第15話 この起眞市…なんか…変ですよね?

「ん…んん…ん?」

目を擦って私は起きる。


あれ?私…なんで森崎喫茶にいるんだ?今日は休みだった気がするんだけど…


カウンターにうつ伏せになって寝ていた私はある異変に気づいた。


それは…


「森崎さ〜ん?」

客が誰一人おらず、そして誰も店員さんも居ないということ。


こういう時って大体、誰か一人…それも、森崎さん位ならいると思ったんだど…


私はカウンターから立ち上がって、夕日の差し込む大窓の外を覗く。


いつものことだけど、人の通りがない。


でも、最近はここの道も有名になってきたし…

誰か1人位はいると思ってたんだけど…


「うーん…本当に誰も居ないのかなぁ〜?」


私はふわぁとアクビを吐き出して、しばらく大きな窓のそばを歩き回る。


「まあ、誰も居ないんだね…それじゃ、また寝てよ〜」


私はなんの懸念もなく、カウンターにまたうつ伏せになって睡眠を取る。

段々と眠気が襲ってきて…あ…もう無理ぃ…………


「おい!!!誰かいるか!?」

私が眠りにつこうとした瞬間、店内に一つの声が響いた。


「って!あ、アズリア!!!!!」


「ん?隆一くん?どうしたの〜?」


その声の主は隆一くんだった。

なぜか、隆一くんは、大きなバックを背負っている。


そして、隆一くんは私に近寄ると

「よかった!!!!」

と言いながら、私のことを抱きしめる。


「え?え?」

暖かな感触が体を包む。

急に抱きしめたもんで、窓に映っていた私の顔は若干赤くなっていた。


「よかった…よかった…!!!!」


そして、私は気づく。

隆一くんが泣いていることに。

瞳を赤くして、顔をしわくちゃにさせながら静かに泣く。

私を強く抱きしめながら。


「え?隆一くん…?大丈夫?」


私はどうして泣いているのか…どうすれば、泣き止んでくれるのか分からず、様子を伺うように言葉を選び、そして、言い放った。


「実は…なぜか外が怪物…っていうかゾンビで溢れかえってて…人間が誰も居なかったんだ…」


か、怪物?ゾンビ?


目の前の通りに人影はない。

それどころか、猫1匹とも居ないし、怪物なんて1匹もいない…


すると…


ドン!!!!!ドン!!!!!!


急に店の扉が叩かれる音が店内に鳴り響いた。


「まずい!!!!!怪物だ!!!!」

隆一くんは、私から両手を離すと、バックを床に下ろし、中身を漁った。


そして、バックの中から出てきたもの。

それは…


「じゅ、銃!?」


そして隆一くんは、拳銃をバックの中から出すと、再びバックを担いで、私の手を引っ張る。


「それじゃあ、強行突破だ!!!!」


隆一くんは拳銃を右手、私の手を左手に握ると、走り出した。


そして、拳銃を扉に向けると、隆一くんの頭上をあたりを狙って発砲する。


すると、外で「グフェ!!!!!」という腐った声が聞こえた。


そして隆一くんは森崎喫茶の扉を蹴っぱると、出入り口に転がっていた腐敗した皮膚をもつ怪物に見向きもせず、外へと出た。


「ひっ!!!あ、あれって…」


「ゾンビだ。」


隆一くんは、持っていた拳銃で、倒れたゾンビの頭を撃ち抜くと、起きあがろうとしていたゾンビの動きが止んだ。


「どうやらフェイクションみたいに頭を撃ち抜いたら殺せるらしい。」


「そ、そうなの…?」


私は頬を掴み捻ってみる。

痛みを感じる…嘘のようだけど、夢じゃないみたいだ…


「か、奏音ちゃんは!?」


「分からない…俺…さっきまで寝てたんだけど…家に誰も居ないし…それに家の周りにもゾンビが居て…俺が起きてから会ったのはアズリアだけだ…」


「そんな…」


「霧矢に電話をかけても出てこないし…携帯もすでに圏外で…Wi-Fiが繋がらない…もしかしたら世界の俺とアズリア以外の全ての人間が居なくなった可能性が高い…」


私はある一つの可能性が浮かんできた。

でも、そうだとしたら…そうだとしたら…


「もしかして…全人類がゾンビになっちゃったとか…」


「それは言うな!!!!まだ…生き残っている奴がいるのかもしれない…」


私がそう言うと、街の物陰からゾンビが這い出てくる。


「くそ!!!!」


隆一くんは私の握っていた手を一瞬離すと、高く鳥のように跳びんで全体重を使ってゾンビの頭を両足で踏み潰す。


ぐちゃりと気持ち悪い音を鳴らし、辺りに緑色の血液を撒き散らす。


腐敗した匂いが周囲を支配した。


「くせぇ!!!離れるぞ!!!」


「う、うん…」


隆一くんの左手が私の右手を握る。

暖かい左手が私を守ってくれる。

そんな感じがした。


「そ、そういえば…今どこに向かってるの…?」


「とりあえず、スーパーにでも向かおうかなって…」


「スーパー?」


「ああ。まずは最低限の食料や水、そんでもって電池とかライトとか獲得する必要があると思うんだ…だから、すぐ近いスーパー。避難用具は持ってきた。食料とか火とかあれば、ある程度の暮らしはできる。」


