高1冬
第31話 みんなで慰安旅行!!!
「みんな!!!!」
俺らがバイト終わりに葉月さんは、ある物を開き、見せつけた。
「え?」
俺は、店の制服を畳み、そして、葉月さんの持っている物を受け取る。
葉月さんの持っていたもの…それは起眞市ガイドブックというもので、起眞市の名物スポットなどが掲載されている雑誌だった。
そして、その表紙。
そこには、大きく森崎さんが腕を組んで立っている姿が前面に押し出されていた。
「え?な、なんですかこれは!?」
隆一が聞くと、森崎さんは、胸を叩き、「この度!!!森崎喫茶のインタービュー記事が掲載されましたー!!!!!!」
『えええええええ!?!?』
俺ら一同は、一斉に声を上げた。
なぜなら、俺らにそんなことは知らされていなかったからだ…
「ま…マジかよ…!!!!」
「まじまじ!!!!!」
森崎さんは俺の言葉に頷きながら、返すと、「それじゃー!!!!」と言葉を溜める…
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「慰安旅行だぁー!!!!!!!!!!」
という流れで、俺は今なぜか、大阪にある、ユニバーサルフェスティバルジャパン…略して、UFJに来ていた。
2泊3日の慰安旅行。
慰安旅行というのは、社員などの功績に応じて、行われる、よし!頑張ったな!!的な物だが…
果たして…
俺たちはそんな大層なことをしただろうか…?
と、俺が考え込んでいると、
「ほら霧矢君!」
と森崎さんの声が掛かった。
「え?あ、はい?」
森崎さんの横には、カメラを両手で持っている女性が立っている。
「え?」
「撮ってくれるってさ!!!!」
俺が迷った様子なのを悟り、隆一が俺に教えてくれた。
「な、なるほど…?」
「「「「「イェーイ」」」」」
パシャリ。
大きな地球儀の前で、俺たちは写真を撮り終えると、「どうしたの?」と奏音に声を掛けられた。
「え?あ、いやちょっとした考え事してただけ。」
「そうなんだ。」
「………」
隆一やアズリアや森崎さんが、先にチケットを持ち、園内へ入ると、俺と奏音の間になぜか沈黙が流れた。
こういう時って…奏音だったら…「もうすぐだね!!!霧矢くん!!!!」とか…言いそうなのに…
なぜか今日はやけに静かだな…
「奏音…大丈夫か?」
俺は、前の人が、荷物検査を行っている途中、そんなことを、気にかけてみた。
「え?な、何が…?」
「え?いや…なんか元気ねぇなぁ…と思ってさ…」
すると、奏音は、なぜか焦るように、「え?あ、あ、そ、そうかな?」と、動揺し始めた。
「す、すごい楽しみだよ!!私はね!!!」
奏音は、確かに今は笑顔だ…でも…なぜか、作っているように感じる…というか…
どこか表情がぎこちない…
気のせいか…?
「あ!!私たちの番だよ!!いこっ!!」
そういうと、奏音は俺の手を引っ張って、スタッフさんに俺と奏音の2人分のチケットを渡した。
「お願いします!!!」
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「おっまたせー!!!」
「遅いよ〜奏音ちゃ〜ん」
「ごめんごめん!!そんじゃ行こっ!」
やっぱり…
「どうしたの?霧矢君?」
「あ、いや、なんでもないです…」
俺は明らかに先ほどよりも、テンションの高くなっている奏音を気に留めながら、園内の中を歩き始めた。
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「ま…まて!!!待ってくれ!!!!!!」
ゴガガガガガ……………
「き、霧矢ぁ…聞こえるか…?死へのカウントダウンの
音が…」
ゴガガガガガ…………
「あ、ああ!!!はっきり聞こえる!!!!!!!」
ゴガガガガガ………………
「俺もだ!!!!!!」
次の瞬間、ジェットコースターは一番上まで登ると、そこから一気に、ほぼ垂直とも言える角度で、急落下。
若干意識が飛びつつある俺の前の座席では、女子+森崎さんが、「きゃー!!!!」と声を上げていた…
そして、その後ろはというと…
「「うわあああぁぁアアアアぁぁアアアァァァアアアァァァ!!!!!!!!!!」」
「し、死ぬ死ぬぅ!!!!!!!!」
「まぢ無理ぃ…吐きそ…ゔぉえ…」
