12.模擬戦闘 Type : Lance
大会まであと丁度1ヶ月ほど。
俺とミレイは特訓に励んでいた。これまでの模擬戦闘は魔物型のエネミーを相手にしていたが、今は大会を想定してより高度な知能を持った人型エネミーを使った戦闘訓練を行っていた。
今回の特訓の目的は、俺の戦闘スタイルの確立。何が得意で何が不得意かを見極めるため、さまざまな場面を想定したフィールドと武器を使っていた。
今、眼の前に広がるのは中世の
その姿はデッサン人形のように無機質で、形こそ人間だがいかにもシミュレーション用といった姿をしている。
『順番に行くよ。まずはこれ』
右手に俺の肩くらいまでの槍が生成される。それは木の柄に穂が付いたオーソドックスなものではなく、すべてが金属でできた真っ黒い槍だった。柄には蛇が絡みつくような彫り物がされている。
『大分凝ってるな』
『あたしの趣味ってことで』
両手で持ってくるくると回してみる。質感は金属だが、重量はさして感じない。
そうしてしばらく槍を振り回した後、両手で構えて穂先を相手に向ける。それを合図に模擬戦闘が開始される。
長剣の間合いは普通の剣よりも広いが、それでも槍よりは狭い。槍の正確な間合いはミレイが俺の意識に送り込んでくれていた。だから俺はいつもより緩やかに加速し、自分の間合いの少し手前で止まる。
相手がこちらに向かってくる。長剣を突き出しているが、俺はその射程の外から槍で薙ぎ払い、牽制する。それでも相手は怯まず、穂先に向かって何度も打ち込んでくる。
それの剣戟を一つずつ薙ぎ払いながら、その間に相手の胴を狙って踏み込み、突きを繰り出す。が、相手は大きく後方へ跳躍してそれを避けた。
再び開始時点の同じくらいの距離が離れる。
槍による接近戦が不得手だと判断した俺は、ミレイに思考を送る。
『コード実装、頼めるか』
『この距離からやる?』
『ああ、トドメを刺す』
『おっけい」
すぐさま俺の槍が震えるような感触がした。右手でそれを構え、左手を相手に向け、投擲姿勢を取る。槍は小さく震えながらMNDL特有の光を放っている。
『タイミングはいつでもどーぞ』
『助かる』
相手が一気に跳躍してくるのが見えた。こちらは完全に無防備だ。やるなら今しかない。
『リコレクション・グングニル』
それは呪文の詠唱というより、引き金を引く行為に近い。装填された弾は槍。それを撃つための合図のようなものだ。
右手に込めた力を、全身の体重移動で一気に開放する。槍は空間を裂きながら突き進み、相手の跳躍する速度を遥かに凌駕するスピードで、その左胸を貫いた。
相手はそのまま槍に押されて反対側の壁に叩きつけられる。ライフ限界が来たのか、薄緑の光に分解されて消えていった。
残った槍はまるで意思を持ったかのように、一直線に俺のところに跳んできて、右手に収まった。
『おつおつ。なるほどねえ』
『結局大技でトドメになっちゃったな』
『うーん。大会クラスだと大技打っても防がれることも多いからなあ。堅実に得物でやり合うのがいいんだけど』
『槍は俺には向いてない、か』
『んだね。ていうかトーヤ君のこれまでの戦闘データから見ると、スタイルと武器が今回は噛み合ってなかった。それがわかっただけでも収穫よん』
『そうか』
『このまま続けられそ?』
『ああ、まだいける』
『よっしゃ!次の模擬戦闘、いっくぞー!』
ミレイの上機嫌な声とともに、フィールドが塗り替わる。
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