第14話 俺の体育祭の時、本当こんな感じだった。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」
白色の帽子に向かって突き出した赤軍の騎馬長の手。
その手を見事避けてから、俺は赤軍の帽子を掴み取る。
「しゃああ!!!!これで3つ目!!!!」
『ななななんと!!!!!!!!赤軍が3つの帽子を掴み取った!!!!!!さすがは私の弟だぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!』
「クソ!!!まずは白軍だ!!!!!白軍の帽子を掴み取れ!!!!!!」
「うぉまずい!!!めっちゃ向かってくるぞ!!!」
「霧矢全部帽子を奪い取れ!!!!」
まじか…
俺は、伸ばされた手を体を仰け反らして、回避。
そして、攻撃に転じたせいで、できた隙を狙って、右腕を伸ばす。
右腕の先には、黄軍の帽子。
黄軍の帽子を掴み取り、そして騎馬を走らせる。
まさか、日々良い写真を撮るために鍛えていた反射神経がここで役立つとは…
「すげぇ!!!俺ら無双だぜ!!!!あと3軍!!!!!」
下で俺のことを持つ、唐沢が、大きなこえで告げると、その残りの3軍が一気に向かってきた。
「同盟でも組んだのか!?」
俺は、その3つの軍の騎馬の一番上に乗っている奴らのガタイの良さを見て少し怯む。
あんなの相手するのか…?
頭まで手が届くか…?
クソ!!!!やるしかねぇ!!!!!!!
「行くぞ!!!!!」
「「「おう!!!!」」」
俺が声を出すと、下の4人も同じく声を出して、指揮が高まるのを感じた。
まず一人目が、手を横に伸ばし、帽子を狙うが、俺は、その前に帽子を狙って、奪い取る。
次に来た騎馬は、正面突破をするつもりなのか、目の前から進んできた。
「俺が合図したら、右に行ってくれ!!!大体3mくらいだ!!!」
「了解!!!!」
まだだ…
まだだ…
まだだ…
「今!!!!!」
すると、急に動いた白の騎馬は、真正面から来た既に帽子の無い騎馬と、砂埃を置き去って、次の騎馬を狙う。
「次の騎馬は緑軍か…」
ユミーさんの居る軍か…
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
緑軍が雄叫びを発して威嚇するように翔る。
俺は、そんな勢いだけの緑軍の騎馬長の腕をかわして帽子を奪い取る。
そして最後。
「ありふれた作戦だ。」
と言い残した。
『決まったーーー!!!!!!!!まさかの白軍が全て帽子を奪い去ったー!!!!!無敵の霧矢だー!!!!!!!』
白熱した姉の声。
そして熱の上がったグラウンドの中央で、俺は全ての軍の帽子を空へと掲げた。
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「おめでとー!!!」
俺らが自軍の基地に帰ると、そこには、両手をあげて喜びを表しながら抱き寄せる奏音。
うっ…
香水の匂いが溢れ出る奏音に比べて、汗臭い俺の匂いがかき消される。
汗臭い男子となんの躊躇もなく抱き合うってのはどうかと思ったが、その感情を飲み込んで、両手を離してもらう。
「7つだよ!!!大体70ポイント!!!!すごいよすごい!!!!!」
ぴょんぴょんとうさぎのように飛び跳ねながら、にっこりと笑顔を浮かべる。
「じゃあ、このまま頑張っちゃおーう!!!!!」
「ああ。そうだな!!!!」
奏音によってあげられる団結力のまま、体育祭は進んで行った。
そして!!!!