ジェットコースターの急カーブにかかる遠心力で生まれるGが体に張り付き、若干の気持ち悪さを催す俺と隆一は、この後暫く吐き気に悩まされることとなった。
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「だ、大丈夫?隆一くん…?」
アズリアがベンチに座っている隆一の背中をさすり、隆一は、前のめりになってもたれ掛かる。
なんとか俺は耐えれたが…隆一は案外やばかったらしい…
「う…やべ吐きそう…」
「吐く?いつ吐いても良いからね…?」
「でもどこに_」
「私に。」
「我慢するわ…」
「「あ…あはは……」」
俺と奏音は苦笑いしかできなかった…
そして、ベンチに同席していた森崎さんが、「じゃあ2人は2人で先にいろんなとこ回ってていいよ!」というと、奏音は、「え!?良いの!?ありがとう〜!!!」と言い俺の手を引っ張って、「行こう行こう!!!」と言った。
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「ところで…結局どこ行くんだ?」
俺は質問すると、「え?ん〜どうしようかな〜」という心許ない返答が返ってきた。
「こういうのって、いっぱいありすぎて迷っちゃうよね〜!」
「そうだな…」
俺はそう答えると、とりあえず、近場の状況を判断すべく、周囲を見渡す。
「あ、でも観覧車、今空いてるみたいだぞ!!!」
俺は観覧車に向かって指を刺した。
ちょうど昼ご飯のタイミングということもあって、待ち時間は約10分ほど。
ちょうど良い。
「え…?あ…か、観覧車…?」
すると、奏音は少し微妙な顔をする。
まるで、何かトラウマがあるかのように、ちょっとした嫌悪感の含まれる表情…
「あ…何か不味いか…?」
「え?い、いや…そういうわけじゃないんだけど…ううん…なんでもない!!行こっ!」
そういうと、奏音は、俺の手を握って、観覧車への方へと向かい始めた。
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「うぉー!!!すげー!!!」
俺は、観覧車の頂上まで後半分くらいのところで声を上げた。
俺はスマホを取り出し、カメラを起動した後、その風景をカメラの中に収めた後、俺は奏音の方向へ向き、「なあ!!!外凄いぞ!!!!」と言う。
「あ…う、うん…そうだね…」
「え?もしかして…奏音って高所恐怖症か…?」
「い、いや…そういうわけじゃないよ…別に…ね?」
俺は、席に座り直って、奏音の目の前に座った。
「じゃ、じゃあ…なんなんだ…?奏音…ちょっと今日は様子がおかしいぞ…?」
「え?そ、そんなことないよ!!!」
「じゃあさ…ちょっとは、苦しいこと、忘れてでも、今日は楽しんだ方が良いんじゃないか…?」
「え?」
俺は、わかる。
この奏音の今の表情は、何か、辛いことを、抱え、そしてそれは誰にも言えないようなことなのだと…
「実はさ、俺、意外と誰から、人生相談?みたいなのよく受けるんだ。その時に、奏音みたいな表情してる人がたまに居るんだよ。そういう奴って、大体なんか抱えてるんだよ。」
「抱えて…いる?」
俺はコクリと頷く。
「そう。辛いことでもあったんだろ?」
「き、霧矢くんに…」
奏音は、膝の上に置いてあった拳をギュッと握った。
「霧矢君に何が分かるの…!!!!!!!?」
急に、大声を出したことに、俺はビクンと少しだけ、驚く…
すると、我に返ったのか、奏音が「あっ」と声を漏らした。
「ご、ごめん…ただの部外者…だからな…俺って…」
「そ…そんなことないよ!!!!え…えっと…その…私もごめんなさい…」
奏音は、少しだけ笑うと
「そうだね…私も…楽しんで見ることにするよ!!!」
と、両手を前に出して言った。
この、高速気持ち入れ替えに俺は驚かされる。
なぜなら、先ほどまで、苦しんでいたような顔だったのに対し、今は太陽のような笑顔だったからだ。
「お…おう!!!あ!!!見ろよ!!さっき俺らが乗ったジェットコースターだぞ!!!」
「あ!!本当だ!!!あ!!!見て!!アズりん達だよ!!!!」
俺は、今まで馴染みのあったその笑顔を見て、
「困った時は、相談してくれよ?力になるから。」と胸を張って言うことができなかった。
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