「そうだね…」


すると、隆一くんが唐突に足を止めた。

「ッ!!!!!」


目の前にはゾンビの大群。

見るからに30人は居る。


「なんでこんなに!!!!!逃げるぞ…って…」


そして、後ろを向くと、後ろにもゾンビの大群が…

まさに絶体絶命…


「ど、どうしよう…隆一くん…囲まれちゃったよ…」


隆一くんはバックを下ろし、バックの中から金属バットを取り出した。


「仕方ねぇ…強行突破だ!!!!!」


隆一くんは、額に汗を垂らしながら、バットを一回転。


「アズリア!!!俺に着いてこい!!!!銃を渡しておく!!!もしもの時はゾンビを撃て!!!弾丸は限られてるから、慎重に使ってくれ!!!でも、無理はするな。」


隆一くんはそれだけ言って、私に銃を渡した。

ずっしりと来る重み。

大体辞書より少し軽いくらいだろうか…


それでもって、銃の銃身には「G」の文字の刻印が施されている。


「それじゃあ、行くぞ!!!!!」


そういうと、隆一くんは金属バットを両手で握って、ゾンビを一気に3体、薙ぎ倒す。

そもそも、ゾンビの肉が柔らかいのか、一振りだけで、ゾンビが簡単に倒れていく…


「うぉら!!!!!」


「がぁぁぁ!!!!!」


潰れていくゾンビの頭。


すると急に隆一くんが私の方向を向く。


「アズリア!!!!!!」


すると、隆一くんは私の右手を引っ張り、そして、私がさっきまでいた場所に向かって金属バットを振るう。


そこにいたゾンビが4体ほど薙ぎ倒された。

多分、隆一くんがいなければ、危なかった…


「あ、ありがとう…」

実際、ゾンビたちが怖すぎて実感が湧かない…


「アズリア!!!行くぞ!!!!」


「あ…うん!」


鬼神のような姿の隆一くん。

その姿に呆気を取られながらも、隆一くんはどんどんとゾンビを薙ぎ倒して行った。



「す…すごい…」

私がその言葉を漏らした時、いつの間にかゾンビの群れが全滅した…


「はぁ…はぁ…はぁ…アズリア…怪我は?」


私はどこも痛くない…


でも、隆一くんはとても緑色に染まっている…

大丈夫なのかな…


「私は大丈夫…隆一くんは大丈夫なの?」


「俺?ああ。全然元気さ!」


隆一くんは私を元気付けるためなのか、笑顔で笑ってみせた。


「にしても…この汚れ…少しまずいかもな…」


「な、なんで?」


「ゾンビがもしも、ウイルス感染とかでゾンビになったりするとしたら…血液感染するかも…だから…一旦せめて風呂とかにでも入りたいな…」


「あ…あれ…!!」


「あれ?うぉ!ちょうど良いな!!」







銃を両手で持つ隆一くんの後を追うように、私はバットを握りしめて着いていく。


「誰もいない…かな?」


隆一くんがそう言うと、私は一度、ふうとため息を吐いた。

「にしても、まさかこんな所に銭湯があるなんてなービックリだわ。」

緊張が解けた隆一くんが言った。


玄関と、更衣室、そして風呂場だけが存在する、最低限の物しかない古い銭湯。

私と隆一くんはそこで一旦、体を洗うことにした。


「そんじゃあ、俺…ここで待ってるわ…ゾンビがきたら危ないしな」


で、でもそれじゃあ…


「ん…」


「ん?」


私は隆一くんの服の袖を掴み、そして、隆一くんでは無く、床の板を見る。


「え…っとぉ?どうしたアズリア…?」


多分…ひどく赤面してるかもしれない…でも…でも!!!!


「その…ゾンビ…お風呂の中にもいるかもしれないし…その…一緒に入らない?」


言ってしまった!!!!!言ってしまったよ!!!!!!


「え…でも…それって…裸をみることに……」


「その…私は…良い」


死にたい死にたい!!!!恥ずかしすぎて死にたい!!!!!!


「いや…でも…」


私は、涙が出そうな瞳で隆一くんを見つめると、隆一くんは、「うっ!」と声をこぼして、わ、わかったよ…と言った。








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