『それではぁ〜!!!!!!次が最後の種目!!!!軍対抗!!!!!!!軍団リレー!!!!!!』
『これは軍の中で選ばれし者だけが走ることのできるリレーです!!!!!それでは、準備をお願いします!!!!!!』
姉の声が響くと、アズリアと奏音が席から立ち上がる。
「あれ?奏音とアズリア出るのか?」
「私は補欠で、ほんとは他の人が出る予定だったんだけど…熱中症みたいでさ…」
な、なるほど…補欠か…
「それでアズリアは?」
「こう見えても私、結構運動神経、良いんだよ〜?」
「え?そうなの?」
目をまんまるにして驚く隆一と俺。
開いた口が塞がらない。
「そうなのか…と、とりあえず、行ってらっしゃい…」
隆一がそう言いつつ見送ると、奏音とアズリアは「行ってきま〜す」とだけ言葉を残してグラウンドへと向かった。
へ〜…アズリアって意外と足速いのか…
ちょっと見てみるか…
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『さあ!!!それでは始めましょう!!!!位置について____』
最初のリレー走者がクライチングスタートの体制になる。
7つのレーンの走者が全員、前を向いて目をぎらつかせた。
それはまるで目の前の獲物を狩り取る為にタイミングを見計らうチーターのように。
そして、遂にその時が来た。
『スタァァァァァト!!!!!!!』
バァァァン!!!!
グラウンド全域に響く火薬の爆発音。
そして、その音と共に巻き上がる砂埃と歓声。
各々の軍団のリレー走者が一気に走り出した。
そしてその中でも、群を抜いて早く、そして群を抜いて力強い走りを見せたある一人に全ての視線が奪い取られた。
それは、ユミー先輩だ。
『おおっと!!!ここで最強の帰宅部!!!緑軍のユミーが出たぁぁぁぁぁ!!!!!』
そして、その背中を追うようにまたもや注目を集める生徒が一人。
『その後ろにはぁぁ!?赤軍、カガミも出たぁぁぉ!!!!!』
噂には聞いたことがある喧嘩最強の生徒がいると。
それは好戦的な性格をし、トランプカードをナイフ代わりに投げるというわけわからん先輩(たぶん2年)
『これはもう、二人だけのステージなのかぁ!?他の軍の生徒を一気に置いていくぞぉぉぉぉ!?!?』
そして、あっという間にユミー先輩はバトンを次の生徒に渡した。
やはりユミー先輩…早い!!
『ここで選手交代!!!!ここで赤軍も選手交代!!!!』
赤軍が交代した次に、次々と選手が交代していく。
『現在白軍が最下位ですが、もしかしたら次に逆転の一手が放たれるかもしれません!!!!』
逆転の一手?それって…
白軍のレーンに立ったのは茶色の髪色のポニーテールを揺らす女子。
そして低い身長と、子供っぽい幼い瞳。
「あれ?あの女子って…まさか!!!!」
『白軍!!!!熊田芽依!!!!!!』
メイ…まさか!!!!!
メイの足元。
そこには、学校指定ではない、青色の光の線が引かれた靴があった。
熊田芽依。
そいつは二重人格でメガネをかけることによって現れるエムという人格が現れる。
そして、エムは発明家らしく、色々なものを発明するようだ。
そしてあの見た目。絶対スピードシューズが何かだろうな…
『既にどの軍よりも半周は差がついている、白軍の熊田芽依にバトンが渡された!!!!!さぁ、熊田芽依はまだ動かないがどうだー!?』
「ふん!!余裕だもんね!!!!」
そう芽依がつぶやくと、両足の靴の側面を指で押して、靴の機能を起動させた。
そして、芽依が走ろうと、一歩前に足を出したとほぼ同時に、次の人へと白軍のバトンが渡された。
文字通り、光の速さで走り終えた。
「あれ…反則じゃね?」
『ちなみにこの体育祭のルールに靴を変えてはいけないというルールは存在しません!!!!なんでもありがこの、青闘祭の醍醐味です!!!!!』
ちょうど順位は赤、緑、黄、白、青、紫、黒の順番だ。
「走れぇぇぇぇぇ!!!!!!」
次々と繋がれ得たバトン。
そして、そのバトンが今、奏音に繋がれた。
俺は腹の底から、今出せる、全ての声を応援に変えて、発する。
「頑張れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!かのぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!!!!!!!!」
爆発的な声がグラウンドを包みそして、霧矢の声が、奏音の鼓膜を震わせた。
(頑張らなきゃ!!!!!絶対に次に繋ぐ!!!!!!)
