントだ・・・。
こいつから良い匂いがするのか。
「おはようございます。」
「あ、おはようございます・・・ハスキーですね。」
「おや?怪我してるのかい?」
「あ、ちょっと・・・もう治ってるんですけど」
「そうなんだ…。」
感じのいい紳士だった。
美羽の奴・・・惚れないだろうな?
クンクン・・・。
犬同士の挨拶だ…お互いの尻の匂いを嗅ぐ・・・。
警戒心がないものなら嗅がせるという。
『違ったらゴメンだけど…。』
『おはよう』
『あ、おはよう…アイリスってキミ?』
『なに!?新手のナンパ!?』
『違うわアホ!』
『あは…コタローさんでしょ?あなた。』
『なんで知ってるんだ?』
『あなた有名よ?主人を守って大けがしたって。』
なるほど…そう言う意味で有名なのね。
守ったって聞こえはいいけどな。
「コタローいくよ~」
『それじゃ、またねコタローさん』
『おう・・・またな』
「コタロー可愛い子だったね?」
「ま、そうだな。」
「コタローもイケメン君だもんね?」
「ま、そうだな。」
「あーいうのが好み?」
「え…?」
「冗談よ!」
時々意味の分からないことを言って冗談で済ませる。
「オレは犬だけどお前が好きだ!」
ピタッ・・・。
美羽は足を止めた・・・。
「もう一度。」
「そ、そんなこと何度も言えるかよ!」
「えーもう、一度だけ!」
「・・・オレはお前が好きだ。」
満足そうな笑顔を浮かべて歩き出す。
「私もコタローが好きだよ!」
「大好き!」
なんか急に恥ずかしくなってきた。
遅刻するぞ!
オレは美羽を引っ張って走り出した。
「こら、走ったらダメでしょ?」
散々走らせたくせに・・・。
「またドッグラン連れて行ってくれよ。」
「先生に聞いてからね!」
◆
◆
1週間後動物病院に連れていかれた。
検査と傷の経過を見るのに。
「よし…もう大丈夫だ」
「ありがとうございました。」
傷跡の部分は毛が生えてこないから
格好悪いけど仕方ない・・・。
「よかったね。」
「あぁ・・・。」
「コタロー帰ったらお風呂入ろうか。」
あー…また臭いのか…。
そういえばケガしてから風呂はいってないしな。
「そうだな。」
「あ、思ったんだけど・・・。」
「ん?」
「コタローの声ってみんなに聞こえているのかな?」
「あ・・・気をつけて美羽と居る時にしか人の言葉使ってないしな。」
「なんだ?急に・・・。」
「ううん、ただ思っただけ」
たしかに普段家で美羽と話してる時は喋ってるよな
その声って他の人には聞こえてないのかな?
美玖ちゃんとか・・・。
試してみるか?
家に着くと美玖ちゃんが居間に一人でテレビをみてた。
「美玖ちゃん!」
ワンワン!
「あ、コタローおかえり~」
ワン!(ただいま)
ワンワワン!(テレビ面白い?)
「コタロー怪我なおったの?」
「そっか~よかったね~」
ナデナデ・・・。
通じてない・・・やっぱり美羽だけなんだ・・・。
じつは、声に出てないのか?
美羽とは心で会話してる?
「コタローお風呂入るよ~~!」
ワン!
ユーティリティに入ると驚いた・・・。
「み、美羽?」
「え?」
「きょ、きょ、きょうは・・・Tシャツじゃないんだ?」
「えーお風呂に入るのに服着ないでしょ~…。」
この前着てただろ・・・。
まあいいけど・・・。
ジャァァァ・・・。
ガシガシガシ・・・モコモコ。
あの・・・泡たち過ぎじゃないか?
モコモコモコモコ・・。
「くすっ・・・コタロー、羊みたい。」
「羊って・・・メェー・・・。」
「あははは。」
ブルブルブル!!
「あ!こら!!」
ジャア~~~~。
「はい。おしまーい」
ブルブルブルブル・・・!
美羽・・・やっぱ綺麗だなぁ・・・。
「あーえっちなこと考えたでしょ?」
「か、考えてねえよ!」
「じゃ、ちゃんと目をみて言ってみて?」
ジーーーー。
チュッ!
「なっ!」
「コタロー大好きだよ」
ギュッ・・・。
って…おい!!胸が~~~!!
第7話につづく・・・。
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