奏音に届いた声援を奏音は力に変え、強い一歩を踏み出しつつ、グラウンドのカーブを、もう倒れそうかと思うくらいに傾きながら走る。
そして、遂に!!!!赤軍の女子を越した!!!!!!
赤軍の女子の驚いたような目線が奏音に向く。
それもそうだ。
奏音は元からそれほど速くはない。
だが、今まで紡いでくれた人たちの努力の結晶。
そして、普段、声をそれほど出さない霧矢からの
それが奏音をもっと前へ、突き進めさせる動力源となった。
あとは緑軍だけ!!!!!
そして、私は最後のリレー走者。
アズりんにバトンを渡すべく腕を伸ばす。
アズりんも、ゆるっとした目を見せながら、後ろへと腕を伸ばしていた。
だが、奏音は、次に紡ぐために頑張って走ったのだ。
その感情からつい零れた、本音の言葉。
「あとは任せたよ!!!アズりん!!!!!!!1位、取ってきて!!!!!!!!!」
アズりんは口元を少し曲げて、バトンを受け取る。
「奏音ちゃんにそんなこと言われたら…本気出さずには、いられないなぁ〜!」
次の瞬間、アズリアの中に溜まっていたエネルギーが一気に爆発するように、砂埃が上がる。
風を切るような音を耳元で鳴らしながら、忍者のように、バトンを持ち、そして、レーンを駆ける。
「早!!!!!!!」
アズりんの軽快な動きと、その素早さに誰もが視線を集めた。
そして、バイト組のメンバーはその素早さよりも、アズりんのその、尖った目付きにも、注目する。
「あれって…」
「アズリア…本気だ!!!!!!」
後ろから迫り来る白軍の気配に気づいたのか、緑軍の最後のリレー走者は、腕をさらに振って、アズリアから逃げようとする。
「うぉぉぉぉおおぉぉぉぉおぉぉぉぉおぉおぉ!!!!!!!!!!!!」
アズリアは腹から出た言葉を勢いよく発しながら、緑軍の男子と並んだ。
『まさかの最下位からの大逆転!!!!!!緑軍、果たして、逃げられるかぁ!?!?!?』
緑軍の男子とアズリアの猛烈な戦い。
そしてようやくその戦いは終わろうとしていた。
なぜなら、アズリアが前に出たのだ!!!
緑軍の前に出たアズリアは、さらに足に力を込めて、緑軍の男子を突き放し、そして、ゴールテープを一番乗りで破った。
次の瞬間、白軍の待機席にどっと「シャアアア!!!!!!!!」という歓声が響いた。
「アズりん!!!!!!」
「やっほ〜、言われた通り、取ってきたよ、1位。」
「アズりん!!!!!!」
喜びを言葉にできなかった奏音は、アズリアを抱きしめて、そして、
「やったね!!!!やったね!!!!!」
と言い放つ。
アズリアも、
「ふふ!どんなもんだい!!」と言ってみせた。
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『結果発表!!!!!!!栄えある第、一位の発表です!!!!」
焦らすようにドラムロールが鳴り出し、そして、全ての軍で神に願うような人を見受けられる。
そして次の瞬間、姉から告げられた。
「栄えある一位は____白軍!!!!!』
皆が頑張って掴みとった優勝に、心臓が跳ね上がった。
「「「「「「「よっしゃああああああああ!!!!!!!!」」」」」」」
優勝という言葉に興奮状態に陥る俺たち。
その喜びを表すべく、俺たちは、どうしても叫ばずにはいられなかった。
「霧矢くん!!!!!!」
奏音が俺に向かって、両手を差し出してくる。
俺はそれに向かって、「やったな!!!!!」の一言を加えて、ハイタッチ。
パチンと音が空に鳴った。
歓声の声に包まれて行われた青闘祭は、俺たち、白軍が勝利を収めたことによって終わったのだった。
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